第5話 マシノ・カルべ
タレスの第七居住ステーションに、タレス生まれのマシノ・カルべと言う青年が現れた。マシノがタレスに生まれたことは、タレスにとって最大の幸福であった。
地球の日本島北海道出身の両親がタレスに着いてすぐに、マシノを産んだ。マシノが3歳になる頃、マシノの両親は、小惑星ウイルス性の疫病によって、命を絶たれた。
マシノは、開拓使団会の会議において、その処遇が話し合われることになったが、会議では、大気がなく、食料も乏しく、タレス生まれでは、成人になるまで育たないため、居住ステーションから追放するべきという意見が多数派を占めた。
居住ステーションから追放することは、大気発生装置のない大地へ放り投げられることであり、死を意味していた。
開拓使長のヤマ・フルタは、会議では議長を務め、進行を優先し、意見を控えていたが、追放論が決まりそうになると決議せず、ただ、「タレスの未来はこの子に託されている」と述べ、多数派を退け、議長一存により、医師である開拓使長の家で養育されることになった。
マシノは、開拓使長に引き取られた当初、痩せ細った少年であったが、スタディスポットに上がる頃には、地球生まれの子たちと変わらぬほどに育った。
マシノが住む第七居住ステーションは タレス唯一の学習組織である、スタディスポットから1700キロメートル離れた場所にあった。
マシノは遠隔授業を受け、基礎課程において、電子存在教師から地球時代の歴史や政治制度を学んだ。
タレスが置かれている現状は、産業革命以前の生活でしかなく、タレスの生活水準を向上させるには、タレスにおいて産業革命を起こす必要を認め、上級課程に進んでからは電子工学分野を専攻し、通常は6年かかる上級課程を2年で卒業した。
スタディスポットを卒業したマシノが取り掛かったのは、無人機による農業の効率化であった。
タレスは、大気と水を得たものの、大地は痩せ細り、穀物は育たず、居住ステーションの周りしか開墾されていなかった。
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