お題:広告
白衣を纏う少女は開口一番こう言った。
「これを飲めば疲れが吹き飛ぶ!」
そして出されたビーカーには気泡を噴く黒い粘液が。
「安全性も味もバッチリ! ってな感じで学食で売ろうと思うんだけどどうかね!」
「誇大広告にもほどがある」
「なんだとぉ!?」
忌憚のない意見を言って何が不服というのか。
「この見た目で安全性と味の両立は無理だろ」
「見た目が悪いというのか!」
「その通りだろ。五年寿命が延びるぐらいのメリットないと手に取らんぞコレ」
会話の途中に割れた気泡から茶色の煙が噴出した。
「十年延びないと飲まん」
「キャッチコピーは十年延長!」
「実証もしてないことを言うな」
「飲んだら目ェギンギラギンになるんだぞ!」
「躊躇なしか。フロンティア精神炸裂か」
「じゃあ精神炸裂だ」
「炸裂してんのはお前の頭だよ」
そもそも、何故こんなものを作ったのか。問い詰めると、少女は純真無垢を装った顔で答えた。
「学食のおばちゃんが『ウチも名物が欲しい』って言うからね?」
「黒い粘液が名物の母校でいいのかお前は」
「ぐぬ、なんでだ。このいかにも正気を失いそうな異界の生物を思わせるトクベツ感がウケないというのか」
「なんで不特定多数のSAN値削ろうとしてんのお前」
「ワタシもお前の審美眼だけは信頼している。この液体Xが売れない事は明白だろう」
「俺が発するのは極めて一般的な意見だと思うぞ」
「やむなし。次の試作品にとりかかる」
肩を引っ掴んで止めた。
「わかった。俺が手伝う。だから頼むから暴走するな」
「アオーン」
「エヴァ的暴走のがいくぶんかマシだ。飽きるまで手伝ってやるから、天才的な科学力と壊滅的な美的センスに任せて駆け抜けるな。誰も追いつけないから」
「えへへ、いいコト言うじゃないか。ワタシの頭脳に追いつけるのはお前ぐらいしかいないからね」
「頭脳じゃなくて忍耐だと思うけどな……」
気まぐれが過ぎる天才こと、幼馴染の手綱を親御さんから任されて十数年。いまだ引きずり回されてばかりだ。
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