第2話
「これは、引退した先輩改造外科医から聞いた。話しなんだが」
と、断りを入れてから。改造外科医の男は喋りはじめる。
「なんでも、昔はストイックな陶芸家みたいに芸術家肌の改造外科医もいたらしいぞ」
「芸術家肌の改造外科医って、どんな風に?」
「完成した怪人をしばらく眺めてから『違う! これは、わたしが求めていた怪人と違う!』と、言って。助手たちが止める手を振り払って溶解液の中に怪人を突き落として、処分するコトもたびたびあったらしい」
「それ、スゴいな。オレも、前に勤めていた組織の同僚から面白い話しを聞いたコトがある」
「どんな話し?」
「改造室で、総統からの無茶ぶりな改造要望にキレた改造外科医が。どうせ壁飾りだけの総統には見えていないだろうと思って、総統からの指示が出ている壁飾りに向かって『あっかんべー』や『お尻ペンペン』をしたら、怒った総統が薄い壁を突き破って、大激怒した中年親父姿で出てきたそうだ──『総統に対してその態度はなんだ!』って叫んで」
「いきなり、総統の正体がどこぞの親父だと判明してしまったな」
二人の改造外科医が雑談をしていると、バーのドアを開けて一人の私服姿の女性が入ってきた。
「どもっ、今日の改造お疲れさまでした」
下着姿で円形改造台に拘束されていた、戦闘員の女性だった。
改造外科医の一人が、戦闘員の女性に訊ねる。
「どんな気分だ、肉体を強化改造された気分は?」
「う~ん、まだ実感ないですね。隣の席に座ってもいいですか?」
「どうぞ」
戦闘員の女性が、改造外科医の隣に座る。
この三人はなぜか、相性が良くていつも一緒にいる。
改造外科医が、戦闘員女性に質問を続ける。
「全身麻酔で、ぐっすり眠れたか? おまえが改造される雰囲気を味わいたいと言うから、意味もない全身麻酔やってみたが」
「そりゃもう、バッチリ熟睡できました……あっ、コレさっき」
女性は、持っていたドアの取っ手をカウンターの上に置く。
「バーのドアを開けた時に、力の加減がわからなくて……引っ張ったら取れてしまいました……てへっ」
カウンターの中にいるバーテンダーがギロッと睨む。慌ててバーテンダーに謝る改造外科医。
「すみません、取っ手は弁証しますから……すみません」
戦闘員女性が注文して出てきた、ウーロンハイを飲みながら言った。
「今風の言い方は術式でしたっけ──改造する時、あたしの下着汚れていませんでした? 術式前にシャワー浴びて新しい下着に替えたんですけれど。
改造台に大の字の格好で手足固定された時に、興奮しちゃって」
「大丈夫だ、汚れてはなかった」
「よかった、それにしても今の強化改造って一時間以内で終わっちゃうんですね──お腹開いて、何時間もかかるかと思っていました」
「体を切開して人工臓器を埋め込んでいくのは、大昔のやり方だからな。長時間の改造術式は肉体への負担も大きくて、志望するリスクも高い。今はバイオナノマシンの注入するだけで終わりだ………後は勝手に肉体の強化改造が進行する」
「あたしの体の中では、今も改造が進んでいるんですね……どんな強化改造が行われているんですか?」
「骨格強化で部分的にナノマシンが骨の表面に金属コーティングをしている、あとは、人工生体筋肉を形成して本来の筋肉に融合させているはずだ」
「それだけですか? 怪人解剖図解に載りたかったのに、それだと図解にしたら地味ですね」
ウーロンハイを飲み干して、皿に残っていたピーナツを食べながら、戦闘員女性の素朴な疑問が続く。
「前々から気になっていたんですけれど……再生怪人軍団って、なんであんなに弱いんですか? ヒーローも一度戦って慣れているのはわかりますが。それにしても、弱すぎます。合体怪人化すると少しだけ強くなりますけれど……それにしても弱い」
「おまえ、再生怪人が最初の怪人と同一人物だと思っていないか」
「違うんですか?」
「最初に登場する改造怪人は、素体の中でも一番優秀な人間を改造して作り出すんだぞ………再生怪人は、二番目に優秀な人間を残っている設計図を元に作るんだから前より弱いのは当たり前だ」
「知らなかったです」
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