お題:ハンドガン

「アタシの方が上手いッつってんだろ!」

「耳元で叫ぶな乱射魔が……」

「あァ!?」

 VRゲーム「レッド・レティクル」

 山岳、屋内、雪原など様々なステージでのPvP銃撃戦がウリの人気タイトルだ。

 その中でも比較的オーソドックスな荒野ステージにて、言い争う男女のプレイヤーがいた。顔の右側に炎のトライバルを刻んだ少女がまくしたてると、ゴーグルを着用した少年がクールに返す。

「その議論はさっきの訓練所で解決しただろう」

「デコイ20体撃破! タイム早いのはアタシだったろ!」

「命中率もヘッドショット率も俺の方が上だった」

「実戦じゃ速い方が強い!」

「一理あるが、攻撃してこないデコイに甘えて遮蔽もない場所でリロードするようなプレイングは減点だろ」

「〜〜〜〜ッ! 訓練所で何がわかるってんだ!」

「勝負を持ちかけたのはお前だろうが……」

 呆れ顔の少年をよそに、少女は二丁のハンドガンを取り出し、ひとつを少年に投げ渡した。

「勝負だ!」

「……はァー、わかった。内容は?」

「そりゃもちろん……」

 二人は何を言わずとも、同時にNE方向に銃口を向けた。2連続の銃声が、岩陰から飛び出したプレイヤーを仕留める。

「ソロスク、ハンドガン縛り編だ!」

「勝利条件は」

「キル10先!」

「ダウンしたら?」

「放置!」

「上等」

 銃声を聞きつけた部隊が波濤のように押し寄せる。二人は散開し、遮蔽物の影でニヤリと笑う。

「うははははァッ!!」

 乱射された銃弾が一部隊を丸ごと仕留めれば、

「沈め!」

 狙い澄まされた一発が頭を撃ち抜く。

 双方が自分の勝利を確信するように撃鉄を打ち鳴らし、ギラギラと鋭く光る眼は相手の敗北などありえないと信頼していた。


 その後、ハンドガンのみで他部隊を殲滅する凄腕のデュオが噂となるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る