炎の神と破壊の魔王

第13話 首都・バスキュア王国にて

ローダンド王国を後にしたイグゼルたちは、北の山脈にある、魔族の領地を目指していた。


「まだつかないのかールーベット。」


「うるせぇ赤髪筋肉。黙って歩きやがれ。」


相変わらずアベルとルーベットは仲が悪いらしい。


「あ!あそこに大きな街が見えます!」


エレナは遠くに見える街を指さす。


「よし。あそこでひとまず休憩するか。」


「よっしゃー!」


イグゼルがそう言うとアベルは調子を戻し、街に向かって飛び出して行った。




___バスキュア王国___



「はぁ…やっとついた……」


「結構歩きましたからねぇ…」


ローダンド王国を出発してから丸一日。俺達はこの大陸の首都と言われるバスキュア王国にたどり着いた。


発展した住宅や、見たことの無い武器なのが売っており、沢山の種族がこの王国に出稼ぎに来ているようだった。


「とりあえず俺は宿を探すか。ルーベットとエレナは旅の食料などの調達。アベルは魔族の街に関する情報収集を頼む。」


「わかりました!」


「俺に命令するんじゃねぇ…」


「おうよ!」


4人は分散して行動を取るようにした。イグゼルはここの変わったものなどに興味があるらしく、近くの商店に寄っていくことにした。




___バスキュア王国・西地区___



(あぁ…ルーベットさんと2人きりって何だか凄く怖い!)


エレナは少し怯えながら、ルーベットにギリギリ離れない程度の距離で歩いていた。


「おい女、早く歩け。俺様から離れるんじゃねぇよ」


「その、女って呼び方やめてください!私にはエレナっていうちゃんとした名前があるんです!」


そう言うとエレナは駆け足でルーベットの横まで行く。


ザワザワ…ザワザワ


なんだか奥の方で人溜まりができており、ルーベット達はそこに向かった。


「なんの騒ぎた。」


「何かのイベントですかね?」


ルーベットが人を退けながら中央に行くと、オークと思われる男と謎の鎧を着た男が対面していた。


「なんだお前は!いきなりぶつかってきたと思ったら斬りかかりやがって!」


「黙れ下民の豚が…お前のせいでこの綺麗な鎧が汚れちまっただろう。」


「なんだとこの野郎!」


侮辱をした鎧男に対してオークは激怒し、拳を上げる。


「闇魔術、#闇の束縛__ブラック・チェーン__#」


オークと鎧男の影から闇の鎧が現れ、2人を縛る。


「おいおい、こんなとこで喧嘩なんてするんじゃねえよ。」


そう言うとルーベットは2人の前に行き、縛っている鎖をさらにキツく縛った。


ギリッギリギリ


「くっ…!!」


「……!?」


「お前達が喧嘩をやめないと言うなら、俺様が直々に相手してやるよっ!」


「わかった…わかったよ!」


オークが降参し、ルーベットが鎖を解く。


「お前はどうなんだ?俺様とやるか?」


「お前は…虐殺の…ふふっ良いだろう今日のとこはここまでにしといてやる。」


ルーベットは鎧男の鎖を解く。


「ふんっ。いつでも相手してやるから。」


そう言うとルーベットは人混みを退けエレナの元へ帰って行った。


「ルーベットさんも優しいところあるんですね!」


エレナは笑いながらルーベットを褒める。しかし、ルーベットは


「何を言っているんだお前。俺はただ喧嘩をしたかっただけだ。」


そう言うとエレナは微笑みながら、まぁまぁと肩を叩いた。


「虐殺のルーベット。そしてエンシャル王国の王妃か…。くくっ今日はついているな…」



一方、アベルは。





___バスキュア王国・東地区___


「あー…情報収集って言ってもなー。」


アベルは東地区の住宅が多く立つ所にいた。


「おっと…そこの赤髪の兄さんよ。占いはいかかですか?」


アベルに声をかけたのは青髪のフードを被った20代後半の女であった。


「占いか……面白そうだな!やってくれ!」


そう言うとアベルは小さな机と椅子がある小屋に入り、占いをしてもらうことにした。


「ふふ……では行きますよ…」


そうすると女は水晶を回し、中から何やら見えてきた。


そこには黒い煙が上がるバスキュア王国と謎の鎧を着た男と戦うイグゼル。そして、青髪の女と戦うアベルの姿が見えた。


「おい…これって冗談だろ…?」


「いいえ。冗談では無いですよ。」


そういうと青髪の女は水晶をさらに回し、何やら呪文を解いた。


「水晶魔術、#最後の夕焼け__エンドロール・ハイネス__#」


「くっ!」


そういうと水晶から謎の光と共に、小さな小屋は吹き飛んだ。


アベルその爆発で吹き飛んだがすぐさま体制を整える。


「てめぇ…いきなり何しやがる!」


アベルが青髪の女に問いかけると


「私は魔王エリゼクト様の幹部、ビーナスである。アドラメルクとエンシャルの王妃を渡せ。」


どうやらイグゼル達は魔王に狙われる身になったらしい。


「そんなこと言われて、はいどうぞって渡すわけないだろ!」


アベルはそう言うと炎を纏い、戦闘態勢に入った。


「では、死ぬということでいいですね。」


ビーナスは水晶を回し、また魔術を放とうとしている。


「水晶魔術、#恋の白露__パープル・グリザイア__#」


水晶が光だし、中から何百の光線を放つ。それに対しアベルは足を円状に回し炎の円を作った。


「魔人炎武術、#円天!__えんてん__#」



ドガンッ


バスキュア王国の東側は大きな黒い煙が上がった。



次回 「魔王エリゼクト」

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