第3話

夜斗はSNSにて投稿をしていた



【妹の友人が来る。さて、目的は何だろうか】



いくつかリプライが来る中に、最も多かったものがある

それは…



【睦月さんを狙ってるんじゃないですか?】



というものだ

睦月というのが夜斗のアカウント名である



(さて、そんなはずはないが。むしろ妹さんをください!とかじゃね?……アサルトライフルどこやったっけ?)



夜斗は待つ間、電動ガンのアサルトライフルを用意した

完全分解清掃オーバーホールを始め、予定の時間まで暇つぶしをするつもりなのだ



「お兄様」


「どした」


「きました」


「まじか。オーバーホール始めちゃった…」


「とりあえず中に入れますか?」


「おう」



このとき夜斗は致命的なミスを犯した

そう、紗奈のこの発言。これは家の中に入れるか、という意味だと思ったのだ

しかし実際は、部屋に入れるかという問いかけ。紗奈の同級生は、夜斗の部屋に入った



「…え?」


「あ…こ、こんにちは」


「…まぁ座ってくれ。これは実銃じゃないぞ」


「すごいですね…こんなに分解できるなんて…」


「まぁ、これしか得意なことないしな。あとパソコン組むくらい。高速で戻すからちょい待って」



夜斗は潤滑油を塗ったりグリスをつけたりを繰り返し、もとの形に戻した

予想に反して紗奈の同級生は女子生徒だったのだ



「よし終わり。手を洗ってくるから楽にしてて」


「わかりました」



夜斗は洗面所にいき、手を洗った

そして紗奈の部屋で紗奈を2分ほどくすぐってから部屋に戻る



「お待たせ。何もない部屋だが少しゆっくりするといい」


「ありがとうございます。あ、私椎名しいな琴音ことねって言います。高2です」


「同い年なのは知ってる。紗奈と俺は双子なんだよ」


「そ、そうなんですか」


「だからタメでいい」


「わ、わかった…。よろしくね、お兄さん」


「呼び名ぁ!」



夜斗の叫びも虚しく、呼び名はお兄さんで確定してしまった

そして話を聞いていると、どうやら紗奈がやけに持ち上げて話しているらしい



「紗奈…」


「お呼びですかお兄様」


「聞いてたんかい。どした」


「唯利さんきましたけどどうします?」


「入れていいぞ。部屋に」


「わかりました」



夜斗には午後の予定がある

そのため用件は可能な限りまとめたい



「こんにちは、夜斗。ってお客さん?」


「椎名です。椎名琴音」


「よろしくね、椎名ちゃん。夜斗、少し話がしたいの」


「電話かけてこいや」


「できれば人が多いほうが良くて…。紗奈ちゃんも呼んで」


「わーったよ…。紗奈!朱歌!」



夜斗は妹2人を呼びつけた

そして唯利の話に4人が耳を傾ける



「不審者いたの。おそらく最近話題の露出狂。コートを開こうとしたから全速力で逃げたから助かったけど」


「場所は?」


「高島町の裏路地。ヨーケドーがあるあたり」


「総合庁舎付近か。朱歌、紗奈。詳しく聞くのは任せる。俺は冥賀めいがに報告をする」


「はい」「わかったわ」



冥賀というのが担任教師の名前だ

時として鬼教師だが、普段は生徒の心に寄り添う良き先生なのだ



「俺だ」


『お疲れ様です、夜斗。この番号にかけてきたということは仕事ですか』


「不審者情報。先程当校生徒、桜嶺唯利より目撃情報あり。場所は静岡県東部総合庁舎付近。詳細確認中だが緊急のため第一報」


『またですか。了解です、処理しておきます』



電話を切り、紗奈が話をまとめた紙を手渡してくる

それをスキャンし、冥賀にメールで送信する夜斗

実は冥賀は夜斗の従兄だ。それを隠して学校に行っている



「お兄さん」


「なんだ、椎名」


「お願いがあるんです」


「おう」


「デート、しません?」



その場の全員が硬直する

そして唯利が膝から崩れ落ち、朱歌は口をパクパクしている

紗奈は硬直が解けていない



「デート?日付?」


「直訳しないで…?そうじゃなくて、男女で遊びに行く」


「えー…つまりどういうことだ朱歌」


「えっと、うーん…。好きなのかしら」


「あながち間違いじゃない、かな」


「あながち間違いではないのか」



夜斗は少し思案したあと、少し考えると言って廊下に出た

唯利が琴音を問い詰めるのが聞こえる中、夜斗は電話をかけた



「ハロー霊斗」


『誰だお前は』


「死神です」


『本人みたいだな。どうした?』



今のやり取りは合言葉だ

一連の流れで互いが本当に本人かを確認する



「紗奈の同級生にデート行こうって言われたんだけど、椎名琴音って知ってる?」


『知ってるも何も、同じクラスだよ。つか紗奈さんと同じクラスなんだから当たり前のように同じクラスだよ』


「情報がほしい」


『あー…うーん…。天音、椎名さんの情報ある?』


『琴音ちゃん?簡単に言うとメンヘラちゃんかな。自傷跡があるとかで常に長袖だし、ホットパンツとかも履かないタイプの子。彼氏に捨てられやすいって感じかな』


『夜斗がほっとけないタイプだな』


「やめろや。他は?」


『私たちよクラスにに白鷺っているでしょ?アレがストーカーしてるの。だから護衛的な人を探してたね。対抗できるのは夜斗くらい?』


「あながち間違いでもないな」


『琴音ちゃん結構話すんだよね。去年の文化祭で知り合ったのかな多分』


「別校なのにか」


『うん。もしかしたら夜斗のことを知るために近づいたのかも。すごい聞かれたんだよね』


「ふむ…。わかったありがとう。霊斗を好きにしていいぞ」


『えなんで俺』


『ありがとー』



夜斗は電話をきり、情報をまとめた

白鷺というクラスメイトのタイプは、メンヘラ

それも重度のメンヘラを好んで近づき、落とすのは簡単だと言い張っている



「戻った。別にいいぞ、やることないし。いつかによる」


「お兄さんの都合に合わせるよ」


「了解。唯利どうした?」


「……」


「唯利さん、言い負かされちゃったのよ。ほっといてあげて」


「お、おう…大変だな…」



他人事のように言い、夜斗は自分のベッドに唯利を寝かせた

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