チーム・ブンガブンガ！「福ダンボールの陰謀」

第14話正義のイタズラ

「おい、話（はな）しはどうなった？」

「ああ、一千万円（いっせんまん）だすことにしたよ。チーム・ブンガブンガには迷惑（めいわく）をかけられないからね。」

大島（おおしま）の口（くち）から考（かんが）えもしないことが口（くち）から出（で）た、本当（ほんとう）はもっと身代金（みのしろきん）を出（だ）すのを渋（しぶ）ると思（おも）っていたが、こうもあっさり出（だ）すと言（い）うとは思（おも）わなかった。

「そうか、やはり子供（こども）の命（いのち）には代（か）えられんか。」

「その代（か）わりに受（う）け取（と）りの場所（ばしょ）と時間（じかん）をこちらが決（き）めてもいいか？」

「もちろんだ、それで場所（ばしょ）はどこだ？」

「神島（かしま）が住（す）んでいる団地（だんち）の広場（ひろば）だ、時刻（じこく）は午前（ごぜん）0時（じ）。」

「わかった、そこに鈴（りん）を連（つ）れて行（い）けばいいんだな？」

「ああ、その前（まえ）に鈴（りん）の声（こえ）を聞（き）かせてほしい。」

「わかった、ちょっと待（ま）て。」

羽柴（はしば）は倉庫（そうこ）から鈴（りん）を連（つ）れてくるように桐島（きりしま）に命（めい）じた。

少（すこ）しして桐島（きりしま）が怯（おび）えた様子（ようす）の鈴（りん）を連（つ）れてきた。

「今（いま）、連（つ）れてきた。変（か）わるぞ。」

羽柴（はしば）は鈴（りん）に受話器（じゅわき）を渡（わた）して、話（はな）せと指示（しじ）を出（だ）した。

「もしもし・・・。」

「鈴（りん）ちゃん、大丈夫（だいじょうぶ）かい？」

「うん、大丈夫（だいじょうぶ）。お兄（にい）ちゃんに心配（しんぱい）かけちゃった・・・。」

「気（き）にしないで、必（かなら）ず君（きみ）を家（いえ）に帰（かえ）してあげる。」

ここで羽柴（はしば）は鈴（りん）から受話器（じゅわき）を取（と）り上（あ）げた。

「声（こえ）はもう聴（き）いただろ、それじゃあ約束（やくそく）の時間（じかん）に。」

「ああ、忘（わす）れるなよ。」

「それはこっちのセリフだ。」

羽柴（はしば）は電話（でんわ）を切（き）ると、大島（おおしま）に勝利（しょうり）した喜（よろこ）びで笑（え）みがこぼれた。

「羽柴、気を付けたほうがいい。これには裏がある」

清藤（きよふじ）が羽柴（はしば）に警告（けいこく）した。

「そんなことある訳（わけ）がない、こっちには人質（ひとじち）がいるんだから下手（へた）に動（うご）けないはずだ。全（まった）く、心配症（しんぱいしょう）だな。」

羽柴（はしば）は友達（ともだち）のように清藤（きよふじ）の肩（かた）を叩（たた）いた、清藤（きよふじ）は羽柴（はしば）の馴（な）れ馴（な）れしさに不快（ふかい）になった。

午前（ごぜん）0時（じ）の五分前（ごふんまえ）、桐島（きりしま）の車（くるｙま）が団地（だんち）の駐車場（ちゅうしゃじょう）に到着（とうちゃく）した。

桐島（きりしま）・田中（たなか）・日向（ひなた）・彩芽（あやめ）の四人（よにん）が鈴（りん）と一緒（いっしょ）に車（くるま）から降（お）りた。

「私（わたし）・・・お家（うち）に帰（かえ）れるの？」

「それは大島（おおしま）さんしだいだ、ダメだった時（とき）は覚悟（かくご）しておけ。」

田中（たなか）が言（い）うと、鈴（りん）は手（て）を合（あ）わせて助（たす）かるようにと祈（いの）りだした。

「あんまり怖（こわが）がらせるな、行（い）くぞ。」

そして四人（よにん）と鈴（りん）は広場（ひろば）に到着（とうちゃく）した。

「ここだな。今（いま）、何分（なんぷん）だ？」

「十一時五十七分（じゅういちじごじゅうななふん）、あと三分（さんぷん）です。」

「そういえば大島（おおしま）が来（き）ていないよ、もしかしてすっぽかしたんじゃない？」

「そんな・・・。」

彩芽（あやめ）の言葉（ことば）に鈴（りん）はショックを受（う）けた。

「おーい、君たち。」

誰（だれ）かが呼（よ）ぶ声（こえ）がして四人（よにん）と鈴（りん）が声（こえ）のする方（ほう）を向（む）くと、自転車（じてんしゃ）に乗（の）った警官（けいかん）が向（む）かってきた。

