第2章

第3話:事前準備

「子仲兄さん、家の宦官を排除しましょう。

 宦官なんて犯罪者か祖先の供養する事を放棄して出世を願う糞野郎です。

 そんな宦官に奥を任せていると何をされるか分かりません。

 家の奥は女だけで運営しましょう」


 私は長兄の麋竺子仲を説得しました。

 麋竺の優秀さ聡明さは歴史が証明しています。

 劉備玄徳を支援した仁徳者で弓名手。

 劉備の恩人というのもありますが、諸葛亮孔明を超える文官の一位でした。

 弟の麋芳子方さえ裏切らなければ憤死する事もなかったでしょう。


 麋竺なら私の気持ちを分かってくれるはずです。

 麋家は小作人を一万人以上持つ資産家です。

 その利をかすめようとする宦官がいる事は私が直接確認しています。

 宦官よりも女を活用すべきです。

 女だけの嬢子軍を編成できれば、男達を全員外征に出せます。

 そして兵士の妻子を人質にすることができます。

 我ながら外道な考え方ですね。


「う~む、春華がそういうのなら試してみよう。

 春華の発案で始めた塩田で莫大な利が得られた。

 小作人達に馬や豚や山羊を貸し与える事でも大きな利が得られた。

 宦官を婢女や侍女に変えるくらいの事はなんでもない。

 だが糞野郎は止めなさい、麋家の令嬢には相応しくない言葉だよ」


 私は着々と麋家内での発言権を強めていきました。

 個人的な財産も増やしていきました。

 でもその全ては麋家という後ろ盾があってできる事です。

 そうでなければ力で奪われてしまいます。

 暴力や武力が全ての世情になってしまったのです。


 それに外では何の力もありません。

 女が余計な発言をする事は絶対に許されません。

 上手く立ち回ったとしても、能力を利用しようと無理矢理嫁にされてしまいます。

 下手に徐州刺史の陶謙に助言でもして有能な事を見抜かれてしまったら、無理矢理に嬪や世婦にされてしまいます。


 陶謙は仁者のように書かれる事もありますが、結構あくどい事もしています。

 略奪や虐殺も平気でやる男です。

 麋家といえどもその武力には逆らうことができません。

 少なくとも嬢子軍が整うまでは無理です。

 だから曹操との戦争になると分かっていても、闕宣と同盟も、泰山郡の費県や華県の略奪も、止められなかったのです。


 本当はそんな事よりも夫を探す事を優先したかった。

 でも麋家と言えども他家の奴隷を調べたりはできません。

 中小の軍閥が抱えている奴隷も同じです。

 陶謙に取り入っても、陶謙が徐州を完全に支配している訳ではないのです。


 三国志の時代は戦国乱世です。

 中小の軍閥は自分達が生き残る事が最優先です。

 曹操の方が陶謙よりも強いと思ったら平気で寝返ります。

 寝返りが受け入れられないと思ったら逃げ出します。

 逃げ出した先に弱い軍閥がいれば殺して領地や民を奪うのです。

 彼らが自分のモノだと思っている民を調べる事はできないのです。

 だからこそ劉備に天下を統一させて全ての民を調べられるようにするのです。

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