ルート331の回
潮崎地区はゴリゴリの埋め立て地だ。
糸満市の人口は思っていたより増加していなかった。ほかの市町村の増加率が高すぎて、糸満市はほかの市町村と比べると見劣りするほど遅い増加率が市役所の思惑通りではなかった。糸満は戦争関係の観光地しかなく時代の波にも乗れなくなっている感じがあった。もちろん戦争の記憶は大切だが、それだけで何とかなっていた時代はとっくに過ぎ去っていたことに、いまさらながらに気が付いたのだ。糸満市は埋め立て地を作り糸満には珍しいくらいのライフラインを完備した地域を作った。学校、病院、消防、警察などももちろん新しく設け、低金利で土地付きの住居を提供し、県内外から移住者を求めた。これによって移住者が増え、糸満市が思い描いていた収入を得られるようになった。おかげで、今では市民ホールを建設中だ。
しかし、先の大戦でたくさんの人が沈んだ上を埋め立てたため、地元の糸満人はその土地をよしと思わなかった。むしろ嫌っていた。
潮崎地区の住民と糸満人の間に交流はなく、糸満の中でも特殊で独特の文化が潮崎地区に生まれた。
潮崎と糸満は常に抗争が絶えなかった。
もともと漁師町だった糸満人は気性が荒く言葉遣いも汚く、身内をとことん守り抜く代わりに、よそ者を受け入れない文化があった。新しいものを受け入れるのに相当時間がかかる。この文化と気質のため潮崎を受けられなかった。
潮崎の住民は移住組のため、慣れない土地での生活に多少なりとも緊張があった。その緊張が歪みを生み、潮崎は地区内カーストのようなものが自然と出来上がった。上が下を、下がさらに下を見下す文化が出来た。一番下に属した住民はさらに下の糸満人を見下す対象にして、最終的に抗争まで発展した。勝手に自警団を作り糸満人から潮崎を守っているふりをして、鬱憤を発散しているだけだった。
潮崎地区に出入りできる道は二つあり、一つは市役所にしっかり守られた関所のような道と、もう一つはマエサトという糸満のはずれにつながる道だった。マエサトは喜屋武との境界近くにあり、糸満の中でも危険な地域の一つだった。移住組の潮崎の住民はマエサトには消して近づかなかった。例外として、潮崎カーストの一番下の住民は潮崎地区のマエサト側にいた。
国道331号線がボーダーラインとなり、東と西で完全に分かれ、国道331号線沿いのマンションはあまりの凄まじさで廃墟となっていた。築年数は5年もたっていないのに。それくらい、糸満と潮崎の抗争は激しかった。
高橋は今日もボランティアで抗争を止めていた。毎度よくやるわ。と、電子タバコを加えながら最後の一人を片付けた。国道331号線を掃除し、車が普通に通れるくらいまでに仕上げた。
今は閉鎖している旧331号を北へ向けて歩き出した。糸満のど真ん中を通るため、まともに通行できるものは少ない。どこから糸満人に狙われているかわからないからだ。
糸満の人口が今一つ伸びていないのはこういった治安の怪しさもあるのではないかと高橋は考えていた。だから、潮崎と糸満には仲良くしてほしいと願い、ボランティアを始めた。
高橋はそのまま潮平方面へ向かった。
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