契約
目が焼けるほど真っ黒な泥を掻き分けながら進む。踏み込む度泥が俺の体を染め上げていくのがわかる。
なぜ俺は歩いているのだろう?
実の妹をこの手で殺していながら、なぜのうのうと生きようとしているのだろう?
そんな疑問が心の内を逡巡する。
目の前に友人の首があった。●●のだ。......●●?誰だそれは?
......邪魔だな。
そんなことを思いながら首を拾い横に避けた。ただ取り返しのつかないことをしたかのような感覚だけが残る。
全壊した町に立っていた。しかし、ここはどこだろう?本当に見覚えがない。けど、なぜか涙が溢れてきた。たまらなく悲しくなってしゃがみこんでしまう。
涙が枯れるまで泣いた。
かなり時間がかかったが無事枯れた。何を俺はあんなに泣いていたのだろう?
そんな疑問で一杯だった。
突如目の前に銀髪の悪魔が現れた。腰まで伸びた髪。見るもの全てに慈愛を感じさせる瞳。極めつけは至上のものと言っても過言ではないその風貌。完成された美がそこにあった。
しかし、なぜだろう?俺はその完璧をめちゃめちゃにしたくてしょうがなかった。
息が荒れる。胸が苦しくて、頭がボーってして、そして......。
俺の前に完璧が血を纏って眠っていた。血を被った姿さえ美しいとはどういうことなんだと愚痴がでてしまう。しかし、口からこぼれた言葉とは真逆に俺の心はひたすらに満たされていた。
ただひたすらに立っていた。この感動を誰かに共有できないかと考えたとき気づいてしまったのだ。
誰もいない、と。
気が狂いそうだった。表面上は何も変わらない。しかし、心のなかではたしかに暴れていた。
いつしかこう考える。
もう歩くのはやめよう。
正義も欲もおおよそ理由と言えるものは全て見つからないのだから。
また泥の中。ただし前回より深かった。黒い手がペタペタと俺に触れる。俺の体は動かない。動かす気がないと言う方が正しいか。
●●の懐かしい声が聞こえる。
......諦めるのか?
ああ、しょうがないじゃないか、どうしたって無理なことだってあるんだから。
......忘れるのか全部?
違う!忘れるわけじゃない。
......何が違う?お前がしようとしていることはそういうことだ。本当にいいのか?お前がしたいことは本当にそれなのか?
......じゃあ、教えてくれよ......!もう許してくれ!俺はもう休みたいんだよ!
......嘘だな。お前はそんなこと思ってない。もっと自分のしたいことを自覚しろ、竜二。お前はその答えを持っているはずだ。
......したいこと。
頭の中をよぎったのはこの泥に来てからのことだった。
......お前はその時何を思った?
ただ悲しくて、悔しくて消えてほしくなくて......。
......それだよ。お前は考えすぎだ。
暖かな光が俺を包む。
......正直に生きてくれ。それだけがお前の友人からの頼みだ。
黒い手が呻きながら焼け溶けていく。
待ってくれ!お前は......誰なんだ?
......っ、気にすんな、お前にとってはとるに足らない友人の一人だ。
......じゃあ、何で泣いてんだ!頼むお前の名前を教えてくれ!
泣いてくれるほど俺のことを思ってくれるやつを忘れたくない。その一心からの言葉だった。
......だめだ。ここから先俺は邪魔になる。だから、忘れてくれ。
光が俺の意識を盗みとっていく。
邪魔になんかならない!
