お友達は突然にの回
糸満市役所以外高い建物が何もない。玲子は、独自の美学『白い歯を汚したくない』という理由からアイスティをストローで飲みながら海を眺めていた。糸満市はどこからでも海が見れる。感じるだけでよいのなら室内からでも感じられる。玲子は狭い糸満が嫌いだった。海が嫌いだった。海から出てくるあいつらが嫌いだった。あいつらさえいなければ普通の高校生活が送れたのに!と毎回思っていた。
幼いころから玲子には友達がいなかった。幼稚園の頃は友達がいた記憶がある。しかし、小学校に上がると急に玲子の周りには人が寄り付かなくなった。理由は薄々気が付いていた。同年代よりとびぬけていた感があったからだ。小学校低学年の頃は高学年と同等かほんの少しだけ能力的に高かっただけだったから、軽く遊ぶことはできた。小学校高学年くらいになると、成人を迎えたものでさえ玲子は見下していた。動きが鈍く思考が幼く映っていた。中学に上がるころには、まともに玲子と会話できるものがいなくなっていた。玲子は糸満市にいたら自分の中の何かが死んでしまうと思った。
玲子はいつも一人で西崎の海から慶良間諸島を眺めていた。本当は北部から本州を眺めたかったが遠いため、慶良間諸島で我慢していた。『今に見てろよ』玲子はいつも海に向かって叫んでいた。そんなある日、海底から一体の物体が現れた。人間の形をしていたが下半身はナマコのような形だった。服を着ているように見えていたが実際は体の模様だった。
玲子は嬉しくなった。見たことのないものが目の前に現れてくれたことに感謝した。
玲子はナマコ人間に近づいた。ナマコ人間はものすごい速さの何かを玲子に向かって飛ばしてきた。玲子は余裕でかわした。クサトベラがドロドロに溶けた。次にナマコ人間はものすごい速さで玲子に向かって近づいてきた。玲子は爪を鋭く伸ばしナマコ人間をバラバラにきざんだ。
「あーあ」
玲子は何の気配も感じなかった。心臓が口から出そうになった。人生で始めての経験だった。気が付かなかったことが恥ずかしくて顔が赤くなった。
「誰?」
「怪しいおじさんですよ」
玲子は、男から目を離さなかった。
「今、お嬢さんがバラバラにしたものは何だと思いますか?」
声は背中ら聞こえた。男はバラバラになったナマコ人間をカバンの中に詰めていた。
「海底から現れた謎の生命体。一般には公表されてないけど、実は何年も前からこの世界にやってきている。有害のため特別な訓練を受けたものじゃないと対応できない。こんな感じじゃないの」
玲子はできるだけ冷静に答えた。ほんの少しだけ声が震えた。
自分の視界から簡単に消える人間を初めて見たからだ。自分より早く動ける人間に初めて出会ったということを理解した。そして、この男はナマコ人間について何かを知っていて、タイミングよく表れたのも組織みたいなものに属していて派遣か担当地域(管轄があるのかもしれない)にナマコ人間が現れたから通常の業務の一環としてやってきたということになる。
つまり、自分と同じような特殊な人間ということになる。もしかしたら仲良くなれるかもしれない。初めての友達ができるかもしれないと思った。自然とぴょんぴょん体が跳ねた。
「ほとんど正解。すごいね。レイコちゃん」
一瞬で引いた。跳ねた自分を恥じた。名前を知っているなんて「キッモッ」低音すぎる声がでた。
「僕は上原っていうんだ。ケンちゃんって呼んでもいいよ。レイコちゃんの考えている通り僕たちは仲良くなれると思うんだ」
うわぁ、心の中読まれた。顔が引きつっているのが自分でもわかった。無意識に2歩も下がっていた。
中二の春に初めて友達ができるかと思ったけど、多分、無理だと思う。
だって、キモイもん。
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