第33話「ライネからの提案」
「お前はマジで天才かもしれないな」
とライネは感嘆する。
「??」
魔法を覚えやすいだけで大げさだ、とミゲルは首をひねった。
「……まるでわかってなさそうだな」
ライネは自分が空回りしたようですこし落胆する。
「いや、そこがお前の強みと言えるかもしれん」
だが、彼女はすぐに立ち直った。
「ひとつ提案があるんだが、コンバット・トーナメントに出てみないか?」
「コンバット・トーナメント?」
彼女の発言にミゲルはもう一度首をかしげる。
「簡単に言うと魔法決闘の大会だよ。いろんな魔法の使い手が出場するぞ。お前なら興味はあるだろ?」
とライネに聞かれ、
「あります!!!」
ミゲルは反射的に食いついた。
「そんなすごい大会があるんですか!? 見ていいんですか!? というか出てもいいんですか!?」
そして勢いよく質問をくり出して、彼女をたじろがせる。
「お、思っていた以上の食いつきだな」
しかし、彼女はやはりすぐに気持ちを切り替えた。
「それでこそミゲルと言えるか。大会に出られるのは本来二年生からなんだが、私が推薦すればねじ込むことは不可能じゃない」
と説明し、
「お前ならねじ込める、と言ったほうが正確だな」
そう補足する。
「ねじ込む……?」
ミゲルは引っかかりを覚えた。
「まあ出られるなら何でもいいです!! 最悪でも観戦はしたいです! むしろ観戦できるなら別に出場はどっちでも」
そしてすぐに放り出し、要望を彼女に伝える。
いろんな魔法を見るのが最優先であり、自分で戦うのは二の次だと。
「ああ、なるほど。魔法を見たいという欲求が一番なのか。自分で使ってみたいと同列じゃないんだな」
彼の主張を聞いてライネは己が勘違いしていたことに気づく。
「なら無理に出さなくてもいいか……?」
彼女は無理を押し通す必要性がなくなったのではと思いかけ、あることを確認しようと考えた。
「優勝特典はトロフィーと盾、それから魔法書なんだが」
「やっぱり出ます!!! 優勝目指してがんばります!!!」
ミゲルは興味なさそうだった態度を一変させる。
賞金や普通の景品はどうでもいいのだが、魔法書がもらえるとなると話は別だった。
「どんな魔法書なんですか? 四位階だったりしますか? それとも五位階?」
ミゲルは目を輝かせて彼女に矢継ぎ早に質問する。
「お、落ち着け。景品の魔法書は四位階のものから毎年ランダムで変わって、私もまだ知らないんだ」
ライネは後ずさりをしながら答えた。
「あ、そうなんですね」
ミゲルはちょっと冷静さを取り戻す。
「だが、基本的に学生では習得が困難なものが選ばれやすいはずだ。私たちが使える魔法は学園側も把握しているしな」
とライネは語る。
「つまり、俺が知らない魔法が選ばれる可能性、かなり高いんですね!?」
「た、たぶんな」
ミゲルの勢いにひるみながらライネは答えた。
「よっしゃああ!!!」
ミゲルはガッツポーズをしながら雄たけびをあげる。
「いや、一応言っておくが、超えなきゃいけない難関はいくつもあるんだぞ?」
ライネは彼のことを認めているが、だからこそすこし気になった。
「あと、コンバット・トーナメントに出るための説明、ああ!?」
彼女が話の続きをしようとしたのに、ミゲルは駆け出してしまう。
「魔法をいっぱい練習しなきゃ!!!」
という叫び声を残して。
「……正しいんだが、もうすこし私の話を聞いてほしかったな」
ライネはあの様子だと追いかけても無駄だと判断し、ため息をついて小さくなっていく彼の後ろ姿を見送る。
「言い出したのは私だし、各方面に話を通すのは私がやるべきだろうな」
とつぶやく。
もともと一年の転入生であるミゲルが詳しいことを知っているはずがないし、手続きの仕方だってわからないだろう。
彼女がやるしかなかった。
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