第15話長篠組の最期

ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃもどってきた桐島きりしま田中たなか日向ひなた彩芽あやめは、羽柴はしばにことの顛末てんまつ報告ほうこくした。やはり羽柴はしば大声おおごえ怒鳴どなりだした。

桐島きりしまーっ!!おまえがついていながら、なんだあのザマは!!人質ひとじちかえされただけじゃなく、あいつらにりをつくってしまうとは、一体いったいどういうことだ!!」

もうわけありません、あいつらのほう一枚上手いちまいうわてでした。」

「それがゆるされる理由りゆうになるか!!ケジメをつけろ、ケジメを!!」

「・・・覚悟かくごはできています。」

羽柴はしば冷静れいせいになると、ていたスーツのポケットからナイフをした。

「ようし、それなら親指おやゆびめてもらおう。」

桐島きりしま覚悟かくごめて右手みぎて組長くみちょうしたとき、清藤きよふじめにはいった。

羽柴はしば、こんなことはめろ。」

清藤きよふじ・・・どうしてめるんだ?」

桐島きりしまさんはいい部下ぶかだ、礼儀正れいぎただしくてなにより忠実ちゅうじつだ。そんな桐島きりしまでもミスはする、そのたびゆびめていったら、桐島きりしま本当ほんとう使つかものにならなくなるぞ。」

「・・・桐島きりしま今回こんかい清藤きよふじさんにめんじてゆるしてやる。このつぎゆびめてもらうからな。」

「ありがとうございます・・・。」

桐島きりしま羽柴はしば清藤きよふじあたまげた。

羽柴はしば名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうたおすはもうあきらめよう。これ以上奴いじょうやつらとめるのは、よくない。」

「そうだな・・・、じゃあふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃつづけるとしよう。」

やさしく羽柴はしばさと清藤きよふじに、桐島きりしましたいた。

前日羽柴ぜんじつはしばのことを親友しんゆうじゃないとっていたうえ、自分じぶん羽柴はしば警察けいさつるようっていた清藤きよふじ

あいつは二枚舌にまいじただと桐島きりしま確信かくしんし、より警戒けいかいするよう自分じぶんかせた。









しかしふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ売上うりあげまってしまった。

原因げんいんはイーサンと友近ともちか西園寺正彦さいおんじまさひこからいた証言しょうげんを、Twitterやまとめサイトに投稿とうこうしたからである。

これにおおくのひと炎上えんじょうふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃをバッシングしだしたのだ。

「これはどうなっているのだ!!しゃのサイトが炎上えんじょうしているぞ!!」

Twitterのコメントを羽柴はしばはパニックになった。

組長くみちょういてください。おそらく名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごう仕業しわざでしょう」

桐島きりしまうと、羽柴はしばはいきなり桐島きりしまなぐった。

これには桐島きりしま羽柴はしばたいおこった。

なにをするんですか、組長くみちょう!!」

全部ぜんぶてめえのせいだ、昨日きのう失敗しっぱいければこんなことにはならなかった!!あいつらがふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃめるようになったのも、われらの作戦さくせん阻止そしすることに成功せいこうしたからだ!!わしはおまえ大学生だいがくせいころから面倒めんどうてきたというのに、こんな大失態だいしったいをするとはおもわなかった!このはじさらしが!!」

羽柴はしば桐島きりしまむなぐらをつかみながら、最大限さいだいげん罵倒ばとうびせた。

そして桐島きりしま渾身こんしんちからばすと、イライラしげにつくえすわった。

ばされた桐島きりしま羽柴はしばへのいかりをむね無理むりやりしずめると、仕事しごとへと気持きもちをえた。










その午後八時ごごはちじ仕事しごとわった桐島きりしま田中たなかこえをかけられた。

「アニキ、今日俺きょうおれみませんか?」

桐島きりしまにとってはいい機会きかいだった、桐島きりしま飲酒いんしゅいやなことをわすれるタイプなのだが、緊急事態宣言きんきゅうじたいせんげんのせいでこの時間じかん飲食店いんしょくてんのほとんどが閉店へいてんしてしまっているからだ。

