第6話 ネッシーは超レアキャラ

 金藤こんどうが校舎外ホームランを連発するため、ボールがすぐに無くなってしまう。レフトに花咲はなさきを置いたが、ジャガーのフェンス登りでも間に合わない。



「一法、レフトを守れ」


「はっ、はいぃ……」



 一法いちぼう櫛樹くしき小野沢おのざわ監督に対して、消え入りそうな声で答える。レフトへ小走りで向かう。何で小柄のひ弱な体つきの彼を守らせたのか、皆は疑問符を脳内に浮かべていた。



「ウツ! ウツ! オラァ!」



 金藤こんどうがレフト高々と上がるホームランを打つ。それを見た一法いちぼうは全身を震わせて肥大化する。サイに似た灰色の硬質な肌があらわになり、首がキリン以上に長くなる。



「えいっ!」



 恐竜のような巨体のモンスターと化した一法は、頭をふるって金藤こんどうの打球をグラウンドに落とした。



「おおお。一法いちぼうがレフト守ればホームラン0だぁ!」


「ネッシーかよ、すっげー!」


「カッコいいなぁ」



 部員達が口々に褒めたたえると、一法いちぼうは恥ずかしそうに首を縮めて、元の姿に戻ってしまった。



「僕は、そんな、大した、ありません」



 一法いちぼうは体育座りをして、グラウンドの隅っこに固まってしまう。



「彼は皆の注目を浴びるのが苦手なんだよ。そっとしてやれ」



 監督は眉間にしわを寄せて一法いちぼうを見ていた。このシャイな性格が改善されないかぎり、実戦では使えない。



(続く)

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