お題:証拠
「さて……誰がアタシのエクレア食った?」
僕が文学部の活動で図書室へ入ると、木刀を持った部長が机の上で足を組んでいた。
机を挟んで向かいには二人の部員が正座させられている。
「あのー……どういった状況でしょうか」
「おうヒナ坊。このバカどもの誰かがアタシのおやつを食いやがったんだわ」
「そんなことしてないッス部長!」
「証拠もないのに横暴やぞ!」
ほーう、と深く頷くと、部長はゴミ箱を傾けて中を見せた。
「コレ、購買のエクレアの包装だよな? なーんで飲食禁止の図書室にこんなモンがあるのかねぇ」
「いや知らないッス」
「ちゅーか普段ここでおやつ食うとる自分はどないやねん」
「論点ズラすなアホども。アタシがここに来たときにはもうあった。そしてアタシが密かに図書室へ冷蔵庫を設置したのを知ってんのはウチの部員だけ。つまりお前らのどっちかだ」
「た、たしかに……」
「そうかもしれんけどまず冷蔵庫がアウトやろがい」
それはそうだが、部長が好き放題してるのはいつものことなので気にしたら負けだ。
「というか、部員ならヒナ坊だってそうじゃないッスか」
「は、はい……」
「ヒナ坊はアタシのおきにだから除外だろ」
「横暴や!!」
「うるっせーな。証拠はあんだよ。めんどくせぇし二人ともシバくか」
「「やめろォ!!」」
このままでは先輩二名が犠牲になる。血で本が汚れてはいけないのでどうにか回避の方法を考えていると、ふと思い出したことがある。
「部長、今日はエクレア二個買いました?」
「ん? アタシは健康志向だから毎日一個だぞ」
「えっと……これ見てください」
スマホで写真を出す。
「今日の昼休みに撮ったやつです」
「ヒナ坊とメシ食ってるッスね」
「……ってエクレア食うとるやんけ!!!」
「そういや食ったわ」
うっかり屋さんな部長だ。
「じゃあ、あの包装はなんやってん……」
「昨日のおやつじゃないですか? ゴミ捨ての係って……」
「わたしッスね」
「よしお前有罪」
「ギャーッ!?」
かくして、校内一やかましいと噂の文学部は今日も賑やかなのでした。
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