「ああ、もちろん。今日きょう一杯いっぱいやりたいとおもっていたんだ」

「やっぱりそうっす、アニキは気持きもちがかおひとだから。」

「こいつ!」

桐島きりしまつら気持きもちがほんのすこやわらいだ。

そして二人ふたりはコンビニでかんビールとこのみのつまみをそれぞれ購入こうにゅうし、田中たなかんでいるアパートへかった。

桐島きりしま田中たなかおなじアパートでらしていて、桐島きりしま三階さんかい田中たなか二階にかいんでいる。

田中たなか部屋へやは2Kでせまいが、桐島きりしまおな部屋へやんでいるのでにならない。

まるいちゃぶだいうえかんビールとつまみをいて、きなテレビ番組ばんぐみる。

二人ふたりだけのちいさな居酒屋いざかや完成かんせいした。

「もうーーーっ、ゆるせん!!今回こんかいわたしでもあたまたぞーーっ!!」

「そうですよ、最近さいきん組長くみちょうはムキになりすぎなんです。」

「そりゃわたしだってあのよるとき作戦さくせん成功せいこうすると確信かくしんしていたんだ、でも連中れんちゅうはそのうええてきたんだ。」

「あのおとここえだまされたのは不覚ふかくだったけど、としあなちることになるとはおもわなかったす。」

「そうだろ、田中たなか?それなのに組長くみちょうときたら、すべておまえのせいとかいやがって・・・。」

桐島きりしまくちから羽柴はしばへの不満ふまんがとめどなくこぼれた。

おれ・・・清藤きよふじほう寝返ねがえろうかな・・・。」

「ん?どういうことっすか?」

清藤きよふじからだれにもうなとわれていたが、さけ魔力まりょくおちいった桐島きりしまはべらべらかたりだした。

じつ清藤きよふじ組長くみちょう警察けいさつることと、あずかった封筒ふうとう処分しょぶんするようにわれたんだ。そうすれば長篠運輸ながしのうんゆ仕事しごと斡旋あっせんしてくれるって。」

桐島きりしま発言はつげんに、田中たなかしんじじられないというかおをした。

「でも、清藤きよふじって組長くみちょう親友しんゆうなんだろ。そんなこと本当ほんとうったの?」

「そうだ。しかも羽柴はしば清藤きよふじ親友しんゆうというのは羽柴はしば一方的いっぽうてきおもみで、清藤きよふじはそうはおもっていないらしい。」

「でもっているんだから、いはあったんでしょ?」

「ああ、羽柴はしばはパシリとして清藤きよふじにこき使つかわれていたそうだ。」

「なんか可哀想かわいそうっすね、組長くみちょう・・・。」

「そうだな、それでおまえ羽柴はしば裏切うらぎるか裏切うらぎらないかどっちがいいとおもう?」

「うーん、清藤きよふじ完全かんぜん信用しんようできるというわけではないけど、組長くみちょうについていってもとくにいいことさそうだし・・・、それならアニキと一緒いっしょ会社かいしゃはたらくほうがいいです。」

「そうか、いつかヤクザからあしあらわなきゃいけないときたか・・・。」

桐島きりしま長篠組ながしのぐみはいったころ自分じぶんおもした。

あの時組長ときくみちょうには世話せわになったが、中義理なかぎりだけではきていけない・・・。

桐島きりしま覚悟かくごめスマホをつと、田中たなかいえから警察けいさつ電話でんわした。












八月十五日午前六時はちがつじゅうごにち、イーサンがテレビをつけると「ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ社長逮捕しゃちょうたいほ正体しょうたいはヤクザの組長くみちょう」というニュースが報道ほうどうされていた。

『スーパーマーケットを恐喝きょうかつ商品しょうひんてそれをダンボールにんで販売はんばいしていたとして、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ社長しゃちょう羽柴剛仁はしばごうじ恐喝罪きょうかつざい逮捕たいほされました。警察けいさつ捜査そうさによりますと、羽柴氏はしばしはサスガスーパーに「商品しょうひんをいくつかわたしてほしい、バックに市長しちょうがついている、もしさからうなら営業許可証えいぎょうきょかしょう剥奪はくだつする」とおどしをかけ、商品しょうひんれ、それを売却ばいきゃくして不法ふほう利益りえきていたということです。さらに羽柴氏はしばし長篠組ながしのぐみ組長くみちょうであることもあきらかになっており、警察けいさつでは暴力団関連ぼうりょくだん事件じけんとして捜査そうさすすめていく予定よていです。』

イーサンはこれでまち安全あんぜんまもられたとよろこんで、テレビのまえでガッツポーズをした。

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