電車から始まる百合
ネルシア
電車から始まる百合
毎朝気になる人がいる。
同じ時間の電車。
始発。
紺色のスーツ。
スカートではなくズボン。
決まって真ん中に座る。
私が密かに片思いしてる人。
目は合ったことはない。
ただの同乗者なんて誰もが気にしないのと同じだ。
しかも……同性なんて……ね……。
その人が降りて、自分の駅で降りる。
「はぁぁぁぁぁぁ……。」
深いため息を着く。
「元気ないね。」
アパレル店員として働く同僚から仕事中に話しかけられる。
暇すぎてやることが無い。
人気がないと言うか、好きな人はどハマりするけどそうじゃない人は興味無いという感じのお店。
「どうしたら振り向いてもらえるんだろうなぁって。」
「あー、例の電車の人?」
「うん……。」
彼女も同性愛者で、こういうことは話しやすい。
ただ、私と彼女は互いに恋愛対象とは見てない。
「まぁ、私たち(姓マイノリティ)なんて最近ようやく認知されてきたって感じだからねー……。」
「だよねぇ……。」
そんな中、店のドアベルが鳴る。
「いらっしゃいま……っ!!!!」
電車のあの人だ……!!!!
どどどうしよう……。
見渡すと同僚は親指を立ててバックヤードに逃げ込んでいた。
あの野郎。
憧れの人が目の前で服を見定めている。
はぁぁぁぁぁ……どうしてそんな選ぶだけで絵になるんですか?
「ねぇ、ちょっと。」
「ひゃい!!!」
思わず変な声を出してしまい、恥ずかしくなる。
「どっちがお似合いかしら?」
取り出したのは綺麗な深い海を想像させるような青単色に泡の絵が施されたワンピース
と
純黒な上着とズボン。
どっちも最高にお似合いですぅぅぅぅ!!!
んんんんんんん!!!!!!!
「どちらもお似合いですよ?」
「そう……悩むわね……。」
よく抑えた。
よく暴れなかった、私。
「……はぁ。」
洋服を選ぶのは楽しいもののはずなのに深いため息を着くその人。
「……どうされたのですか?」
「あぁ、ため息のこと?
親が古臭い人間でね。
見合いを勝手にセッティングしたのよ。
しかも相手は金持ちのボンボン。
私の家も名前があるばっかりにそんな話になってね……。」
「そうですか……。」
「ごめんなさいね。
そんな見合いのために服を選んでると服に申し訳なくて。」
「……。」
「気分を悪くさせちゃってごめんなさい。
両方貰うわ。」
私の頭のネジが吹っ飛んだ。
「あ、あの!!!」
「???」
「私じゃダメですか?」
ニッとその人が笑うと背の小さい私を見下すように顔を近付ける。
「その言葉を待ってたのよ。」
「……ひゃい?」
「知ってるのよ?
いつも私を見てたこと。」
「あ……え……と……その……。」
「そんな顔されて私がタダで逃がすと思う?」
助けを求めるべく、同僚に視線を送る。
「店長には体調不良で早退したって言っとく」
と言わんばかりの眩い笑顔で再び親指を立てる。
あっっっの野郎。
「それじゃぁ、行きましょうか?」
急に跪き、私が手を差し伸べるのを待っている。
「……はい。」
作者から
続編書こうか悩む短編小説です。
要望あれば書くかも?
電車から始まる百合 ネルシア @rurine
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