エピローグ
世界のどこにいても、きみに幸せが降り注ぎますように。
☆☆☆
こんばんは。こちら星くず放送局。今夜もきみに、この声が届いていることを願って。
今夜のパーソナリティは、あたし、ナナセです!
まずは『ほし』と地上の情報からお伝えするね。
食糧配給がそれぞれあります。『ほし』は教会跡地、学校、図書館で。地上は、元反乱者の基地周りで行う予定だから、ちゃんと食べてね。
えっと、あと今日は――あ、そうだ。また少し、雨が降ります。
だいじょうぶ、大きな物ではないし、こっちには降らないって予測が出てるよ。
ただきっと、とても綺麗だから。空を流れる星くずを、良かったら見てみてね!
☆☆☆
ラジオを流しおえて、あたしはふうっと息を吐いた。
「お疲れさん」
シンが笑って水を出してくれた。
「ありがと!」
あたしと、ミナトと、シンと、ホクトくん。持ち回りでこのラジオをやることになった。あたしの提案だ。あの短い十分で、あたしは確かに救われていたから。
情報を伝える手段が毎日あるのはいいことだって、ホクトくんも賛成してくれて。
最初は渋っていたミナトも、最後は受け入れてくれた。
いま、『ほし』も地上も、ゆっくりだけど確実に、復興の道をたどろうとしている。
大雨の被害は決して少なくはなかった。それでも、みんな、今生きていこうとしている。
『ほし』の真実は、みんなに伝えられた。地上と『ほし』の間には、まだまだ拭いきれない壁みたいな物は確かにあるけれど、それだっていつかはきっとほどけていくってあたしは信じている。
「ホクトくんとミナトは?」
「向こうでまた喧嘩してる」
「あははっ、またかぁ」
お互いが自分の考えを譲らないせいで、あのふたりは何かと衝突しがちだ。
でもきっとそれでいい。ずっとずっと離れていた分、たくさん言葉を交わせばいいんだ。
「んじゃ、ちょっと止めてくるね」
マオ・マオを抱き上げる。
「無駄だと思うけどネ」
「そー言わないの」
笑って、あたしはラジオブースを飛び出した。
基地の外に出て、夜の地上を駆けていく。
よく似たふたつの青みがかった髪。お互いに指を差し合って、何やら言い争いをしている人影を見つけて、大きく手を振った。
「ホクトくん! ミナト!」
二人が振り返る。
「喧嘩は、今夜はここまでだよ!」
あたしが笑うと、ふたりはにらみ合って、それからそっぽを向いた。
ふふ。仲悪いんだから。
笑って、あたしは駆け寄っていく。
夜空を、星くずが駆け抜けていくのが見えた。
☆☆☆
――それじゃあ、今夜はここまで。
toi toi toi!
世界のどこにいても、きみに幸せが降り注ぎますように。
☆☆☆
――――Fin.
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