第4話コロナ禍のヤクザと悪徳市長

八月一日はちがついたち午後二時ごごにじ桐島充きりしまみつる運転うんてんするトラックが「サスガスーパー」の裏手うらて駐車場ちゅうしゃじょう駐車ちゅうしゃした。

いたぞ、きろ」

「あ・・・、すいません」

桐島きりしま助手席じょしゅせきすわっている田中賢たなかけんこした。

二人ふたりはトラックからりると、サスガスーパーの裏口うらぐちからなかはいった。

二人ふたりはスタッフルームにはいると、店長てんちょう笹本ささもとった。

笹本ささもとさん、商品しょうひんりにましたよ。」

「ああ、わかった・・・」

笹本ささもと二人ふたりおびええながら、バックヤードのかぎわたした。

あと手伝てつだいを二人ふたりたのむ。」

笹本ささもとはアルバイトを二人ふたりかせた。

そして桐島きりしまがバックヤードのとびらけると、桐島きりしまらはげられたダンボールのなかからひとひとつをり、駐車場ちゅうしゃじょうのトラックまではこんでいった。

桐島きりしまらはバックヤードからダンボール三十箱さんじゅっぱこはこした、種類しゅるい食料品しょくりょうひん八割はちわり日用品にちようひん二割にわりだ。

「おまえら、もういいぞ」

「あの、こんなこといつまでつづけるのですか?」

桐島きりしまからバックヤードのかぎったアルバイトがった。

文句もんくおうとする田中たなかおさええ、桐山きりやまはニコニコしながらった。

「そんなこといていいの?組長くみちょう報告ほうこくするけどいいのかい?」

二人ふたりのアルバイトはビビりだした、わらいながら相手あいておどすのは桐島きりしま得意技とくいわざである。

そして二人ふたりのアルバイトはスタッフルームへとした。

「アニキ、流石さすがです」

められることじゃない、はやくぞ。」

桐島きりしま田中たなかはトラックにんで、サスガスーパーをあとにした。

一連いちれん出来事できごとは、「められた強奪ごうだつ」である。






桐島充きりしまみつる長篠組ながしのぐみ若頭わかがしらで、はいってから八年目はちねんめのベテランヤクザである。

大学だいがくでうまくいかずにグレていた桐島きりしまは、あたまさを組長くみちょう羽柴剛仁はしばごうじわれ、大学卒業後だいがくそつぎょうご長篠組ながしのぐみはいった。

そして三年目さんねんめときに、若頭わかがしら昇進しょうしんした。

そして去年きょねん八月十五日はちがつじゅうごにちのこと・・・。

桐島きりしま、やはり去年きょねんより仕事しごとっているな・・・。」

「そうですね・・・。」

長篠組ながしのぐみは「長篠輸送ながしのゆそう」というフロント企業きぎょう運営うんえいしている。

中小レベルの輸送会社ゆそうがいしゃで、地元じもと個人商店こじんしょうてん居酒屋いざかややキャバクラを相手あいてに、商品しょうひん輸送ゆそうをしていた。

ところが新型しんがたコロナウイルス感染予防かんせんよぼうによる飲食店いんしょくてん営業自粛えいぎょうじしゅくにより、居酒屋いざかややキャバクラは経営難けいえいなんになり次々つぎつぎ閉店へいてん

得意先とくいさきうしない、長篠輸送ながしのゆそう経営難けいえいなんになった。

「あの、『ハピネス』のことですが・・・。」

「ああ、本郷駅前ほんごうえきまえのキャバクラがどうしたんだ?」

来週末らいしゅうまつ閉店へいてんするそうです。」

「はあ・・・、また得意先とくいさきった。忌々いまいましいコロナウイルスめ」

羽柴はしば地団駄じだんだをした、かなりあたまにきているかんじだ。

そんなとき電話でんわった、桐島きりしま電話でんわた。

「はい、長篠輸送ながしのゆそうです。」

いま羽柴君はしばくんはいますか?」

社長しゃちょうですね、かしこまりました。少々しょうしょうちください」

桐島きりしま羽柴はしばに「組長くみちょうへの電話でんわです」とげて、受話器じゅわきわたした。

羽柴はしば通話つうわると、羽柴はしばきゅうあかるくたのしげな口調くちょうになった。

そして十分程じゅっぷんほどたったとき羽柴はしば通話つうわった。

うれしそうな羽柴はしばに、桐島きりしまたずねた。

「どなたからでしたか?」

清藤日進きよふじにっしんおれのマブダチからだ。」

「それで内容ないようは?」

二人ふたりはなしがしたいから、今夜七時こんやしちじいにきてくれというものだ。」

くにまってるとおもった桐島きりしまは、メモちょう記入きにゅうした。





午後六時ごごろくじわせ場所ばしょ小牧駅こまきえきへと羽柴はしばせたくるまはしした。

羽柴はしば清藤きよふじのことを後部座席こうぶざせきから、運転中うんてんちゅう桐島きりしまけてはなした。

それによると羽柴はしば清藤きよふじしょうちゅうこうおな学校がっこうだったが、高校卒業こうこうそつぎょうからはたがわなくなった。清藤きよふじ二年前にねんまえ小牧市こまきし市長しちょうになったことを聴いた。

