第4話

予定されたデート(?)は明日日曜日。夜斗は家に来た2人を家に送り届け、緋月家に来ていた

午後の予定というのはこれなのだ



「よう」


「おっす。紹介します、俺の中学時代の同級生兼System0管理者の冬風夜斗です」


「「「「おおー」」」」



呼び出したのは厳密には霊斗ではなく、霊斗の学校の生徒会役員だ

System0というのは学校内施設監視装置のことで、これは有線ネットで全国の小中高校が繋がっている

大元のサーバーの管理をしているのが夜斗だ



「冬風夜斗です。えーと…お呼び出しの理由はなんでしたっけね」


「1つは、文化祭の話だよ。合同文化祭」


「霊斗お前説得ミスったな?」


「おう、ミスった」


「自信満々に言うなよ…。というか、システム的に無理です。System0は各校生徒を適正判定するので、警備ロボットを止めなきゃならない。そんなときにテロが起きたら、生徒会で鎮圧するんですよ?」


「うっ…そ、そこをなんとか…」


「広域化で一時的に他校生徒を認証することはできますが、一人一人やらなきゃならないので嫌です。まぁ学校を使わずにやるのなら可能ですが」


「うー…。霊斗君からもなんとか言ってよ」


「こうなったら聞かないんすよこいつ。夜斗、ゲストモードなかったっけ?」


「ああ…あるけど、あれはあれで手間だぞ?データデバイスを校門前の機械にオーソライズさせなきゃいけない」



こうして話し合いが続き、2時間ほどで結論が出た

合同文化祭は実行される。しかしSystem0を動かすために、夜斗が一人一人認証するという手段になったのだ



そして帰宅した夜斗は、部屋に戻った

携帯電話を布団に投げ、ゆっくり深呼吸する

そして数分後、流行りの曲が形態から鳴り始め着信を知らせてきた



「相手は…弥生?ってことはネットの関係か」



携帯電話を拾い上げ、着信に応答する

やや元気な女の声がスピーカーから飛び出した



『やっほー睦月!元気してる?』


「おう。弥生も元気そうだな」



この少女、同じ県に住むということくらいしか情報がなく、夜斗の情報ネットワークを駆使しても調べることはできなかった

といってもその情報ネットワークは夜斗のものではなく、クラスメイトのものなのだが…



「どうした?」


『うーん…声が聞きたくなって?』


「疑問形かよ…。本当は?」


『ちょっち愚痴を聞いてほしくてさ』


「了解…。風呂後にかけ直すから待っとけ」


『ほーい』



そう言いながらも、夜斗が覚えていることは稀だ

そのため夜斗は、携帯電話のタスク管理アプリに電話をかけるという記述をして風呂に向かった



「朱歌、紗奈。風呂入った?」


「入ったわ。あとはお兄ちゃんと夜美姉だけよ」


「私もお先にいただきました。たまには妹と入るのもいいですね」


「夜美姉先入る?」


「いいよー、先入って」


「了解」



夜斗は服を持って浴室に向かった

持っていかないとどこかの姉が押しかけてくるからだ



「ふぅ……。こういう日常が最もいい」


「どんな日常?」


「そうだなぁ…。色んな人で話をしたり、生徒会業務を行ったり…ってなんで外で待機してんだ夜美姉」


「効率的な問題かな。こうしないと夜斗は自分のこと話さないし」


「そらそうだが…」


「彼女できた?」


「好きな人すらいないよ。残念ながらな」


「それはよかった。私が社長なのは知っての通りだけど、今度取引先が夜斗と娘を見合いさせろって言ってきててね。見合いの結果付き合うかどうかは本人に任せるけど、見合い自体しないなら契約解除って言われてる」


「…は?」



夜美は浴室ドアを開けて中に入り、なんのためらいもなく髪と体を洗い始めた

夜斗は全力で目をそらすために天井を見上げる



「でも、私としては私の都合で夜斗の人生を決めたくない。だから、夜斗が選んで。見合いするかしないか。会社のためとかじゃなくて、夜斗自身のために」


「…取引がなくなると、紗奈や朱歌の学費はどうなる」


「払えないことはないよ。私の給料が年間150万くらい下がるから、あんまり外食できませんみたいになるだけで」


「……なら、俺は行く。紗奈と朱歌のためにもなるし、何より夜美姉の評価が下がるのは気に入らない」



そう言う夜斗を見開いた目で見る夜美



「自分のために、って言ったでしょ」


「姉と妹の幸せが俺の幸せだ。なら、優先すべきは姉と妹だよ」


「なるほど、ね。ほんと、弟にしとくのがもったいないよ」


「どういうことやねん」



夜美は無理やり夜斗の上から浴槽に入り、夜斗に寄りかかった

夜斗は夜美の腹部に手を回し、後ろから抱きしめるような形だ

夜美が強引に一緒に風呂、というときにはだいたい夜美が限界に近いとき。であれば、癒やすのは自分の役目だと信じてやまない夜斗だった

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