第4話 パワーヒッターのフランケンシュタイン

 豪速球オオカミ投手と吸血鬼キャッチャーの黄金バッテリー成立に湧く希望きぼう学園の選手達。しかし、ただ1人、それを快く思わない者がいた。



「オデガウツ」



 ずっと体育座りをしていた新入生が、のっそりと立ち上がる。彼は2m超の長身で、前進に手術痕が残る。茶や白、褐色の肌がモザイク状に混じり、多国籍感を出していた。



金藤こんどう、いくらお前が握力300の怪力でも、あのボールは打てんぞ」



 小野沢おのざわ監督が金藤こんどう正太しょうたの腰に手を当てる。その体は鋼のように硬く、かつて銃弾をはじいたことがある。



「ウツ、ウツ! オデニウテナイタマナイ!」



 彼は打席に入り、マウンドの鉄平てっぺいオオカミをにらんだ。鉄平てっぺいは歯茎をむきだして、低くうなり続ける。



「うーん。パワー馬鹿同士のバトルかー」



 キャッチャーの浦間うらま外角低めアウトローのストレートを要求する。鉄平てっぺいはオンと鳴いて、そこへ豪速球を投げた。



「フンヌ―!」



 金藤こんどうのバットの先端にボールが当たる。



 グワギャーン!!



 猛烈な打球音を残して、ボールは鉄平てっぺいの頭をかすめていく。打球はグングン伸びて、外野のネットを越え、校舎を越えて、消えた。



「バ、バットの先っぽやのに……」


「なっ、何というパワーだ……」



 鉄平てっぺいオオカミは全身を震わせて、おしっこをちびっていた。徐々に毛が短くなって、人に戻っていく。彼は消え入りそうな声でつぶやく。



「し、し、死ぬかと思った……」



 金藤こんどうは鼻息荒く、鉄平てっぺいにこう言う。



「コノテードデシヌカ、バーカ」



(続く)

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