第17話 命の灯火
「#青炎の裁き…__ゼロ・グラビティ__#」
アベルが極限まで凝縮したこの技は東地区が壊滅するほどの爆風と青い炎であった。
周りに居た、ルーベット、ビーナスは爆風によりどこかへ飛ばされてしまった。
「何事だ!は…東地区が跡形もなくなっている…」
アベルの元へ駆けつけたのはバスキュア王国の兵士達であったが、この状況を見る限りアベルは悪者になってもおかしくなかった。
「おい!そこのお前…魔王エリゼクトの幹部か?」
兵士達が背後からそう言うと、アベルは青い瞳をギロリと兵士の方へ向きこう言った。
「俺の名前は#エゼル=ブクセル__・__#……お前達の敵でも味方でも無いが、俺に歯向かう者は容赦なく殺す。」
エゼルと名乗るアベルと似た人物の瞳からは闘士や気力を感じないほど冷徹な顔つきであった。
兵士達はその恐ろしく冷徹な顔つきに怯えていた。
「お前達、下がれ!」
「ウルブス王!何故あなたが!?」
兵士達の前に現れたのは現バスキュア王、ウルブス=バスキャアだった。
「ここら辺からとてつもない魔力の気配がしたのでな。」
ウルブス王はそう言うと、エゼルの方を見るとその魔力の宿主だと判明した。
「エゼルと言ったな。お前の魔力はなにか特殊なものに俺は見えるのだが…」
ウルブス王がそう言うと、エゼルはニヤリと笑った。
「そこに気がつくとは、さすがここの王だな。良いだろう特別に教えてやるよ。」
「この魔力は#この体の主の__・__#生命エネルギーを糧に発生している。簡単に言うと魂だ。このエネルギーは普通の魔力の数倍の量を出せる代わりに命が削れる」
エゼルが説明するとウルブス王は驚いた表情をし、質問をした。
「で…では、お前は自分の命を削ってその魔力を出しているのか…?」
「それは違うな。俺はこの体の主の憎しみから生まれたもう1人の人格である。」
そう、エゼル=ブクセルは体の主であるアベルの憎しみの心から生まれたもう1人のアベルだったのだ。
アベルはそれを自分自身で理解し、自分ではブルーヌに勝てないと分かり、自分の命を代償にエゼルを呼び覚ましたのであった。
「話は終わりだ、俺は魔王エリゼクトを殺しにいく。」
「それは無理だ。」
ウルブスは、エリゼクトの元へ行こうとするエゼルを止めた。
「お前がもし魔王と戦うことになれば、東地区のような被害になってしまうかもしれない。話によるとお前の仲間が魔王と戦っているらしいじゃないか。俺達も今から行くからそこでまってろ。」
そう言うと、エゼルの表情が急変し、中央地区側を向いていた体はウルブスの方へ変わった。
「そうか…お前達は俺の邪魔をするということでいいんだな。さっきも言ったよな…俺の邪魔をするやつは」
「殺すと…」
アベルがそう言い放つと、膨大な量の生命エネルギー魔力を放った。
「#青炎の裁き…__ゼロ・グラビティ__#」
*
___バスキュア王国・西地区___
「いて…てて」
ここはどこだ…。赤髪のあの技、本当にアイツが使ったのか…。
ルーベットはエゼルの#青炎の裁き__ゼロ・グラビティ__#により、西地区まで飛ばされてしまった。
ガチャガチャ
奥から物音がする。誰かいるようだ。
「死ぬかと思ったわ…。…ブルーヌ…」
そこには瓦礫に埋もれたビーナスと黒く焦げ、息が無いブルーヌの姿があった。
あの攻撃をまじかで食らった鎧男は息絶えたらしいが…。この状態で俺はあの女に勝てるのか…
「よくも…ブルーヌを……!」
仲間の死に激怒したビーナスは魔力で、1つの水晶を3つに増やした。
「水晶魔術!#三連恋の白露__トリプル・パープル・グリザイア__#」
3つの水晶からとてつもない量の光線がルーベットに向けて飛んでくる。
くそ…!俺の魔力はまだ少ししか回復してない…。このままじゃ、まともに食らって死んじまう…
「#闇の呪霊!__やみのじゅれい__#」
ルーベットは残りの魔力を全て使い、数体の身代わりを出した。しかし、何百・何千もの光線は身代わりを貫き、ルーベットの元へ飛んできた。
ルーベットはビーナスの光線をまともに食らい、その場に倒れ込む。
「貴方はこの場で殺してあげるわ」
ビーナスはゆっくりと倒れ込むルーベットに近寄る
「だめ…だったか…。俺はここで死にたく…」
ルーベットは死を覚悟した。
「#精霊共有!!__ホーリーシェア__#」
どこからか謎の魔術が聞こえ、謎の光がルーベットの体と繋がる。
「……ん!?どういうことだ…傷が回復していく…」
ルーベットの体は一瞬にして全治した。
「何が起こっているの!?」
ビーナスは驚きを隠せない様子だったが、形成を逆転したルーベットはニヤリと笑った。
「誰かに助けてもらったが、次は俺の番だぜ、水晶ババア!」
___バスキュア王国・中央地区___
「何とか間に合いましたよ!イグゼルさん!」
「そうだなエレナ良くやった。俺達も反撃と行くか。」
「はい!」
次回 「最後のあがき」
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