第18話 最後のあがき

エリゼクトの転生魔術のあと、イグゼルは攻撃を食らった。はずだった…


しかし東地区からの爆風により、イグゼルは飛ばされ間一髪で助かったのである。



「イグゼルさん!間に合いましたよ!」


「良くやったエレナ。」



運に救われたとはいっても、勝利を確信していたエリゼクトは、怒りと屈辱の気持ちでいっぱいだった。


なぜだ…なぜ、この魔王である俺がこんな雑魚に手間取っている…。そうだ…俺はどこかでこの男を殺さずに捕まえようとしていたのだろう。ならば…


手足の1つや2つぐらい何とか治せる…全力を出すか…


「おい、魔王!次は俺達…の…」



イグゼルがショックを受けているエリゼクトに対して煽りを入れようとすると、急に体感したことのないプレッシャーがイグゼル達、そして、ルーベットにも伝わる。



「おい…イグゼル達のところで何が起こっているんだ…。」


ルーベットが中央地区を見ながら心配すると、ビーナスは口を開いた。



「ふふっこの街は終わりだわ…。エリゼクト様を怒らせたようね…」



この場から逃げ出したい程のプレッシャーを出している魔王エリゼクトは空へ飛び片手を天に上げた。



「これが貴方達が見る最後の技になりそうですね。」


「魔力解放。」


そう言うと、これまでの攻撃は遊びだったかのように先程の魔力よりも数倍…いや数百倍に増大した。



おい…なんだよこの魔力量…この攻撃を使われたらこの街…いや、この周辺の街は確実に消し飛ぶぞ…。


イグゼル達はこれまでに無いくらい警戒した。



「魔王魔術…奥義!#魔王の咆哮__デーモン・グランデ__#」



そう言うとエリゼクトは全ての魔力を手のひらに集め、空へ飛ばした。


すると、空からは街がすっぽり埋まるほどの巨大な赤紫の玉が隕石のように落ちてくる。



「さぁ…絶望しろ!…?」



エリゼクト、その幹部達に命ずる。今すぐ魔王城に帰還せよ。これは命令だ。



エリゼクトとビーナスの脳内に謎の渋い男の声が聞こえた。



「…ちっ。今からが楽しみって言うのに…。イグゼル、生きていたら次は必ず私が捕まえますからね。」



___バスキュア王国・西地区___


この時、ルーベットとビーナスが交戦中だった。



「…くそ。今日のとこはここまでにしといてあげる!」


「は?まだ勝負は…」


ルーベットがそう言おうとしたが、ビーナスは空へ上がっていき、エリゼクトと合流し、謎の空間に消えていった。



「おい!待ち上がれ!」


ルーベットはその空間に何個か魔力の玉を投げつけた。




状況は最悪だ…。このままだと本当に全員死んでしまう。


「くそ…どうすれば…」


「イグゼルさん…。」


巨大な魔王の玉がみるみる近づいて来る。イグゼル達は為す術が無い。



「そこの旅人達!!」



すると、東地区からバスキュア王、ウルブスとその兵士達がこちらに走ってきた。



「説明は後だ!あの攻撃を相殺するぞ!」


そう言うとバスキャア王達は一斉に、岩魔術の攻撃を玉に向けて放ち始めた。



「エレナ!俺達も援護するぞ!」


「はい!」



そう言うとイグゼル達も技を玉に向けて放つ。しかし、玉は一向に壊れることはなく、もうあと1km先まで近づいていた。



くそ…!間に合わないか…



イグゼルは半分諦めた気持ちになりつつあった。そこに、戦いを終えたルーベットが駆けつける。



「おいイグゼル!なんだよこの状況は!」


「説明は後だ!あの玉に攻撃してくれ!」



そう言うとルーベットも攻撃を始めた。



攻撃を重ねるにつれて、その巨大な玉にヒビが入ってきた。


「今だ!放てー!」


ウルブスの掛け声で兵士達の強力な岩魔術が放たれ、玉に命中する。


しかし…



玉は壊れず、バスキュア王国の時計台が崩れる程の距離まで近づいていた。



「もう…だめなのか…」


ウルブス王も対策尽きたようで、項垂れる。



「炎剣術!#火龍天乱舞!__ひりゅうてんらんまい__#」


イグゼルは自ら玉の方へ飛び、縦断すると、炎の龍が追撃した。



ドカンッ!!



巨大な玉はイグゼルの攻撃で破壊され、バスキュア王国は崩壊せずに済み、ウルブス王達は驚きを隠せない様子であった。



「イグゼルさん!すごいです!」


エレナはすぐさまイグゼルの方へ行き、声を掛ける。しかし、イグゼルの反応が無かった。



「イグゼル…さん?」


パタンッ



イグゼルはその場で倒れ、エレナは慌ててルーベットを呼ぼうと振り向くと、ルーベットも倒れていた。


「どうして…み…ん…な」


エレナはそう言おうとしたが、自分自身も急に頭が回らなくなり、3人はその場で倒れ込んだ。




次回「魔邸フォービス」

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