もうぼんやりとした感覚しか残っていない。かすれた糸程度の意識、けどたしかに聞こえたのだ。
......別れってのはいつだって辛いもんだな。
そんな苦しそうな幸せそうな友人の声が。
長い旅のようなものをしていた気がする。過酷でけれどどこか優しい旅。
迎えてくれたのは懐かしい俺の家のリビングルームだった。
「旅は終わりましたか、竜二?」
姿はわからないがたしかな慈愛を感じさせる声。知らない声なのになぜか懐かしく感じる。
「......あんたは誰なんだ?」
音はでないが不思議とたしかに伝わった感じがした。
「名前と言うものはありませんが人は私のことを天使と定義します」
天使......天使か、なんかもうとくに驚かないな。
「それでその天使様は人間なんかになんの用が?」
「詳しく話すには時間がかかるので椅子にでも座ってください」
椅子に触れる。懐かしい木の感触はなく温もりのなさが俺の今を痛いほど教えてくれてる気がする。
「そうですね。前知識がない状態では困りますし疑問があれば答えられる点は全て答えますよ」
人の格を越えた存在であろう天使への質問権。ならば始めに聞くべきはことの発端だろう。
「俺は、俺という存在はなんだ?」
あいつらは言っていた。俺が特異な存在であると。ならばこの地獄のきっかけには俺がいるのでは。
天使が息を吸う音が聞こえる。
「......あなたは、と言えば語弊がありますね。正しくはあなたの一族そのものが特異なのです。そもそも、あなたは自分の先祖が誰か知っていますか?」
この聞き方から有名な人物の血筋なのだろう。藤原とくれば、つまり、
「藤原鎌足......?」
飛鳥時代の政治家であり、日本の歴史における最大氏族、藤原氏の始祖。中大兄皇子らと大化の改新を断行したことはあまりに有名だろう。
「......違います」
「......違うのか」
なら、
「藤原惺窩か」
戦国時代生まれの儒学者。近世儒学の祖とされる人物だ。
「......違います」
「そうか、違うのか......」
姿が見えなくてもわかるそのかわいそうな者を見るような視線。なるほどきつい。
「その、非常に言いにくいのですが、あなたの祖先は別に歴史に名を残すほどの活躍していません」
「それを早く言ってくれ」
本当に要らない恥をかいた。
「......話を戻します。あなたの先祖が何をしていたか、簡潔に言えば神に近づくための遺伝子操作です。国の支援のもと体に神秘が宿るとされる物をまたは神に近い生物の体を取り込む。もちろんこんなことをして長生き出来るはずもなくそのほとんどが短命でした」
目の前に体を開いて何かの生き物の血を注ぎ込む様子が映る。
天使様によるとわかりやすくするためのイメージらしい。
「人間でいうところ正気の沙汰ではないと言う感じです。さらにたちが悪いのがあなたの一族はたしかに神を信仰していたのです。これが無神論者だったら話が変わるのですが......話がずれましたね」
人相のいい男が集まった人間に説法をしている。周りの様子から周囲の信頼を得ていることがわかる。しかし、その裏では見るも無惨な実験を繰り返しているのだろう。
「要約すると、あなたの一族は神という概念を信仰しておきながら、あまつさえ自らが神そのものに成ろうとしていたのですよ」
「......いろいろ疑問はあるけど、そもそも遺伝子操作をして神になれるもんなのか?」
遺伝子操作をして神になれるなら他の人間だって同じことをするはずだ。
「ええ、無理ですよ。実際に空襲を契機にその類いの研究は廃れていきましたから」
「じゃあ、この話になんの関係がある?......いや待ってくれ、遺伝子操作?」
脳裏を掠めるあまりにも荒唐無稽な話。だが、もしそれが事実なら。
「あなたの考えている通りですよ竜二。一見無意味にも見える行い。しかし、彼らは知らず知らずの内に貧相で貧弱な、けどたしかな神性を獲得していたのです。それも最後の詰めは皮肉なことに今までの実験とは全く無関係な神のいたずらでしたが。あなたは神の血を継いでいるのですよ」
理解が追いつかない。俺が神の一族?突然そんなこと言われても流石に困る。
しかし、天使はそんな俺のことを捨て置いて話を続ける。
「度重なる肉体改造、その結果与えられたのは寿命を代償とした才能。そして、狂気とも呼べる執着でした。これがあなたに流れている血の全てです」
わからないことばかりだ。しかし、聞かなくてはならないことがあった。
「あいつらは何がしたかったんだ?」
俺の体を使ってなにかをしようしていたことはたしかだ。なら今知るべきなのは目的。
空気が張り詰める。ここから先が本題なのだと理解させられた。
「あなたの肉体を軸とした大世界の創造。そして、一つの世界を生け贄にして発動する理への干渉が彼らの目的です」
......なるほど。
「その、理解できませんか?」
天使の心配そうな声が聞こえる。申し訳ないが理解できたとは言えなかった。自身の理解力のなさに腹が立つ。
「......要点だけ言ってくれるか」
「......このままではあなたの周りで起きたことが世界単位で起きます」
それは俺が動くには十分過ぎるものだった。一度息を大きく吸って吐く。
「このままではってことは、対抗策があるだな?」
「ありますが......この選択肢をとるとあなたは普通に死ぬことは叶わなくなりますよ」
「問題ない......そんなことあんたが一番わかっているだろ」
断言する。このまま逃げ帰る方がよっぽど地獄だ。それに名もない親友との約束だ。俺は奴らを許せない。だからそれにしたがって何を犠牲にしたって殺してやる。
なぜだろう、姿は見えないのに天使は少し微笑んだ気がする。
「わかりました。では、方法について話します。と言っても難しいものではありません。私があなたをあいつらのいる世界に秘密裏に送り、今回の事件の元凶であるアシス-ヘンリーを殺す。それが唯一の方法です」
目の前には忘れ難き銀髪の悪魔が映る。今思うとあれだけ憎んだ相手の名前さえ知らないと言うのもおかしな話な気がしてきた。
それはともかく、難しいものではないとよく言えたものだ。呆れながらもそう思う。
「わかった、いつでも俺は行ける」
どうやって行くかはもう決まっているのだろう。
「そう言うと思って、もうすでに準備はすましています。あちらの扉を出れば向こうの世界に着く手筈です」
光が彷徨い、廊下に繋がる扉に光が集まった。
早すぎないか?まあ、早いに越したことはないしいいんだが......。
「世話になった。もう行くわ......あ、そうだ。もしあんたが天使なら妹だけでも救ってくれないか?」
無駄だろうなと思いつつも一応聞いておくが、返答は予想通りだった。
「すみませんが、それは越権行為に値するため不可能です」
しょうがない、助けてくれるなら今ごろ助けてるだろうしな。
「そうか......じゃあ、今度こそ行くわ。ありがとう。全て終わったらあんたに挨拶でもしに行くよ」
息を飲む音が聞こえる。
そんなおかしなことを言ったか?
「ええ、ぜひお願いします」
......やっぱり彼女の声はとても優しい。しかし、なぜか泣いてる気がしてならない......いや、気のせいだろう。そう思い振り返りはしなかった。
俺は扉を開ける。隙間から溢れ出す純白の光。覚悟は決まった。ここに俺は完成したのだ。もう何があろうと折れない。これは誓いだ。俺と●●との。ならば失敗などあってはならない。
「......負けんなよ俺」
俺はその誓いを重石に足を踏み入れた。
美しい金の髪をたなびかせた天使が佇んでいる。
「......行きましたか」
彼女は先ほどまで会話をしていた少年のことを思い出していた。
珍しく善良な人間だった。今は亡き彼を思い起こさせるほどには善良だった。
首にかけた十字架のネックレスに触れ、握る。
(彼には悪いことをしてしまいました)
本来であればあの提案にたいして否定を返すつもりだった。しかし、心とは厄介なことに自分が本当に望んでいることには抑えが利かないらしい。
(......私は彼に報いることが出来たのでしょうか?)
今は亡き彼を思う。あれほどの感情の高鳴りはもう二度と経験することはない。それを思うと悲しくなる。手にある十字架が光った。
昔、とある湖に一人の天使が顕現した。神の使いである彼女は神の命じるままに命を蹂躙した。彼女はそれを悪とは感じていなかった。なぜなら彼女は神の道具に他ならないのだから。
ある日、彼女の前に十代半ばの男が現れた。大層バカな男だった。彼は名も無き牧人だった。言葉も話せず、土を掘り、獣と戯れ、自然に感謝するなんてことないただの男。
天使には不思議でたまらなかった。残虐非道な天使のもとに通いつめいくら拒絶しても戻ってくる男。何度も殺さない程度に力の差を見せつけた。だが何度やっても戻ってくるのだ。理解できなかった。
しかし、何よりもわからないのがそんな日々を悪くないと感じている自分自身だった。
神が気紛れを起こした。かの男と同じ時を過ごせ。天使に命令に従わないと言う選択肢はなかった。
それからの日々は平穏だった。彼の家にお世話になりながら過ごす。生き物を殺めるのではなく生かす日々。彼女にはとても刺激的だった。彼と見た景色、彼と味わった食事、その全てが彼女には大切になっていた。
永い年月がたった。
すっかり男らしくなった牧人がある日、二人が初めてであった湖で顔を赤らめながら色とりどりの花束を手紙と一緒に渡してきた。
天使が手紙を見ると手紙には汚い文字でただ『愛してる』とだけ記されていた。きっと遠くの町まで出向いてわざわざ用意したのだろう。紙だって安くはないのに。その苦労を思うだけで胸が締め付けられた。
天使には恋がわからなかった。それもそのはず人を殺し続ける日々の中でどうやって人を愛せと言うのだろう。
男は恥ずかしくなったのか花束を押し付け後ろを向いて座り込んでしまった。
花束を右手に彼の頼もしい背中に抱きつく。彼女は自身の顔が赤く染まっているのがわかってしまった。なぜこんなことをしたのかまだわからない。ただしたかったのだ。心の赴くままに。
胸がバクバクと脈打つ。始めての感覚に戸惑いながらも彼女は悪く思っていなかった。
それからの日々が何か変わったかと言うとなにも変わらなかった。いつも通り命を慈しみ彼と同じ時間を過ごす。強いて言うなら彼が遠くの町で奮発して十字架を買ってきてくれたことだろう。
彼女はだんだんと自分の気持ちに気づき始めていた。だが、それと同時に道具が人に恋するなどという愚行に対する侮蔑が自身を襲った。そんなジレンマは最悪の形で答えを運んできた。
とある雨の日、男が病に倒れた。この辺りでは見ない謎の病気に村は騒然となった。しかし、天使はこれを痛いほど知っていた。
神の呪いだ。
見間違えるはずがない。このままでは男は半年もしないうちに死んでしまう。彼女は急いで神のもとに向かった。
「男の呪いを解いてほしいだと?」
神聖な空間にて静かな怒りが満ちる。
「お前は何を勘違いしておる。お前はわしの道具だ。道具の所有物をどう扱おうとわしの勝手だ」
天使は諦めきれず問いかけた。
「なぜ、彼と過ごさせた?そんなのただの気紛れだとお前もわかっているのだろう?」
「さらに言うと貴様、わしの道具でありながら愛を覚えたな?許せん、本来であればその首をもって怒りを収めるところだが譲歩してやったのだ感謝はあれどその逆はあるまい。さあ、早く戻れ。時間がないぞ」
彼女は怒っていた。彼をあんな目に遭わせた神にではなく、何よりも無力な自分自身にだ。
家へと続く森のなか、彼がいた。雨に打たれ、息を荒くし、木に寄りかかってやっと体制を維持できているような、それでも彼女を待ち続けたバカな男だ。
天使は足早に彼のもとに近づき支えようとするが、それは彼によって妨げられた。
彼は震える手を動かし愛しい人の顔に触れ、涙を拭き取った。
あまりにも優しく慈愛に溢れた動作。
しかし、彼女にはその優しさが何よりも毒だった。
