第7話:再会と決意

「よう、久しぶり、ようやく会えたな」


 夫が何の衒いもなく屈託ない笑顔を浮かべて挨拶してきます。

 夫にも私を判断する能力が備わっていたのです。

 やっと、やっと再会出来ました。

 貴男なら必ず一廉の武将になっていると信じていました。

 だから劉備を脅してそれなりの武将は必ず家に招いてもらっていたのです。

 これで劉備と形だけの婚約をしたかいがあります。

 

「ずっと、ずっと、ずっと探していました」


 私の所為か夫の所為か、歴史が大きく変わっていました。

 曹操を見捨てるはずの陳宮が裏切らず、呂布と張邈しか蜂起しなかったのです。

 それにより激減した曹操軍でも呂布と張邈の連合軍でも互角に戦えました。

 郭嘉奉孝の献策で袁紹に援軍を頼んだのも大きかったのでしょう。

 激烈な消耗戦を繰り返しましたが、曹操は兗州を守り切りました。


 一方劉備は陶謙の推薦で豫州刺史となりました。

 ですが豫州は沛国譙県が曹操の出身地でもあり影響力も強いです。

 それでも劉備は持ち前の魅力で多くの人を味方につけました。

 徐々に力を蓄え傭兵のような立場からそれなりの軍閥になっていきます。

 史実ならここで陶謙に徐州を譲られるのですが、この世界は違います。


 私の策もあり、糜竺の名声がとても大きいのです。

 徐州内の軍閥として資金力も兵力も名声も飛び抜けた存在です。

 人格者として名声を得ている趙昱元達も慕ってくれています。

 徐州を代表する名家、陳家も全面的に支持してくれています。

 孫乾公祐も一廉の外交官として役に立ってくれそうです。

 だから陶謙は糜竺を後継者に指名しました。


 ただ今この状況で単独で袁紹、袁術、曹操と対峙する事は危険です。

 だから私は嬢子軍という軍事力を背景に劉備との形だけの結婚を決意しました。

 糜竺の徐州と劉備の豫州が同盟して、劉備の兄貴分である公孫瓚ともつながる。

 表向きは公孫瓚と共に袁術を盟主に仰いで後背の安全を確保する。

 そして袁紹を形だけ盟主に仰ぐ袁紹と曹操の連合軍と戦う。


 そう決意して作戦を練っている所に呂布が徐州に逃げてきたのです。

 残念ながら呂布は夫ではありませんでした。

 ですが終生呂布に忠義を尽くした高順が夫でした。

 夫らしい転生だと思います。


 さて、私はどうするべきでしょうか。

 この世界の兄である糜竺を皇帝にするべきでしょうか。

 前世で夢想していた劉備が中国を統一する世界にすべきでしょうか。

 それとも夫が転生した高順を皇帝にして、私が皇后になろうかな。

 でもその為には劉備と離婚しなければいけませんね。

 それに呂布は早々に始末すべきです。

 まあ、全部夫に相談した上ですが。

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転生・劉備玄徳夫人 克全 @dokatu

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