お題:結婚
今日は姉の結婚式。新郎新婦の友達による出し物や、家族への手紙といった定番のイベントを楽しみながら過ごしていた時だ。
「……藤さん?」
スタッフとして働く同級生と遭遇しました。
「な、なんでここに……!?」
「バイトしてる店が今日の料理を提供してるから、ホールスタッフとして手伝いを……ごめん、話はまた今度で」
彼は早々と食べ終わった皿を回収していく。その手並みたるや、カトラリーがカチャカチャと鳴りもしないほど見事なものだ。
次に料理を運んでくるところを見ていると、一人で四皿も運んでいた。
「え、片手でどうやってあんな……すご」
意識すればするほど、彼の動作の全てが優雅で瀟洒に見えてくる。ほとんど関わりがなかった同級生の仕事人っぷりから目が離せない。
「こちら、鴨のローストになります」
「あ、ありがとうございます……?」
「ふふ、どうも」
おいなんだその柔らかい笑顔は。
三次元の男なんてロクなモンじゃないという認識を改めねばならない。野球の素人が選球眼を持たないように、私が現実にある要素を発見できなかっただけだ。
「……ごちそうさまでした」
「空いた皿をお下げいたします。……ドレス、とてもお似合いですよ」
こいつ。ほんと。こいつ。
結局、それ以降私に会話のチャンスは巡ってこなかった。気付いた時にはもう仕事を終えて帰ってしまっていたのだ。
これを機に、なんて考えはしない。それは思い上がりだ。偶然から恋愛が始まるのはフィクションだけだ。
だけど、私は彼を目で追うだろう。日常に滲み出す優美な所作を探そうとするこの気持ちは、アイドルを見つめる感覚に似ている。
そう、私にとって彼は推しとなったのだ。
その後、見過ぎだと友達に指摘されたので訳を話した結果、一時期密かに人気が出ることになった。
同担拒否の気持ちが少しだけわかった。あれは私が発見した推しなのだ!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます