第34話「コンバット・トーナメント」
翌日の昼休み。
「ミゲル・ボロンはいるか!?」
鐘が鳴った直後、ライネがやってくる。
「あ、はい」
昼休みは早食いをしたあと魔法の練習をしようと思っていたミゲルは、彼女の勢いにおされて反射的に固まって答えた。
「ちょうどいい、来てくれ。大事な話があるんだ!!!」
「わかりました」
立ち直ったミゲルはライネの剣幕に疑問を抱く。
だが、さすがに昨日出たコンバットトーナメントのことはちゃんと覚えていたので、すぐに応じる。
ふたりが出て行ったあと、残された同級生たちはぽかんとしていた。
「いまの四年のアロサール先輩だよね? 何で転入生と?」
「さ、さあ?」
「まさか、ロマンス!?」
「えー!?」
「きゃー!!」
ふたりの恋愛について勘繰る女子、否定的な女子、期待に目を輝かせる女子と三種類に別れる。
「ちっ」
男子たちは面白くないという反応をしたが、女子たちに噛みつかなかった。
「たぶん、魔法関係だと思うけどなぁ。だってミゲルくんだし」
あのミゲルがそう簡単に恋愛関係に発展するとは思えない。
ありえないと考えかけて、クロエはさすがに失礼かと訂正する。
彼女だけは真相に近いところにいるが、さすがにライネの話の具体的な内容についてはさっぱりわからなかった。
ライネがミゲルを連れてきたのは運動場だった。
他にも生徒たちの姿はあるのだが、ある程度の距離は保たれている。
声量に気をつけさえすれば秘密の会話は可能だ。
「話って何ですか? もしかして景品の魔法書がわかったんですか?」
ミゲルの頭の中はそのことでいっぱいだった。
「まさか。決まったところで、生徒であるわたしには教えてもらえないさ」
ライネは彼の意見を一笑にふす。
「コンバット・トーナメントのことなのはたしかだ。お前は詳しいルールなんて知らないだろう?」
と彼女は問いかける。
「それはもちろんそうですが、ルールの説明をいまするんですか?」
ミゲルは疑問を深めて首をひねった。
試合のルールなんて当日聞かされるだけで充分のはずだった。
「違う。トーナメントに出場するための条件のことだ。基本的に三年生以上じゃないと参加できないんだよ。知らないだろ?」
「そりゃそうですよ」
ライネの言葉にミゲルはあきれる。
提案してきたのは彼女なのだから、まさかそんなルールがあると彼は思わない。
「てことは俺は参加できないんですか?」
だったら最初から提案するなよと、どんよりした気持ちでミゲルは言った。
「いや、そうじゃない。条件を満たせば一年だって参加できる。そのことと条件についてお前に教えに来たんだよ」
ライネはあわてて否定し、力強く説明する。
「なるほど」
ミゲルは納得して、
「じゃあどんな条件なんですか?」
と聞いた。
「まずは推薦者の存在。これは私がやるから問題ない」
というライネの説明に彼はうなずく。
「次は証明だな。トーナメントに参加できるだけの実力を持っていることの」
次のライネの言葉に彼は首をひねる。
「どうやって証明するんですか?」
「もちろん、参加予定の三年生相手に予備戦をするのさ。教職員の立ち合いのもとにな」
とライネは返事をした。
「ああ、戦って勝てば認められるわけですね」
「勝つ前提なのはおかしいんだが、お前ならだいたい勝てるだろう」
ミゲルの反応に彼女は苦笑する。
「私より強いと私が言うだけじゃ、誰も信じてくれないのでな。フィアナ先生がかろうじて、というところか」
「そういうものなんでしょうかね」
ライネは不満そうだったが、ミゲルは何も感じない。
信じてもらえないなら、実際に魔法を使ってみればいいだけなのだ。
「では今日の放課後、職員室に来るといい。フィアナ先生に言えば連れて行ってもらえるだろう」
「わざわざありがとうございます」
助言してくれるライネにミゲルは礼を言う。
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