第3話 再会
金曜日 学校終わり
高田市駅前駐輪場に自転車を止める。
「今日はどんな子が来るんだろなー?」
こいつは彼女が居るくせに何を言ってるんだ‥そんな事を思いながら
ちょっと歩くと
「おっ!猫ちゃん!」
駐輪場出入口の物陰に1匹の猫を発見。思わず声を出してしまった。
俺は猫好きで一度家で飼おうとしたこともあった。
近寄り猫の頭を撫でてやる。
「ほんと
俺の隣に
少し撫でていると猫は小さく『にゃー』と鳴きトコトコと歩いていってしまった。
「あ‥行っちゃった」
猫の背中を見届けた後、2人して立ち上がり集合場所に向かってまた歩き始めた。
駅前にあるロータリーの真ん中にある小さな公園が見えてくる。ここが集合場所。
公園が近づくと段々と心音が大きくなる。
「緊張してきた」
「はい、深呼吸深呼吸」
言われた様に深呼吸をしていると
公園に入り自販機横のいつものベンチを見ると女の子が二人座っていた。
左に座っているのが
女子校のブレザーを着ていて、ほんのり茶髪のロングヘアーにスラッとした体型で直ぐに分かった。
右に座ってる子が初めて会う子だが、楽しそうに喋っているので顔はよく見えない。
「おーい」
ちょっと離れた所から手を振りながら
二人の前に着くと
「紹介するね。私と同じ高校の‥
後に続くようにもう一人が話し出す。
「
と一礼。
ちょっと硬い感じのする挨拶。
「俺は草鳥夏千。
流れ的に俺の番。緊張するな。
「どうも、
視界の中の
「いっちゃん名前言わないと!」
直ぐに
やってしまった‥
「あ、
右手人差し指で
緊張しているのもあるがいつも以上に心臓がドキドキしている。何でだろう‥変な感じがする。
「一、葵、君?」
「はい」
なんとなく返事をする。
「先日はありがとうございます。本屋さんでのことなんですが覚えてませんか?」
本屋さん‥?
ちょっと考えている間、横で
「えーっと、表紙が黒色の漫画‥」
「あっ!」
思い出した!
【白と黒】を譲った時に男の子と一緒に居た女の人。
男の子の顔は覚えていたが、あの時は恥ずかしくて
なので気付くのが遅れた。
「あー思い出してくれました?」
嬉しそうにする
「あの時、男の子と一緒に居た人」
「そうそう、あの時はありがとうございます。すっごく
テンション高めで話す
良かった。
あの時は恥ずかしさに負けて、そそくさと帰ったから気不味さに襲われたが雪華は気にしていない感じだ。
「どこも売り切れで諦めかけてたので余計嬉しかったんですよ」
そう、後で調べて知ったのだが『白と黒』は口コミで話題となり人気が出ていたみたいだが、今回の発売時に発行部数はいつもと変わらなかった為品薄状態になっているのだ。
そうとも知らず発売日だけしか気にしていなかった俺。
朝のんびりした事を後悔している。
「でも、大丈夫でした?
「ばっちり買えたよ」
満面の笑みを見せる。
小さなプライドだ。
「あの‥お二人さん」
「私達を忘れないで」
オーバーアクションで
「ごめーん
「ごめーん
真似して
「じゃー行きますか」
元気よく号令を掛ける
しかし、何するか俺は聞いていない。
「何処に?」
「決まってるじゃん、カラオケだよ。カ、ラ、オ、ケ」
いやいやいつ決まったんだよと思った時。
「賛成ー」
今決まったのね‥でも
「俺、音痴なんだよ大丈夫?」
しかし、
場を白けさせるかもしれない。
「音痴なんて気にするなって。ストレス発散なんだから楽しければオッケー」
「そうだよー気にしないの。ねー」
「私も気にしないよ」
「と言う事で、行きましょう」
それに従うように
もうNOを言える状態じゃないな。
渋々諦めて
前方を歩く
ちょっと離れて俺と
すると、
「どうした?今日全然緊張してないじゃん」
確かに。
初めはいつも以上に緊張してた筈なのに今はそんなに緊張してない。
「んーなんでだろ。今んとこ話しやすそうな感じはする」
「良いじゃん、良いじゃん」
嬉しそうに笑顔で頷く
いつの間にか前を歩いていた二人とは距離が空いていた。
「なーに二人でコソコソ話してのー?早く行こうよ」
「分かってるよ。今行く」
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