お題:ゲーム
五つの頃からゲームをし続けてきたので、ゲームが得意な自負があった。
買うのはもっぱらRPGだけど、アクションもSTGもそれなりにやってきた。だけど……
『よっしゃ! ウチの勝ち!』
「ゔぁぁぁぁ」
FPSをやる心がへし折られそうになっている。
カメラの向こうで調子よく笑うのは、ピンクいフードを被った茶髪の少女。クラスでは陽に属するカースト上位――いわゆるギャルの類いだ。
『10先なのに9-0だねぇ? オタクくん負けちゃうー??』
「おめぇもオタクの部類だろうが表層陽キャめ……!」
いかにしてカースト下層ゲーマーの俺とカースト上位のコイツが知り合ったかというと、原因は俺と友達の会話を偶然コイツが耳にしたことだった。
「この前発売された武器ストラップ、何当たった?」
「LMGの赤スキン。色までダブった……」
「ツイてねぇー」
あるゲームに登場する銃がストラップとしてネットで販売され、俺は二箱買って見事に同じものが当たった。これを嘆いていた放課後である。
「赤LMGとコレ交換して!!」
突如として差し出されたカラフルなネイルの先につままれているのは、俺が持っているのとは別の銃のストラップ。これが発端となって、いまではコイツと一緒にプレイするのが日常となった。
しかもコイツ、やたら上手い。俺がソロランクのプラチナ止まりなのに対し、このギャル、まさかのダイヤモンド。何故だ、ギャルというのは俺らがエイム練に捧げている時間を友達とスタバで駄弁るために使っているのではないのか。
『え、練習ってそんなにやんなくてもよくない? ちょちょーって練習してパパーってやれば当たるっしょ?』
「それができりゃ苦労せんのだ天才め……!」
実際にできているから始末が悪い。たぶん頭の出来が違うんだろう。十分の練習があるとして、俺とコイツでは効率が十倍違うと見た。
『どうする? 10先勝負リタイアして大人しくウチにクレープ三つ奢っちゃう?』
「うるへー。諦めてたまるか!」
『男の子だ、カッコいい!』
そして俺は一分後に敗北した。敗因はショットガン相手に接近を許してしまったことである。
「チクショウめぇー!」
『立ち回りが甘いし。はぁー、甘々なクレープが楽しみ~!』
「ぐぅ、敗者からの搾取がそんなに楽しいかサディスト」
『うん楽しい! だって、身近にゲームやってくれるヤツいなかったもん』
その声音は、少し寂しげだった。
『このファッションしてるウチと、ゲームやってるウチ。両方好きだけど、両方認めてくれる人って中々いないんだよね。友達はゲームとか全然知らんし、オタクくんたちは話しかけると逃げてくし』
「そりゃまぁ、ギャルの中でも中々に気合入った部類だろお前」
『ウチなんて序の口。肌焼いてる子とか見た事ないっしょ?』
「え、アレって実在すんの?」
『モチ』
マジか。黒ギャルはバブル崩壊と共に絶滅したもんだと。
『だからいま、楽しいよ。ウチに遠慮なくツッコミ入れてくれるし、対等って感じ!』
「……そりゃどうも」
くそ、真っ向から言いやがって。正直、俺は負けっぱなしだ。強さも桁違いだから、チーム組んでも足引っ張ってる感じがして、つらくなる時もある。
なのに。こんなこと言われたら、嬉しくなるじゃんか。
『オタクに優しいギャルが実在して嬉しいんでしょ~? ウチに感謝しろし』
「ゲーマーではあるけど優しかねぇ!」
『ざぁーこざぁーこ!』
「はぁぁぁぁぁ!? わからせてやろうかこの野郎!」
『うしし、そういうのはウチに勝ってから言いな!』
「やってやろうじゃねぇかッ!!!」
翌日、日曜の昼間からこのギャルにありったけのスイーツを奢ることになったのは言うまでもない。
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