東京僕はひとりぼっち

東京駅八重洲口と言えば僕にとって印象的だったのはやたら自己主張の激しいヤマダ電機と、世間の本不況など意にも介さない八重洲ブックセンターだった。

高層とは言い切れないビル群にド派手な照明。それを呼び込むような久光製薬と明和天ぷら粉のネオン。

品が良いとはお世辞には言えないが肩肘を張ってくれるな、と言わんばかりの八重洲口の姿は丸の内口にはない魅力だったと思う。そういうのもあって僕はやたら八重洲口に降りた記憶がある。

そこには東京、いや、集積した日本の今があるようで好きだった。


数年ぶりに東京駅にやってきたのだが八重洲口を出ると随分と光景が変わっていた。

駅を出たあとの高速バスとそこに並ぶ人の列は相変わらずなのだが、見知ったビル群がなくなり、東京ミッドナイト八重洲とかいう巨大なビルがドンと鎮座している。

ちょっと南に歩くと八重洲ブックセンター周りのビルが消失しており、クレーンが上下に右往左往していた。都市開発するとかしないとかは聞いていたがいざそれが実感を伴うと驚きを隠せないものである。

そうでなくても大きいと言われる手をさらに開くと今まで見えなかったブリジストンの本社や明治のビル。そこにそっと隠れるように佇んでいる明治屋の影が映る。

自分の知る建物が一つ消えるだけでこれほどもまあ景色が変わるもんだ。明治屋、なんて名前は聞いたことあるが東京駅から見えるところにあるなんて思いもしなかった。元々出不精の僕だから余計にそう思う。

多摩地域とは言え東京都に住んで一年、関東と言われたらかれこれ十年近く住んでいるというのにこの地理感のなさこそまあ僕と言われたら返す言葉もないのだけれど。


慌ててヤマダ電機はどこか、と辺りを見回す。そんなに僕の覚えている東京からここは変わってしまったか。

見てみるとあった。が、僕の記憶にあった所からかなり遠ざかっている。記憶違いだったかどうだったかはわからない。だがあんなに遠かった記憶はない。

なんだか東京がかなり遠い存在になってしまった。


しか振り返ると単に自分が年を取っただけのような気もする。

先程まで語っていたそれらは正直に言えば僕が東京駅付近に足をおろした時の記憶だ。つまり、その時の今を通して僕はぃの東京駅を見ているわけだ。それはおおよそ10年くらい前の東京であって、過去の東京を僕は今の東京として見ているに過はあくまでぎないのだ。

目の前に映る東京は過去僕が思った東京の今がそこに反映されているのであり、あくまで僕が過去に置き去りにされた記憶を手繰って「変わった」と言っているだけにすぎないのだ。


東京八重洲口は未だに日本の今を映し出していている?しかし、改めて自分が年を取ったのだと跡形もなくなった八重洲ブックセンターと、そのとおりにある明治屋の看板を見て感じずにはいられない。

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