お題:電車
田舎の電車というのは本当に数が少ない。よくて一時間に二本という具合な上に、何故だか下校の時間帯にちょうど電車が通らない。なので僕はいつも近くの公園なんかで時間を潰すようにしているのだけど……
「いましたね生徒会。今日も私と委員長勝負です」
「またか……」
大体いつもこの学級委員長に絡まれる。
「電車の時間まで買い食いに興じるでもゲームセンターへ行くでもなく、公園で休息……さすがの委員長力です」
「その委員長力っていうパロメーターやめとき? なんというか……アホっぽく見えるから」
「アホではありません。断じて」
「この前の数学テスト、赤点じゃなかったっけ」
「32点は赤点ではありません」
雰囲気と端麗な容姿でごまかされているが、一皮むくとご覧の通りアホの子だ。しかし実直なのはたしかであり、いつも委員長としての立ち振る舞いを考えて行動しているらしい。
「さあ、今日は何で勝負をしますか? 理想の委員長となるため、努力を怠ることはできません」
「理想の委員長が赤点ギリギリはマズいのでは?」
「…………数字は嫌いです」
そう言いつつもぷいっと顔を背けるあたり、自覚はあるみたいだ。
「じゃあ、今日は勉強会ってことで。数学やろっか」
「む、流れるような勉強の誘い方。なんという委員長力……!」
「ただの生徒会庶務だからね?」
だいたい、いつもこんな感じだ。勉強したり、雑談したり、たまに遊んでみたり。生真面目な彼女はいつもそれにいろいろな意義を見出して全力で取り組むので、見ていて飽きない。
「じゃあ次のテスト、正弦定理から」
「せいげ……え?」
「……サインコサインからやろっか」
これから先もしばらく退屈しないで済みそうだ。
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