お題:朝
『朝日だ……』
呆然とした声がヘッドホンから聞こえてきたのは、思考停止のまま敵にエイムを合わせていた時だった。テレビから目を離すと、カーテンの隙間からうっすらと光が見える。
「マジか……またやっちまった」
『やべーよやべーよ。またこれ八時間仮眠ぶっかまして大遅刻ルートだぞ』
「もうこのまま登校するぞ。通話繋いだまま準備だ……」
『うぃー』
ゲームの光で麻痺していた脳へ一気呵成に襲い掛かってくる眠気を噛み殺し、制服に手を通す。
『やべーソックスない。……黒と紺ならバレへんやろ』
「姑息かよコソクムシが」
『出会いがしらくらわすぞお前』
「あー? 炎等倍がエラそーにしやがって」
脳死会話を繰り広げながら鞄を手に取る。朝ご飯はコンビニでいい。
『今日って何か提出なかった?』
「あー……忘れた」
『二人で死ぬか!』
「ははははは」
『その笑い声だけでミイラ五体作れるわ』
「どういう例えだよ」
家を出ると、優しい朝日が目に沁みた。真上に昇ってくると殺人光線の太陽だが、早朝は少し手加減してくれるからこの時間は結構好きだ。
『あ、もう出た? こっちもいま靴履いて……ぐああああ頭いてぇえええ』
「吸血鬼かお前は」
『人間辞めちまうよこの痛みは』
「辞めたら灰になるぞ」
『じゃあ太陽沈めるか』
「過激思想で草」
誰もいない道路沿いを歩く。向かう先は、いつものコンビニ前。
「おう、おはよう」
『あ、おっはー。今日も不健康な顔してんね」
腹が立つほど健康そうな女子は通話を切って笑った。
「いやー、また夜通しゲームやっちまいましたな」
「ランクのポイント全部溶けたわ」
「元から下限ペロペロなんで関係ないっすわー。というかマジでなんか宿題なかったっけ」
「……野となれ」
「山となれ! よし、怒られっかー!」
その後、二人そろって誰もいない教室で爆睡を決め込み、朝のホームルームで叩き起こされる破目になったのだった。
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