第5話動き出した計画

八月一日はちがつついたち、イーサンは大島家おおしまけかっていた。

今回こんかいは「チーム・ブンガブンガ!」のあつまりではなく、名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごう集会しゅうかいたのだ。

集会しゅうかいあつまるのはほとんどが大人おとななので、イーサンはいた存在そんざいだ。

イーサンが大島家おおしまけはいると、緑山彦一みどりやまひこいちはなしかけた。

「よう、イーサン」

緑山みどりやまさん、こんにちわ」

最近さいきんたのしいか?」

「うん、とてもたのしいよ」

「さてはまたイタズラしてるな?」

「そのとおりですよ」

友近結子ともちかゆうこはなし参加さんかした。

「ああ、裕子さん。知ってたの?」

「ええ、おとといイタズラしてるとこましたので。」

「そうか、それでどんなイタズラをしたんだ?」

「ダンボールを使つかったイタズラです。そろそろ時間じかんですよ」

友近ともちかはそれだけうと、大島おおしま部屋へやへとかっていった。

「なんか参加さんかしたわりには、全然ぜんぜんはなしてないね。」

「ああ、彼女かのじょってそういうタイプなんだよね。」

友近ともちかのことではないながら、イーサンと緑山みどりやま大島おおしま部屋へやへとかった。







大島おおしま部屋へやには名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうのメンバーがあつまっていた。

名古屋老若連合なごやろうにゃくれんごうのメンバーは百人以上ひゃくにんいじょういるが、集会しゅうかい参加さんか個人こじん自由じゆうである。

「みなさん、こんなご時世じせいですがあつまってくれてありがとう。しつこいようだけど、コロナウイルスに感染かんせんしないようにけてね。」

大島おおしま開会かいかい挨拶あいさつをすると、つぎ近況報告きんきょうほうこく時間じかんだ。

「さて、今日きょう報告ほうこくは・・・。」

わたしがします。」

友近ともちか挙手きょしゅをした。

「では友近ともちかさん、どうぞ。」

ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃについての調査結果ちょうさけっかです。トラックを尾行びこうしたところ、名古屋市瑞穂区なごやしみずほく丁目ちょうめ団地だんちちかくにある建物たてものはいりました。」

友近ともちかはメンバー全員ぜんいん報告書ほうこくしょまわせた。

「ここはたしか、スーパーマーケットがあったな。いまつぶれてしまったが」

「そうです、どうもふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃのトラックはここを出入でいりしているようです。しかも会社かいしゃ看板かんばんはなく、それどころか建物自体たてものじたい倒産とうさんしてからそのままです。」

「おれからもいいか?」

前崎勇夫まえざきいさおった。

「では、おねがいします」

「えー、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃでアルバイトをしている高校生こうこうせい証言しょうげんです。バイトはいつも箱詰はこづ作業さぎょうとトラックにダンボールを作業さぎょうふたつ、始業時間しぎょうじかん午前十時ごぜんじゅうじで、終了時刻しゅうりょうじこく午後九時ごごくじです。アルバイトの場合ばあい個人こじん時間じかんめられるのですが、ただこのバイトのことはあまり口外こうがいしないようにわれているそうです。」

社長しゃちょう上司じょうし名前なまえは?」

「それがバイト同士どうし以外いがいは、名前なまえをよんではいけないというのです。だから社長しゃちょう上司じょうし名前なまえはバイトではだれりません。」

「これはますますあやしいなあ・・・。」

大島おおしまかんがんだ。

あと、この人物じんぶつつとめていることがわかりました。」

前崎まえざき大島おおしま一枚いちまい写真しゃしんせた。

「これは、桐島充きりしまみつる・・・。」

なんだって!!」

「まさか長篠組ながしのぐみ若頭わかがしらが・・・。」

メンバー全員ぜんいんおどいた。地元住民じもとじゅうみん秘密結社ひみつけっしゃでも、暴力団ぼうりょくだん相手あいてにしたくない。

「とにかくこれでふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ暴力団関連ぼうりょくだんかんれん会社かいしゃであることがわかった。住民じゅうみんふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ利用りようしないようにびかけよう。」

大島おおしま一言ひとことにメンバー全員ぜんいんがうなずいた。





集会しゅうかいわりメンバーがそれぞれかえっていくなか、イーサンは大島おおしまされた。

「どうしたの、大島おおしまさん?」

きみ、もうふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃにはイタズラしないよね?」

「うん、これ以上いじょうはヤバイからね。」

「よかった・・・。」

大島おおしまはホッとした表情ひょうじょうをした。

「でもふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ野放のばなしにはできない、いつか問題もんだいこることになるだろう。」

