第2話 魔王?!
やり直した一日が終わり、オレはベッドに入った。力を使ったからかなんなのか、どっと疲れを感じる。
横になったら、そのまま寝落ちした。
てしっ。
てしっ。
何かに叩かれて、目が覚める。頬をぷにぷにとしたもので押されていた。
「うーん」
唸りながら、オレは無意識に手で払う。
そのことに、むっとした声が響いた。
「起きんかいっ」
急な関西弁に驚く。
ばっちり目が覚めた。
「ハッハッハッ」
犬の息づかいが聞こえる。
オレの顔を前足で踏みつけたポメが視界いっぱいに飛び込んできた。
「!?」
オレは驚く。状況が理解できなくて、目を丸くした。
「何でここに?」
当然の質問をする。
ポメはユウキのペットだ。家にするはずがない。
「ふっ」
ポメは勝ち誇ったように息を吐いた。
「3年も経てば、わいもそれくらいのスキル、身につけられるんや。ユウキん家からここまで移動するくらい、屁のかっぱや」
やたら自慢げに言う。
何故か関西弁でしゃべっていた。それも全く板についていない。えせっぽい関西弁だ。
「なんで関西弁?」
どうしても気になって、問いかける。そっちが気になって、何を話しても話の内容が入ってきそうにない。最初に疑問を片付けることにした。
「気にすんな。ただのキャラづけや」
ポメはふんぞり返った。前足を突っ張り、背を反らす。おそらく、胸を張っているのだろうが、ストレッチしているようにしか見えなかった。
「ただの可愛いポメラニアンでは、キャラが薄いやろ? ここは一つ、可愛いポメラニアンがこてこての関西弁を話すというギャップを……」
説明をオレは途中で遮る。
「キャラが濃くなったというより、ただおっさんくさくなっただけな気がする。ポメの可愛さが半減しているよ。それにそのえせ関西弁、関西在住の人からはすごく嫌われると思うけど、それでいいの?」
オレは真顔で突っ込んだ。
「おっさんくさい……」
ポメはショックを受ける。
ガーンと効果音が付きそうな顔をして、固まっていた。
「普通にしゃべったら?」
オレは提案する。
「……そうだな」
ポメはしゅんとした。
その姿を見ると、罪悪感が芽生える。言い過ぎたかもしけないと、反省した。
「ごめん。おっさんは言い過ぎた。でも、ポメはただの可愛いポメラニアンでいいと思う。十分、可愛いから」
オレはすこしポメを持ち上げる。15歳になり、大人な気遣いが出来るようになった。
「可愛いなら、それでいいか」
ポメは納得する。
その基準がどこにあるのか、いまいちオレにはわからない。
ポメはまん丸な瞳でじっとオレを見つめた。
「何をしに来たのか、わかっているか?」
静かな声で問う。
それは妙に冷たく感じて、背筋がぞくっとした。怖い。
(関西弁、止めさせなければ良かった)
そんな後悔をした。関西弁だったら、もう少しやわらかい感じに聞こえたかもしれない。
「怒っているの?」
ポメに問いかけた。
「当たり前だろ」
ポメはやれやれとため息をつく。
「勝手に時間を戻してやり直していいと、思っているのか? 世界と繋がっているといっても、世界はお前の勝手にしていいものではない。世界を好き勝手にする今のお前はまるで魔王だ」
ずばっと言われた。
強い口調で責められる。
「魔王は言い過ぎじゃ……」
控えめに、オレは反論した。
勝手なことをした自覚は確かにある。だが。今回は特別だ。そう何度もやり直すつもりなんてない。
「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」
ポメは逆に聞いた。
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