「っ......なんで......なんでっ、そんなに優しくしてくれるんですかっ!......お願いだからもっと頼ってくださいよ!」
言葉がわからない彼には意味の無いことだとわかっている。けど止まらないのだ。踞って、涙を流してそれでもわかってほしい私はあなたをこんなにも愛しているのだと。
どれだけたったのだろう。彼が踞っている彼女の背中を優しく撫でる。
彼が笑った。始めてあったときみたいに屈託もなく笑ったのだ。そして、
「あい、して、る」
拙くて、でも愛しさに溢れている言葉。彼が始めてくれた言葉。
わかってしまった。こんなことを思うなら知りたくなんてなかった。
(彼がこんなにもこんなにも私を愛してるなんて)
無理をしないでなんて言えるはずがなかった。なにせ、彼女がこの星で一番彼のことを理解しているのだから。
どっちからともなく立ち上がり、歩きだした。雨は既に晴れていた。
それからの日々は今までの日々を全て集めたとしても上回れないほど幸せだった。いつなんどきも一緒におり互いの気持ちを尊重しあう。男の肉体が動かなくなったら彼女が支えて子供と遊んだ。男の目が見えなくなったら彼女はわからないのを承知であらんかぎりの語彙を尽くし説明した。
その日が来た。男の体もう動かなくなり目もまともに機能しない。もう明日の朝を迎えられないだろう。彼女はその日、食事も睡眠も取らず彼のもとにいた。
「覚えていますか、あなたと私が始めてあった日のこと」
なんの意味もない会話。だがこうでもしないと涙が溢れてしまいそうだった。
「呆けた顔して立っていたんですよ。あなたが何を思って私に会いに来たのか聞きたかったんですけど、やっぱり言葉がわからないって不便ですよね」
すらすらと言葉は出てきた。
「最初はおかしな人って思ってたんですけど、一緒に過ごす内にその、す、好きになってたんです」
「あなたと過ごす変哲もない日々が私の宝物でした。命を守るってことが命を繋ぐってことがこんなにも楽しいことだとは知らなかったんですよ」
(もっと一杯伝えたいことがあるのに涙でうまく伝えられないな)
「叶うんだったら、あなたと一生、過ごしたい。無理だって、諦めたく、ないんですよ」
涙が彼女の頬を伝う。
「生きてくださいよ......あなたのいない日々なんてもう想像できないんです」
彼女の頭をふわりと撫でた。彼女は顔を上げる。
「あい、して、る」
たった一言。彼女の防波堤を崩すには十分だった。
「......私も愛してる。誰よりも神が否定したとしても私はあなたを宇宙一愛してる!だから、だから心配しないで、あなたの分まで私が生きるから!」
彼が笑った。ただ、それは始めて見る表情で、まるでなにかに救われたかのようだった。それは彼が彼女のことを真に愛していたことへの証明でもあった。
彼が死んでから彼女は世界を見て回るため旅に出た。十字架のネックレスと村のみんなから貰った保存食を片手に世界を見て回った。
紆余曲折あったが彼女は無事に旅を終えた。だが、天使の寿命は長い、根を下ろす日が来たのだ。
滞在場所は日本。理由としては信仰が盛んではなく神の力が弱い、そして何よりも彼の生まれ故郷と言うのが大きかった。
人の家を模した別次元の空間を作り椅子に腰かける。
空間とは絶対の安置であり、神でさえ侵すことはできない。ただし設置にかかるコストが高く何度も使用できないと言うのが欠点だが。
「ねえ、お姉さん天使だよね」
彼女に非はないだろう。なにせいるはずもない存在がいたのだ全力の攻撃をしてもしょうがないと言えた。
光が爆ぜる。生身の人間なら木っ端微塵になってもおかしくなかった。
「あ、挨拶がまだだったね」
しかし、まだ小学生にも満たないほどの少女は傷一つついてなかった。その事実は彼女を警戒させるには十分だった。
「私は佐木、藤原佐木って言うの。これからよろしくね、天使さん」
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