第2話:プロローグ
今も最後の瞬間をまざまざと思いだします。
何時ものように夫に頼んでフィールドワークに出た帰りでした。
それほど危険のない直線道路だったのに。
戦車のように丈夫な大型ダンプが、中央線を超えて突っ込んできました。
夫が常人離れした運動神経で避けようとしてくれましたが、駄目でした。
戦国武将のように雄々しい夫が私を庇おうとしてくれましたが、駄目でした。
でも、二人揃って天国に行けるのならそれでもいいと思っていました。
それが、こんな風に転生させられるなんて、思ってもいませんでした。
私は声を大にして神仏に言いたい。
あんな死に方をさせておいて転生させるな。
ちゃんと天国に迎え入れろ。
ただ、もしかしたら、私の願望をかなえてくれたのかもしれません。
戦国乱世や三国志の時代をこの目で見てみたいという、私の願望を。
しかしそれなら何故夫が側にいないのか。
来世ばかりか輪廻転生する度に添い遂げようと約束していたのに。
神仏ならそれくらい分かっているはずなのに。
離れ離れに転生させるなど悪質過ぎます。
神仏などと言うモノは身勝手極まりないモノです。
どうせ私達が必死で探し回るのを、面白おかしく見て愉しむつもりでしょう。
いいです、好きに楽しめばいいです。
神仏の考えなど知った事ではありません。
必ず夫を見つけ出して見せます。
問題は三国志の時代に女として生まれてきた事です。
女に生まれなければ夫と添い遂げられないので仕方がないのですが。
この時代に女が独身を貫いて生き抜くのはとても難しい。
幸いこの時代ではとても恵まれた金持ちの家に転生できました。
これも神仏が愉しむための仕掛けかもしれないと思うと腹立たしいですがね。
夫の事は全然心配していません。
神仏の配慮か、この世界に一緒に転生しているのが分かります。
今も生きている事だけははっきりと分かります。
そうでなければとっくの昔に夫を追いかけて自害しています。
それに夫は成人さえすれば誰にも負けません。
前世では古武術の宗家に生まれた夫です。
古武術の試合ばかりではなく、剣道や柔道や空手、ボクシングやキックボクシングの世界でも名を売った存在です。
古武術の宗家を継がなければいけないので、チャンピオンにはならないようにしていましたが、収入の道が限られる古武術宗家を維持できるくらい稼いでいました。
本気でやっていれば、歴史に名を残すチャンピオンになっていたと思っています。
呂布や張飛、項羽や英布にも勝てると私は思っている。
幸い糜家の娘に転生できました。
史実通りに進めば劉備玄徳の夫人になるでしょう。
劉備玄徳を脅かして白の結婚を誓わせます。
劉備玄徳の後宮を支配して、私に手出しできないようにすればいい。
幸い劉備玄徳には糟糠の妻、甘夫人がいます。
ここはその為の事前準備をすべきですね。
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