「まずいっす、桐島（きりしま）さん!!」

「ちょっ、マジで！！」

「どうすればいいんだ・・・。」

田中（たなか）と日向（ひなた）と彩芽（あやめ）は桐島（きりしま）に救（すく）いを求（もと）める視線（しせん）を向（む）けた、しかし桐島（きりしま）にはどう言（い）い訳（わけ）したらいいかわからない。

「こんな時間（じかん）に何（なに）をしているんだ、しかも幼（おさな）い子（こ）どもまで連（つ）れて」

「あ・・・あんたこそ何（なに）してるんだよ・・・。」

「私（わたし）はパトロール中（ちゅう）だ、そう言（い）うお前（まえ）らは何（なに）しているんだ？」

警官（けいかん）に言（い）い返（かえ）された日向（ひなた）に田中（たなか）と彩芽（あやめ）の冷（つめ）たい視線（しせん）が刺（さ）さった。

「おい、逃（に）げろ！！そいつは警察（けいさつ）だ、人質（ひとじち）を置（お）いて逃（に）げるんだ！！」

突然（とつぜん）、大声（おおごえ）が聞（き）こえた。

「おい、なんだ今（いま）の？」

「わからない・・逃（に）げろとはどういうことだ？」

するとジャージ姿（すがた）の男（おとこ）が桐島（きりしま）たちの目（め）の前（まえ）に現（あら）れた。

「おいお前（まえ）、何言（なにい）っているんだ？こいつらと何（なに）か関係（かんけい）があるのか？」

警官（けいかん）が男（おとこ）を問（と）い詰（つ）めているが、男（おとこ）はそれを無視（むし）して桐島（きりしま）たちを説得（せっとく）している。

「とにかく逃（に）げようぜ、警察（けいさつ）に捕（つか）まるのはごめんだ！」

「そうだ、逃（に）げよう！」

「私（わたし）だって捕（つか）まりたくないよ～！」

「わかった、逃（に）げよう！！」

自力（じりき）で打破（だは）できない状況（じょうきょう）と判断（はんだん）した桐島（きりしま）は逃（に）げることを決意（けつい）した。

「さあこちらへ、私（わたし）の車（くるま）があります。」

桐島（きりしま）たちは鈴（りん）を置（お）いていくと、男（おとこ）について行（い）くように逃（に）げ出（だ）した。

「あ、待（ま）ちなさい！！」

男（おとこ）と桐島（きりしま）たちを警官（けいかん）が追（お）いかける、その先（さき）には「チーム・ブンガブンガ！」と連合（れんごう）の組員（くみいん）たちが掘（ほ）った落（お）とし穴（あな）があった。

男（おとこ）が落（お）とし穴（あな）を飛（と）び越（こ）える、しかし桐島（きりしま）たちはと「ズボン！！」と大（おお）きな音（おと）を立（た）てて落（お）とし穴（あな）に落（お）ちてしまった。

「いたた・・・これは落（お）とし穴（あな）か？」

「誰（だれ）がこんな穴（あな）を掘（ほ）ったんだ！！」

「さあ、誰（だれ）でしょうね・・・？」

「わかんないわよ、そんなこと！！」

落（お）とし穴（あな）に落（お）ちた四人（よにん）を「チーム・ブンガブンガ！」のメンバー全員（ぜんいん）と大島（おおしま）と男（おとこ）と警官（けいかん）が見下（みお）ろしている。

