お題:ウニ

 突如、妹が段ボールに立て篭もり始めた。

「何か嫌なことでもあったか?」

「違いますよ兄様。わたしは今日からウニになるのです」

「会話の世界観がボーボボかゴルシ」

 混乱している俺を見かねてか、妹が追加の説明を始める。

「まずわたしはキャベツが好きです」

「野菜好きで健康的だな」

「そしてウニはキャベツを食べます」

「SNSで見たことあるな」

「つまりわたしはウニです」

「飛躍が凄まじいがなんとなくわかった」

 要するに引きこもって楽したいんだなコイツ。

「さすがです兄様」

「では早くキャベツをください。私はゲームをしているので」

「段ボール籠って生キャベツ食ってゲームしてる状態ってこんなに異様なんだな」

「いい経験ですね」

 とはいえ、困ったことになった。

 コイツの怠け癖は筋金入りだ。サボれる口実や隠れスポットを見つけるとバレるまでずっっっと擦り続ける。ウニ作戦もさっさと終わらせなければ。

「お前ウニなんだよな」

「ウニです」

「実は取れんのかよ」

「取れますよ。はいどうぞ」

 差し出されたのはお菓子の包装紙。

「取れたてです」

「中身は取られたてだよ。……よーしわかった。ウニなんだからメシはキャベツでいいんだな」

「さっきからそう言って……」

「じゃあ晩飯のカレーもいらねぇな」

「脱皮しましたウニです」

「それはもはやウニじゃねぇよ」

「カレーの前にウニの棘など無力……」

 毎度チョロいので助かっている。いまのところ、怠け癖への対処はカレーとハンバーグで百発百中解決できている。

「わたしが晩御飯を食べないと兄様が心配のあまり倒れてしまいますからね。いやはや仕方なし」

「はいはい。それでいいよ。実際心配だしな」

「ふふふ。チョロ甘兄様」

「やかましわ」



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る