第5話 絶海の孤島
「うわぉ…………」
ポセイドンから贈られた島に転移してみたアッシュは、島を覆うポセイドンの結界に呆れながらも神様の愛は相変わらず重いとこっそりため息をついた。
「まあここまで強固なら魔法や技能の検証にも使えるから有難いな」
ゲーム内には当然、アッシュのような能力を持った存在はいない。
そのためどこかで能力の検証をする必要があった。
もっともRPGがベースになっているおかげでステータス表示があるので、そこまで苦労はないのだが。
「確実に能力が上がっている。今までは1回行って、そこの水に血を捧げないと転位出来なかったのに………全ての水がポセイドン様の支配下になっている?なんで?」
『何も難しい事ではない』
「ポセイドン様!えっとさっきぶりです」
『うむ。先ほど言い忘れた事があってな。それを伝えにきたのだ』
「はあ」
ポセイドンの話によるとこの世界を作り出した女神の横暴とも言える行為に怒った日本の神々によって女神から降格させられ、連れ去った人間の残り寿命を全てまっとうするまで日本人として生きるように縛られたとか。
それもアッシュのように完全な不老不死ではなく、百歳まで生きてはリセットされ赤ん坊からやり直しになるというもので、当然技能もリセットされる。
ただし自分が犯した罪だけは記憶に残り続けるので、やり直しする度に反省しなければならないのだが、反省の色が見られないと神々の一柱でも感じた時は、寿命が加算され下手すれば永遠に終わらない。
(勉強した記憶は残らないから、前世の記憶があっても役にたたないわけか………なかなかどうしてえげつない)
しかしそうなるとこの世界を管理する神が必要になる。
そこで現在は暇というか信者のほとんど居ないオリンポスの神々に白羽の矢がたった。
すでにポセイドンのお気に入りであるアッシュがいるのだから、地球よりは居心地が良さそうだと満場一致で可決され、先行してポセイドンが道を繋げに来ているという。
「流石はオリンポスの神々ですね。フットワーク軽い!」
『まあ暇してるからな。ゼウスなどケモ耳最高とか叫んでヘラに亀甲縛りにされていたが』
「アハハ相変わらずお元気なようで何よりです」
『今後、神々がお前に頼み事という名目で厄介事を持ち込んでくるだろうが、完遂した暁には能力かアイテムを必ず一つあたえることになっているし、不死のお前に完遂出来ない無理難題を言われた時は私を呼べ。分かったな。お前が欲しがっていたアイテムを集める役にも立つはずだ。精進するのだぞ』
「仰せのままに」
『それとは別に日本の神々からも頼まれた事がある』
ポセイドンが手を振ると地下から湧き出た水の中から日本の神々の一柱である海神が現れた。
(確かワダツミ……あれ?ワタツミだったかな)
『どちらでも構わぬ。アッシュといったな』
「はい。俺に何をせよと?」
『糞虫が連れ去った女達の魂が、いまだこの世界に縛られその魂の力を世界存続の礎とされている』
「はあ!?ちょ、ちょっと待ってください。もし俺が不死じゃなかったら………」
『さぞかし良い礎になった事だろう』
元々良い感情を持って居なかったが、この段階でアッシュの中で元この世界の女神は百害あって一利なし。ただの害虫に決定した。
海神が言うには百人以上の女達がこの世界のどこかに縛られているので、見つけ次第解放して欲しいと言う。
解放に必要なアイテムは人によって異なるので、その都度必要なアイテムがインベントリーに送られてくるとか。
『なかには地球へ戻る事を嫌がる魂もあるだろうが、その時はこの世界で転生出来るようにするとハデスが言っていた。もっとも転生特典とか前世の記憶など一切つかないがな』
『人として生まれる保証もないので、どちらの世界を選んだところで代わり映えしない』
「そこら辺はシビアなんですね」
『半分騙されたとは言え、己の意思で来た者が多いのでな。好きな方の世界で転生させてやるだけ親切だと思わんか?』
「黙秘します」
死ねない自分には一生分からない事なので余計な事は言わないに限ると口をつぐむアッシュに海神は愉しそうな笑い声をあげると、アッシュの手に取り出した鉾を押し付けた。
「これは?」
『長い任務となるであろうから手付としてそれをやろう。そなたの姿にあわせて長さを変える鉾だ。水の中では水圧など物ともせず、自在に操れる。そなたにうってつけの武器であろう?』
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
思わぬ褒美に頬を染めて嬉しがるアッシュにポセイドンは自分の贈り物との反応の違いに、今度はお揃いの防具を贈ろうと密かに企むのだった。
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