「そうだね、ぼくすよ。」

「イーサンはめてくれ、危険きけん大人おとなにはかかわらないほうがいい。」

「そうか・・・そうだよね・・・。」

残念ざんねんそうなイーサンに大島おおしまった。

「そのわりにイーサンにしかできない仕事しごとがある。」

「なになに?」

イーサンは目をかがやかせて大島おおしまたずねた。

「サスガスーパーが移動販売いどうはんばいはじめることになったんだけど、その宣伝せんでん一役買ひとやくかってくれないか?」

「マジックショーだね、もちろんいいよ。」

じつ大島おおしま昨日きのう、サスガスーパーの商品しょうひんふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ自分じぶんのところに横流よこながししていることを突き止めた。メンバー数人すうにん一緒いっしょにサスガスーパーの笹本店長ささもとてんちょうから事情じじょうった。そしてふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ一泡吹ひとあわふかせるために、移動販売いどうはんばい計画けいかくてたのだ。

笹本店長ささもとてんちょう、あの連中れんちゅうのせいで約一年間やくいちねんかんかなりの損害そんがいけたからね。」

「そもそも横流よこながしってなんなの?」

簡単かんたんにいうと、みせ商品しょうひん勝手かってること。」

「え、じゃあ横流よこながしでられた商品しょうひんれたらどうなるの?」

「そりゃ横流よこながしをしたひとのおかねになる、みせのおかねにはならない。」

「じゃあ万引まんびきとおなじだね、せないよ!!」

イーサンはほおふくらませた。

「そこでサスガスーパーが移動販売いどうはんばいをすれば、ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ横流よこながしする商品しょうひん入手にゅうしゅできなくなるということだ。」

「なるほど、でも連中れんちゅうがかなりおこるよ?」

「だったら、いままでの横流よこながしのけん警察けいさつうとおどせばいい。」

「そうか、わることしてるのはこうのほうだよね。」

「ああ、そうだ。宣伝せんでん明後日あさってだ、よろしくな。」

「よし、かえってマジックの稽古けいこだ」

イーサンはいそあし帰宅きたくしていった。







八月二日はちがつふつか午後四時ごごよじ桐島きりしま運転うんてんするトラックがふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ駐車場ちゅうしゃじょう駐車ちゅうしゃした。

荷物にもついたぞ、はやろせ」

桐島きりしまびかけると、四人よにんのアルバイトがけつけ、荷下におろしがはじまった。

はこさん、いつもご苦労くろうさんです。」

「ああ、ありがとな。」

桐島きりしまはアルバイトたちに、自分じぶんが「長篠組ながしのぐみ若頭わかがしら」という事実じじつ隠蔽いんぺいしている。

とにかく身元みもとかくすことを徹底てっていしているのだ。

「おい、はなれてくれ」

「ねえねえ、なにしているの?」

突然とつぜん、アルバイトの一人ひとり四歳よんさい少女しょうじょからまれた。

「ねえねえ、そのはこ中身なかみはなあに?」

少女しょうじょはアルバイトのているツナギにしがみついてはなれない。

「おい、なにやっているんだ?」

「それが、このはなれなくて・・・。」

桐島きりしまはためいきをつくと、少女しょうじょのところにかった。

きみ、ここからはなれてくれないか?」

「おじさんはだれなにをしているの?」

「おじさんたちはおばけなんだ。」

桐島きりしま笑顔えがおこたえた、すると少女しょうじょ恐怖きょうふでふるえだした。

「お・・・おばけ・・?」

「ああ、ひとけたおばけなんだ。られてはいけなかったのに・・・、仕方しかたないからきみをおばけにしよう。」

「おばけになったら、どうなるの・・・?」

「ずーっと私達わたしたち手伝てつだいをするんだ、パパとママには二度にどえない。」

「いやだ、そんなのいや!」

「じゃあ、ひとつだけ約束やくそくしてくれ。できるかな?」

「うん、やくそく・・・まもる。」

きみ名前なまえおしえて。」

「・・・かしまりん」

桐島きりしま自分じぶん手帳てちょうに「神島鈴かしまりん」といた。

桐島きりしまはおれいにアメをりんわたした。

そしてりん桐島きりしまあたまげると、いえへとはしっていった。


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