第8話
『びっくりだねー。あ、大観山のほういって』
「大観山だそうだ」
「またあの運転する?」
「やだよ。なんだったら追いかけてきてた白鷺家の車何台か奈落行っただろ…」
「助けるのは時間かかるだろうねぇ。けど、素人が考えもなしにプロについてこれるわけないじゃぁん?」
凛は元々アメリカのストリートレーサーだ
警察に追われても、公式イベントでも走り抜けた伝説を持つ
日本に戻ってきても首都高レースや箱根峠レースで名を馳せた意外にすごい人なのだ
「まぁいいや、白鷺に従うやつは同罪だ。唯利、大丈夫か?」
「な、なんとか…。今は、車酔いが酷いかも…」
「桜華凛、酔い止め」
「どこだったかなぁ…。多分リアシートの下のケース」
「あった。水は…ある。飲めるか?」
「飲ませて…」
「甘えんな」
そう言いつつ夜斗は、膝に乗せた唯利を起こした
そして薬を飲ませようとしたが、どうやら水を飲み込めるほど回復していないらしい
それどころかペットボトルを持つことさえ厳しいようだ
「…仕方ない」
夜斗はその水を口に含み、唯利の口に薬を入れたあと口移しで水を飲ませた
「きゃー。夜斗ったらだ・い・た・ん♡」
「仕方ないだろ、飲めないって言うんだから」
「ストローあるよ?」
「早く言えよ!」
「ん…ありがと、夜斗…少し、楽になった気がする…」
「少し寝てろ。精神的負荷がかかりすぎてる」
「そうする。おやすみ」
「おやすみ」
十分程度経ったころ、夜斗は凛が買ってきたココアを飲んでいた
凛は周囲にいる気配に、夜斗は異様な音に気づいていながらあえて気づいていないかのように振る舞う
「…降りろ」
「え?なになに?何かの撮影?」
「降りろといっている!」
「えー、強引な男は嫌われちゃうゾ☆」
(なんだろう、桜華凛の語尾に記号が見える気がする…)
夜斗は降りない
凛だけがおり、一言二言話をしてどこかに電話をかけていた
数分後、到着したのはハイパーカーが5台ほど
それらは降りろと脅してきた男とその車を取り囲むように停車した
「…さて、みんな!この人たちをもてなしてあげて!」
凛の号令で、ハイパーカーの運転手の一人が、男を一人車に乗せた
次々と乗せられていく男たち。どうやらハイパーカーの運転手は凛の知り合いらしい
「…アウトローか」
「昔のね。今は更生して普通の親だよ」
「家族いんのかあの人ら」
残された大型バンは、警察印のレッカーに繋がれてどこかへと持ち去られていった
「あれも…」
「おそらく白鷺だ。根本的に、奴の親の会社を潰す必要がある」
「それについては任せて。夜美と一緒に対応してるから」
「どれくらいかかる」
「早くて5年。遅いともっとかかるけど」
「…すまん。お前らの人生を犠牲にさせて…」
「あっはは、本家の人が何言ってるのさ。冬風は本家第一なんだから、もっと気丈にいなよ。これは、分家当主としてのアドバイス」
ウインク混じりにいう凛
2人はコンビニの入り口付近でそんな話をしていた
ちゃんと車が見える位置で、唯利が襲われないように監視している
「…だが…」
「皆まで言わなーい。そんなんだから影月に説教されるんだよ?」
「あいつ説教マジで長いんだよな…。ありがとな、凛お姉ちゃん」
「……え?ね、ねぇ…もう一回言って…?」
「さっさと帰るぞ。次の対策を考えなきゃいけない」
「ねぇぇぇえ!!!」
凛の慟哭は、車の中で話を聞いていた唯利にも届いた
そこまで大事になってるとは知らずに、夜斗に頼り切っていたことを、心の奥底で謝ったのだった
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