お題:教室
「そこにいるのは我が友、李徴子ではないか」
「俺は虎になってねぇぞ」
「乗ってくれよぉ」
早朝の教室にぽつんと寂しく座っていた背中は、俺の入室と共に陽気なウザ絡みを始めた。
普段は物静かなこの女、読書が趣味で無口な文学少女かと思いきや、旧知の相手には容赦ないダル絡みを敢行してくる内弁慶である。日常で気配を消している分、気を許した相手にはこれでもかと存在感を出してくる。
「お前さぁ。いい加減、高校の友達作れよ」
「やだね。どうせ私なんて都合のいいパシリにされるのが関の山だ。曲がつた鉄砲玉のように走り回るのは勘弁だね」
「歪み倒した色眼鏡してんなお前な」
しかし、いつまでもそうは言っていられない。
「クラス替えの時にバラけたら本当にボッチになるぞ。多少の社交性は身に付けろ」
「う……」
苦虫を噛み潰したような顔で彼女は机にうなだれた。
「わかってるんだよ……でも私じゃダメなんだよ……文学を読みもせずに古臭いと小馬鹿にしてくるようなクラスメイトと仲良くできない……そんな風に見下してしまう私も愚か者だし……」
「考え過ぎなんだよ。ほら、手伝ってやるからちょっとずつ身内以外との会話に慣れてけ。お前が虎にならねぇように、な」
「……ありがとう」
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