小牧駅こまきえきくと、清藤きよふじくるまんだ。

「やあ、ひさしぶりだな。」

「こちらこそ、おたがいにとしりましたなあ。」

その清藤きよふじ道案内みちあんないにより、くるま清藤家きよふじけ到着とうちゃくした。

全体ぜんたい白塗しろぬりの高級感こうきゅうかんあふれる屋敷やしきだ。

「いやあ、立派りっぱですな・・・。」

「さあさあこちらへ、ウイスキーを用意よういしています。」

「お、いいね。ではいこう」

羽柴はしば桐山きりやま清藤家きよふじけはいると、執事しつじ出迎でむかえてくれた。

執事しつじ案内あんないされた部屋へやで、会話かいわはじまった。

「それではなしというのは何ですか?」

羽柴はしばさんは、最近さいきんもうかっていませんか?」

全然ぜんぜんダメ、このコロナ得意先とくいさきがどんどん閉店へいてんして、仕事しごといのです。」

「なるほど・・・、ではわたしあたらしいビジネスをしませんか?」

羽柴はしば桐島きりしまくびをかしげた。

「それは、どういったビジネスですか?」

食品しょくひん大量たいりょうあつめて、それをきゃくりつけるビジネスです。」

「ほう、それでこれはもうかりますか?」

いまものくのも躊躇ちゅうちょする時代じだいです。そんなとき食品しょくひんやす大量購入たいりょうこうにゅうできたとすれば、大変たいへんがたい。」

たしかにそのとおりです。」

「そこであなたがた暴力団ぼうりょくだんちから必要ひつようです、サスガスーパーの社長しゃちょう福野富次郎ふくのとみじろうおどしてほしいのです。」

清藤きよふじ羽柴はしば福野ふくとみ顔写真かおじゃしんわたした。

福富ふくとみおどしてどうしたいのだ?」

「サスガスーパーにある商品しょうひんを、こちらにながしてもらうのです。こうするとタダで仕入しいれることができます。」

「それは横流よこながしというのですが・・・。」

「そのとおりです」

これは違法いほう商売しょうばいだと、桐島きりしま理解りかいした。

「では、横流よこながしした商品しょうひんをどうやって販売はんばいするのですか?」

「ダンボールにめて格安かくやすります、名付なづけてふくダンボールです!」

福袋ふくぶくろのダンボールバージョンですか・・・、これはいけますね。」

「ターゲットは高齢者こうれいしゃ主婦層しゅふそうです、やすさにびつきやすいのですから。」

たしかにそうだな、これはいけるぞ!」

「では、協力きょうりょくしてください。おねがいします」

「いいとも、ひさしぶりに頑張がんろうじゃないか!」

羽柴はしば清藤きよふじかた握手あくしゅした。

しかし桐島きりしま懸念けねんかんじていた。

うえ人間にんげんは、きたなをよく使つかう。」

これは桐島きりしま人生じんせい教訓きょうくんだ。

もしこのけんがバレてあぶなくなったら・・・。

そこからさきは、このとき羽柴はしばにはえない。







それから長篠組ながしのぐみ福野富次郎ふくのとみじろうおどした。

「もしさないと、あんたの会社かいしゃ全店舗ぜんてんぽ営業許可証えいぎょうきょかしょ剥奪はくだつする。こちらには市長しちょうがついているぞ!」

すると福野ふくのれ、商品しょうひんをタダでわたしてくれた。

そして「ふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ」を起業きぎょうした。

まず手始てはじめに団地だんち周辺しゅうへんったところ、予想以上よそういじょう盛況せいきょうだった。

それから羽柴はしば清藤きよふじふくダンボールをつづけ、おたがいに利益りえきた。

去年きょねん十月じゅうがつ新聞しんぶんにもげられ、さらにげはえた。

そして今年ことし三月三十一日さんがつさんじゅういちにち桐島きりしま羽柴はしばされた。

来月らいげつからおまえ長篠輸送ながしのゆそう社長しゃちょうだ。」

「はい、かしこまりました。」

桐島きりしま社長しゃちょうれることにこころなかおどろいた。

「わしはふくダンボール株式会社かぶしきがいしゃ社長しゃちょうになることにした、たがいに頑張がんばろう。」

桐島きりしま複雑ふくざつ表情ひょうじょうをした。

桐島きりしまなにいたそうだな?」

「ではわせていただきます。ふくダンボールは危険きけん商売しょうばいです、もしバレるようなことになったらわれらがつみ背負せおむことになります。」

「そんなことだれがするんだ?」

清藤きよふじです。」

「おめえ、おれのマブダチが信用しんようできねえのか?」

羽柴はしば桐島きりしますごみながらった。

「いいえ、ただそういう可能性かのうせいがあるということです・・・。」

「まあいい、けど二度にどうたぐったらゆびめてもらうからな。」

そして桐島きりしま長篠輸送ながしのゆそう社長しゃちょうになって、現在げんざいいたる。





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