第3話 自覚。
ポメの質問にオレは言葉に詰まった。
「魔王の定義ってわかるか?」
黙っているオレにポメは質問する。
「……わかりません」
オレは正直に答えた。
「世界を自分の勝手にする者だ。まんま、今のお前だろう?」
ポメは責める。
「そうですね」
オレは認めた。
「でも、オレはユウキの命を助けたことを後悔していない。それが悪いことだとわかっていも、たぶん、同じ事が起きれば何度でも同じ事をするだろう」
正直に話す。
ここで、二度としないと誓うのは簡単だ。ポメはそんな誓約を求めて、ここに現われたのかもしれない。だが、それがウソなのは誰よりオレ自身がわかっている。
姉ちゃんやユウキのためなら、オレは何でもする。禁じられても、今日をやり直す。
「だから……」
言葉を続けた。
「二度とやり直しをさせたくないなら、この力を奪ってくれていい」
はっきりと言う。
自分が力を使うことをオレは知っていた。だが、それが悪いことであるという自覚もある。
魔王と呼ばれても、仕方ない。
いつか、勇者に倒されるかもしれないことは覚悟した。
だが、一番いいのは今日をやり直すこの力がなくなることだろう。
オレも魔王と呼ばれたいわけではない。
勇者に討伐されたくもない。
普通に田舎の少年として生きられればそれで満足だ。
この力はオレには過ぎたものであるだろう。
「世界と繋がるというのはそんな簡単にどうこうできるものではない」
ポメは盛大にため息をついた。心底呆れた顔でオレを見る。
「その力が奪えるなら、とっくに奪っている。12歳の子供に、預けておけるような力ではないだろう?」
問われた。
「確かに」
オレは頷く。
「じゃあ、どうすればいいの?」
聞いた。
「とりあえず、死ぬような目に合うことを避けろ。ケイタのそれは人の死がトリガーになっていて、それ以外ではおそらく発動しない。危ない目に遭っても、諦めずに抗え。死んでもやり直せるなんて、考えるなよ。この力は不安定で、ある日突然、繋がりが断たれることだってある。世界に見限られたら、終わりだ」
ポメの言葉に、オレは考え込む。
「繋がりが断たれたっていうのはオレにわかるものなの?」
知らないうちに力がなくなっていたら怖いなって思った。
「おそらく、わからないな」
ポメは答える。
「えっ……。困る。力がなくなるのは仕方ないけど、あるかないかわからないのは、不安だ」
オレは自分の手を握ったり開いたりした。何かと繋がっている感覚はまったくない。
「せいぜい、品行方正に生きろ」
ポメは冷たく言った。優しくしてくれるつもりはまったくないらしい。
「見限るってそういう種類の話?」
オレは確認する。人として正しく生きればいいようだが、それはそれでなんだか気が重い。
「いや、わからない」
ポメは首を横に振った。
「……」
オレは冷たい目をポメに向ける。
「何だ?」
ポメは首を傾げた。
「ポメは何も知らないんだな」
オレの言葉に、ポメはムっとする。
「普通の人間は何度もこの力は使えないから、そういう説明はいらないんだよっ」
言い返してきた。
「ん?」
オレは引っかかる。
知らなければ良かったことが聞こえた気がした。
「普通は一度きりなのか?」
ポメに質問する。
「普通の人間はそんな力、一度だって使えない」
ポメは答えた。
「それを何度も使えているオレは……」
引きつった顔でポメを見た。
「だから、ケイタは魔王だって言っているんだ」
ふんっとポメは吐き捨てる。
やっと意味が通じたのか?と目が訴えかけていた。
自分が異質であることを初めて、オレは自覚した。
「……今後、気をつけます」
約束する。
このままでは、世界を変える者として勇者あたりに討伐されかねない。危機感を抱いた。
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