第13話「ギルバート・デア・ストレイド」

 最近、お変わりになりましたね。なんて話は聞いてたんだ。

 メイドや使用人からさ、アリアが変わったって。

 以前よりとっつきやすくなったとか、掃除を手伝ってくれるようになったとか。 

 引きつった感じのなんとも言えない笑顔……みたいなものを浮かべてさ、ともかく皆と仲良くしようって気もちが伝わって来るんだって。


 そこへ来てあれだろ? もうびっくりさ。

 突然商談の場に乗り込んで来たと思ったら、ガノンの悪だくみを暴くんだから。

 目利きの仲買人なかがいにんだってああはいかないだろう。

 いやホントに、どこで覚えたのか……。


 そして、驚きはそれだけじゃなかった。

 あの後、逆恨みして屋敷に火を放とうとしたガノンと護衛の大男をコテンパンに叩きのめして捕まえて来たのを見た時には、もう言葉も出なかったね。


 考えてみればエイナも突飛な行動をとる女性だったからね、そういった部分が遺伝しているのかな。

 いずれにしろ、僕に似なくて良かったよね。

 親バカかもしれないけど、将来どんな女性になるのか楽しみでしょうがないよ。レイミアともどもさ。


 っと、褒めてばかりもいられない。問題はこれからなんだ。 

 あ、聞いてるかい? 表彰式のことさ。


 一番最初の事件である街中の決闘で倒した連中が、今まで多くの暴行・恐喝・詐欺に窃盗を働いていた札付きのワルだったこと。

 そして二番目の事件であるガノンたちが、詐欺はもちろん放火という重罪を犯したことで、アリアは見事表彰されることになったんだ。


 場所は衛士府えいしふ

 王都を守る衛兵たちを管轄する本部だ。

 当日は閲兵式えっぺいしきもあり、王族を始め、貴族や富裕層の方々も多数参列されるはずだ。

 

 事が事だけに女の子らしいとは言えないけれど、晴れの席には違いない。

 頑張っておめかしさせて、壇上へ送り出してやるつもりさ。


 今後の彼女の人生のために、なるべくいい男性の目にとまってもらいたいもんだね。

 本人は望まないかもしれないけど……ま、そこは女の子だしさ。

 何がきっかけで恋に目覚めるかなんて、わからないよ?

 案外、誰もが想像しないような凄い人物を捕まえて来たりして……。

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