第23話 氷女と恐れられたもの

「くそ…このままじゃ嬢ちゃんを守る前に俺がくたばっちまう…」


アベルはエレナを庇いつつ、メディシーとカンパツを相手していたため、ジリ貧になっていた。


「#雷鳴轟音玉__らいめいごうえんきゅう__#」


「氷魔術、#氷柱弾__サーベルランス__#」


カンパツとメディシーの攻撃が同時にアベルの方へ飛んでくる。


「魔人炎武術!#爆炎拳__ばくえんけん__#」


アベルは炎の拳で氷柱を叩き割るが、カンパツの攻撃はスピードが早すぎて追いつけない。


ドカン

雷鳴轟音玉はアベルの横腹に命中。再び飛ばされる。


「グハッ…くそ…」



「アベルさん!私の事は構わずに敵を優先してください。」



そんな訳ないだろ…嬢ちゃんがやられちまったら俺は、兄貴に見せる顔が無い…。それに…


「こんなとこでやられちまったら…魔王なんて絶対倒せるわけが無い!」


そういうとアベルは起き上がりながらエレナに微笑みながら言う。


「俺は魔邸フォービスの一員だ…。これからこの名を轟かせるのに、初戦が負けなんて嫌だろ?」



「アベルさん…」



エレナはまさかアベルからそんな言葉が出るとは思わず動揺する。



「もう話は終わったかしら?」


そういうとメディシーはアベルの元へ近づく。



「私に惚れるのはいいけど、暇じゃないんだよね。」



「ああ…分かってるさ。この中で1番厄介なのはお前だから…」


「次の一撃で仕留めてやるよ!」



アベルのその一言でメディシーは顔が変わる。


「そう。ならばかかってきなさいな。私に触れることが出来たらだけ…ど」



メディシーがそう言おうとした瞬間アベルは一瞬にして姿を消し、気づけメディシーの背後を捉えていた。


「魔人炎武術…#被曝天元!__ひばくてんげん__#」



アベルの黄色い炎をまとった拳はメディシーの後頭部に触れる。



カチッカチッ



「あーあ。話を聞かずに触れるからですよ。」



なんとメディシーの体に触れた瞬間、アベルは全身が氷漬けになってしまった。


「私は気を許した人でしか触れることができない。もし触れた場合、私が氷を解くまでその氷は凍り続けるわ。」



「アベルさん!!」


エレナは氷漬けになったアベルに叫ぶが、一向に戻る気配がない。


エレナは自身の無慈悲さと弱さに絶望する。



私がもっと強かったら、こんなことには…



「私はね。ここらへんの国では知らないものがいないほど人気なのよ。」


「人気なのか…?」


カンパツは嫌味のように言う。


「私の2つ名は#氷女__ひょうじょう__#の姫、凍てつく力を宿している特殊な魔術士ですわ。あとは、貴方だけ…」



「どうすればいいの…イグゼルさん…」


エレナの横に、アベルのイグゼルから貰った剣が落ちていた。



すると、記憶の中でイグゼルの言葉を思い出す。


「剣はいずれ必要になる、そして…」


「自分や仲間を救ってくれる。」


エレナは剣を拾う。


「イグゼルさんのようには行かないけど…」


「アベルさんを助けるために私は戦う!」




一方、イグゼル達は、均衡状態だった。


カキンッカキンッ



「はぁはぁ…」


「ルーベット大丈夫か…」



イグゼル達はゼフィアと交戦を初めてから30分が経過していたが、ゼフィア達の連携は一向に泊まることは無かった。


「俺のことは構うな…はぁはぁ」


ルーベットはとてつもない戦闘スピードに疲弊していた。


「ゼフィア様!あの天然メガネが弱っています!あいつから行きましょう!」


ドリアンドがゼフィアに意見を出す。


「ああ…その予定だ…。ドリアンド、援護を頼む。」



そういうと再びドリアンドが魔術を使う。



「水拘束魔術!#水の牢屋__アクア・プリズン__#」


ルーベット足元から巨大な水色の魔法の文字が現れ、水の仕切りが現れた。


「なんだ!これは!」


ルーベットはその柵を蹴りつけるが、水に足を飲み込まれ、抜けなくなる。


「なに!?」


「今です!ゼフィア様!」



するとゼフィアは中に飛び柵の上から技を出す。



「#龍美__りゅうび__#」


ゼフィアが上からドラゴンを出し、柵ごと飲み込もうとする。


「しまっ…!」


「水剣術…#海鳴り__うみなり__#」


イグゼルの海鳴りで黒煙の龍の前に剣を上に切りつけると、水の壁ができ、防御する。



「そんな簡単に仲間はやらさせねぇよ…」


「ふんっ小賢しい。」



次回「精霊剣術士」

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