10体の回
増え続ける少年たちは次第にカラフルと黒に分かれていった。完全に分かれるとカラフルと黒は人と影のように一体になった。次にカラフル黒同士が一体となって、巨大化していった。強大化していったカラフル黒が10体になったところで動きが止まった。一体が5メートル位の大きさになり手の数が数えきれないほどあった。足は黒と同化していたため足というよりは腹足類のようなうにゃうにゃした形になっていた。
動きが止まったように見えたのは大城の勘違いだった。時速48メートルくらいの速さで動いていた。それでも、それにしても遅すぎると大城は気が抜けた。大城は膨らませていた体を元に戻し一瞬だけ後ろにいる金城に意識を向けた。
その一瞬で事態は激変した。
ものすごい速さで無数の手が伸びてきた。
体が反応した時には大城の右足の感覚はなくなっていた。
大城は、体が傾き視界が少しずつ下がっていくのを感じたとき右足がなくなったことを確信した。普通の状態だったら、すぐに足を再生させるのだが、今は間に合わないと判断した。もう一度でも判断を誤ったら、自分だけではなく金城までも死んでしまうと悟った。
大城は必至で手を払った。傾いていた体に足を即席で作り何とか身体を支えた。支えるを優先させて再生したため初めから移動は捨てた。自分が移動したら、後ろの金城がやられてしまうとも考えた。
大城が押され始めたのは右足をなくしてから数分後だった。10体のカラフル黒は腹足類のような足でも徐々に近づいてきて、無数の手は無限とも思えるくらいの量で攻撃を続けている。大城は途中から「手を払う」から、切断するに変えていた。それでも無限に手は伸びてきた。
「金城、お前は最近たるんでるな」
「はっ。自分はたるんではおりません」
「いや、たるんでいる。なんだその髪型は。寝ぐせだらけじゃないか」
「はっ。昨晩は糸満市内の過去の犯罪件数の履歴を深夜まで調べておりました」
「仕事熱心なのと、身だしなみは別だ」
「はっ。失礼しました」
言葉では金城を叱ったが、内心では感心していた。最近の若い奴らは、警察学校を卒業したら、もう一人前の警察官になったものだと勘違いしているものが多かった。何も努力をしないで昇給だけを考えてるように大城の目にはい映っていた。しかし、金城だけは努力を惜しまない姿があった。大城はそこに惹かれて金城に目をかけるようになった。
大城の左手が飛んだ。瞬間はわからなかった。
相当後ろに落ちた音で分かった。刹那、右手も真下に落ちた。不覚にも目で追ってしまった。内臓を貫通する黒いものを真上から見た。黒いものはそのまま金城へまっすぐ向かっていった。大城は必死に叫んだ。その声が金城に届いたかどうか大城は確認することができなかった。
大城の首から上は体から切り離され、空中で大城の体を見つめていた。
金城の体は大城の首よりも高く飛ばされていた。
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