第9話「テストの結果」
四人は書斎から地下室へとやってきた。
ラーンが驚いていないのはゲイルから存在を聞かされていたからだが、ミゲルは使う魔法のことで頭がいっぱいで気づいていない。
「ではまずは簡単に魔力放出をして見せてもらおう。魔力保有量も大事だが、一度に放出できる量も魔法使いには重要なのでね」
とラーンは指示を出す。
「はい!」
ミゲルは元気に返事をしながら内心しまったと思う。
(やっべー! 呪文を暗記して魔法を使うことしか考えてなかった!! そうだよ、魔力量もチェックされるって、わりとお約束じゃないか!)
彼はラーンに言われるまで、魔力のことをまったく考えていなかったのだ。
(まあ、なるようになれ、だ)
ダメだったら魔力の増やし方を教えてもらおうと切り替え、ミゲルは魔力を解放する。
「はぁあ!!」
気合の声を出したのは彼の気分の問題だ。
マンガやアニメだと気合とともに力を解放するシーンがあるので、まねしてみたかったのである。
解き放たれた魔力は青く光りミゲルの全身を包むようにとどまる。
「な、何だと……青だと!?」
ラーンは驚愕のあまり目を見開き、声と体を震わせた。
「青!?」
両親も彼の言葉に驚愕する。
(いや、青って何だよ)
ミゲルは内心こっそりツッコミを入れた。
父ゲイルは実のところ説明下手で、彼に教えたほうがよさそうな情報をあんまりくれないのである。
「どうなんですか?」
とミゲルがラーンにたずねると、壮年の男は我に返った。
「その年齢で青ならとても将来有望だな。第一テストは文句なしの合格だ」
返ってきた言葉に彼はようやく安心する。
「しかしその年でその魔力……魔法を毎日放ち続ける、なんて危険なまねはしてないだろうね?」
声は優しいが灰褐色の瞳は鋭かった。
「まさか?」
ミゲルは危険な行為だったのかと思いながらすっとぼける。
(魔力が切れるまで毎日乱発してたなんて、言わないほうがよさそうだな)
とラーンの態度から判断した。
「第二テストは魔法だな。当然ながら大きい魔力を持っているだけでは、合格というわけにはいかない」
とラーンは気を取り直して言う。
「はい!」
いよいよだとミゲルはワクワクする。
「では君が使える魔法で一番のものを見せてみなさい」
「はい!」
彼は返事をすると呪文の詠唱をはじめた。
「《闇よりこぼれるもの、夜空より来たるもの、」
「な、何だと!?」
「その詠唱は!?」
「バカな」
ゲイル、ミル、ラースはそれぞれ驚愕の叫びを漏らす。
「《この地に集い我に従え、漆黒の力をもって敵を駆逐せよ》【黒歪衝/パリヴリッタ】」
ミゲルは闇属性の五位階魔法で、最も破壊力があるとされる魔法を彼らの前で放った。
空間が一瞬ゆがむほどの黒い衝撃波が三人の大人の前を走り抜ける。
「五位階魔法を、それも最も威力がある分あつかうのが難しい【黒歪衝/パリヴリッタ】を使えるとは……」
一番衝撃を受けたラーンはまだ呆然としていた。
「ま、まさか五位階魔法まで使えるようになってたとは」
「どこまで強くなるの、この子は?」
ゲイルとミルの驚き方は彼とは違う。
彼らは内から込みあがっている恐怖を抑え込む必要があった。
「どうですか?」
「合格だ」
空気をすこしも読めないミゲルの無邪気の問いに、ラースは我に返って結果を伝える。
そしてゲイルとミルに視線を移す。
「この子の年で青の領域に達する者も、五位階魔法を使える者も、皆無というわけではない。魔法アカデミーなら孤独を感じさせずにすむだろう」
というラーンの言葉にふたりはハッとする。
「息子をよろしくお願いいたします」
そして同時に頭をさげた。
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