「やったあ、あいつら落（お）ちたぜ！！」

「苦労（くろう）して掘（ほ）ったかいがあったよ。」

「これもみんなのおかげだよ、ありがとう。パパも変装（へんそう）良（よ）かったよ」

実（じつ）はジャージ姿（すがた）の男（おとこ）の正体（しょうたい）はイーサンの父（ちち）・ジェームスだったのだ。

「いやあ、それほどでもないよ。」

「おい、お前（まえ）らはチーム・ブンガブンガか！！」

落（お）とし穴（あな）から桐島（きりしま）が叫（さけ）んだ。

「ああ、そうだよ。」

「ここから出（だ）せ！」

今度（こんど）は田中（たなか）が叫（さけ）んだ。

「そうはいかないよ。お前（まえ）らは神島（かしま）の大切（たいせつ）な妹（いもうと）を誘拐（ゆうかい）したんだ、その落（お）とし前（まえ）をつけてもらうよ。」

そして「チーム・ブンガブンガ！」のメンバー全員（ぜんいん）が、桐島（きりしま）たちめがけてかんしゃく玉（だま）を投（な）げつけた。

「いたた、これはたまらん！」

「何（なに）するのよ、すごく痛（いた）いんですけど！！」

「止（や）めろ、クソガキ共（ども）！！」

「おめえら、舐（な）めたマネするんじゃねえよ！人質（ひとじち）がどうなってもいいのか！？」

「人質（ひとじち）はもうこちらが取（と）り返（かえ）した、何（なに）を言（い）おうが怖（こわ）くないもんね～」

すると鈴（すず）がひょっこりと穴（あな）を覘（のぞ）いた、それを見（み）た桐島（きりしま）は敗北（はいぼく）を認（みと）めた。

その後桐島（ごきりしま）たちは、連合（れんごう）のメンバーによって落（お）とし穴（あな）から引（ひ）っ張（ぱ）り出（だ）され、広場（ひろば）に正座（せいざ）させられた。

「お前（まえ）らの名前（なまえ）を教（おし）えろ。」

神島（かしま）がドスのきいた声（こえ）で言（い）った。

「木野彩芽（きのあやめ）です。」

「草部日向（くさべひなた）です。」

「田中賢（たなかけん）だ。」

そして桐島（きりしま）が名前（なまえ）を言（い）おうとした時（とき）、神島（かしま）がそれを制（せい）した。

「お前（まえ）、桐島充（きりしまみつる）だろ。長篠組若頭（ながしのぐみわかがしら）の」

「・・・ああ、そうだ。」

「え！？桐島（きりしま）さん・・・。」

「ヤクザだったの・・・。」

日向（ひなた）と彩芽（あやめ）は衝撃（しょうげき）の事実（じじつ）に呆然（ぼうぜん）とした。

「君（きみ）たちにはやられたよ、さすがヤクザも恐（おそ）れおののくことだけはある。」

「鈴（すず）に乱暴（らんぼう）しなかったことには感謝（かんしゃ）するが、誘拐（ゆうかい）したことは許（ゆる）さない。」

ここで神島（かしま）は一息（ひといき）ついた、そして声（こえ）のドスを抜（ぬ）いて言（い）った。

「だがもし鈴（すず）に土下座（どげざ）で謝罪（しゃざい）するのなら、お前（まえ）らを警察（けいさつ）へは突（つ）き出（だ）さないでやる。」

「本当（ほんとう）か・・・？」

「ああ、潔（いさぎよ）くムショに行（い）きたいならそうしてもいい。」

桐島（きりしま）たちは話（はな）し合（あ）いを始（はじ）めた。

「おれ、ムショには行（い）きたくねえ。けどこのまま戻（もど）ったら、組長（くみちょう）に何（なに）されるかわかんねえ・・・。」

「俺（おれ）は土下座（どげざ）する、大学生活（だいがくせいかつ）を捨（す）てたくない。」

「私（わたし）も、刑務所（けいむしょ）に入（はい）るよりは土下座（どげざ）の方（ほう）がましだよ。」

「・・・私（わたし）も刑務所（けいむしょ）は勘弁（かんべん）だ。」

桐島（きりしま）たちの腹（はら）は決（き）まった。

「そうか・・。鈴（りん）、こっちに来（こ）い。」

神島（かしま）に言（い）われて鈴（りん）が桐島（きりしま）たちの前（まえ）に来（き）た。

「大変怖（たいへんこわ）い思（おも）いをさせてしまい、申（もうし）し訳（わけ）ございませんでした！」

桐島（きりしま）たちは鈴（りん）に精一杯土下座（せいいっぱいどげざ）した。すると鈴（りん）は桐島（きりしま）を見（み）ると言（い）った。

「おじさん、オバケじゃないの？」

「ああ、人間（にんげん）だ。ウソついてごめんなさい。」

「良（よ）かった、おじさんが優（やさ）しい人（ひと）で。」

鈴（りん）は桐島（きりしま）の頭（あたま）をなでた。

「逮捕（たいほ）しなくていいのかい？」

警官（けいかん）が大島（おおしま）とイーサンに言（い）った。

「はい、事件（じけん）にはしたくないので。」

「ぼくはイタズラができれば、それでいいよ。」

その後桐島（ごきりしま）たちは、広場（ひろば）から去（さ）っていった。