ペア
毎年、この時期が一番憂鬱だ。運動は苦手だし...暑いのも得意ではないし。
「そういえばさぁ、もう出る種目決めた?」
二人で道具を運びながら、体育祭のことを話していた。
「ううん、まだ。」
私がそう言うと、青木くんは『じゃあ、一緒の種目に出ようよ。』と誘ってくれた。
「本当?青木くん、何の種目に出るの??」
「俺はね〜、あの小さいシーソー使うや、つ。」
「うん......考えとくね。」
「ん?うん。」
私はすぐに答えが出せなくて、『考えとく』なんて冷たく返してしまった。
『同じ種目に出よう。』と誘ってくれた事が嫌だった訳ではない。むしろ嬉しかった。嬉しすぎるくらいに。
でも、同じ種目に出たとして.....同じ組で一緒に競技できるのか?なんて欲張りな考えが頭に浮かんでしまって、それがとてつもなく嫌だった。青木くんにはずっと話せずにいたけれど....私は、仲のいい友達にはかなりヤキモチをやくタイプの人間だった。
ということを、自分も今のいままですっかり忘れてしまっていた。
「こんなの、思い出したくもなかったよ.....。」
私は道具を運びながら、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声でそう呟いた。
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