第8話 油断大敵
パレハ=プロイントスとの決闘を終えてからも変わらずに、へベルナとの
「――ッ」
「――」
へベルナとの模擬戦の進展があった、まず彼女から縦横無尽に放たれる『ファイアボール』は
「『魔光破』ッ!」
衝撃波で粉砕していく。
「『ファイアボール』」
「ッ『ファイアボール』」
一斉に壊せたっ、へベルナに向かって走って――
「よし――」
行ける――
「――ッ」
「『ファイアボール』」
これでへベルナの『ファイアボール』は相殺して――
「(剣で――)」
後一歩――
一歩――
「――ッ!『サンダーボルト』」
「――へぁ!?」
えっ、『ファイアボール』しか使わないって――
「言ってたのにィィ!」
■
「ごっごめんなさい!、少し驚いてしまいまして」
へベルナは剣を向けられた事への反射で魔法を撃ってしまったらしい、そうか、普通に考えれば刃物を向けられればそうなるか。
「攻撃方法についてのルールを考えておくべきでしたね......」
「そうだな......」
しかし、アレは勝ったと確信してたんだがな......
「はいっ」
へベルナは正座をしている。
「ん?」
「今回は私のミスですので、膝枕、して上げますよ」
なっ......
「......あの、早く」
どうする、したい、当然してもらいたい、俺のいままでの頑張りは全てこの時の為だぞ、だが、良いのか?確かにへベルナのミスで俺はゲームに負けたんだ、へベルナが悪いだろ、うん。
別に悩む必要はないだろう?ないはず......だが......だが俺は――
俺は――
「すぅ~......はぁ~......」
「あの、どうしましたか?」
やっぱりご褒美は後でとっておく、ケーキはイチゴを最後に食うタイプだから。
「正式に、事故とかではなく、キチンと勝負に勝って俺は膝枕をご褒美に貰う」
「......良いのですか?」
「あぁ、ご褒美は俺がキチンと勝って貰って見せる」
「はぁ......」
何だろう、動機が不純だからか、全くカッコ良くない。
■
「149......150っ!」
俺は日課のトレーニングを続けている、膝枕の為の訓練だ。
実際あの戦いはかなり善戦したし、もっと鍛えれば恐らくは――
「......ふぅ......」
それにしても最初の頃と比べたら見違えるほどに強くなった。
「いまの状態で変身したらどうなるのか......」
俺はそれが一番気になっていた、あれは強力だ、高揚感で自制が聞かなくなるリスクはあってもだ。
俺が強くなれば、当然もっと強くなっているはず。
......迂闊に変身するのがもっと怖くなってきたな......
■
「アキラ様、今日はへベルナ様は来れないと......」
「へ?」
話かけてきたのは住み込みで働いている使用人の一人、名前は確か......
「マルフさん」
マルフ=スレイ、アルカディア帝国に密入国して路頭に迷っていた所をルキウスの親父が拾ってから、グラディウス家に仕えてるんだっけか。
「何か緊急事態でも?」
最近は頻度は少ないとはいえ、ソルテシアに足を運んだり、依頼をへベルナとこなしたりしていた、そんな時のこれだ。何かあったのだろうか
「へベルナ様にとってはそうですね」
「ん?というと?」
「へベルナ様のご実家では家族同士で争っております......へベルナ様も無関心という訳にはいきませんから......」
どうやら、へベルナの実家では揉め事が起きてるようだ。
「すみません、これ以上はへベルナ様の事ですので......」
「いや、ありがとうマルフさん」
まぁ、少しは知れた、へベルナ=マギアフィリアの実家は揉めている。
ただ、直接聞くのは気が引けるな、こういうの触れられたくないだろうし、聞ける空気の時に聞いてみようか......。
■
【
ある者は好奇心、へベルナの旧友という俺がどんな奴かを見定めようとしていた。
眼鏡に緑を基調として、胸をさらけ出している服、へベルナの杖とは違うかなり金ぴかな杖、恐らくは魔導師か?
「う~ん、普通!」
俺を興味津々に見るなりいきなりだ。
「いや普通って......」
「でも君、パレハとは戦えてたでしょ?じゃあそれなりの実力持ちかな、あっ私はガレナ=メイネ、よろしくね」
「アキラ=フジワラ、よろしく」
そんなガレナと話しているとへベルナが近づいてくる。
「ガレナさん、今日もお休みですか?」
「そう、私のいつも組んでるチームがリードル捜索の為に出払っているのよ」
「ガレナさんは行かないのですか?」
「へ?私が?無理無理、捜索ほどつまらなくて金にもならない、体力だけを消費する仕事、この私が好き好んですると思う?」
「はぁ......アキラ、彼女のようになってはいけませんよ?」
俺を見て注意をする、まぁ真面目だもんなへベルナは......
本当なら俺も行きたいところだが、へベルナ曰く行っても足を引っ張ってしまうそうだ。まぁ慣れない捜索に時間を使うより、その時の為に強くなれという事だ。
「真面目ねぇ......息抜きも大切なのよ?」
「それは否定しませんが......」
「ふふっ、ねっアキラ、【
ガレナはそういって微笑んだ。
へベルナについていき依頼の紙が多く張り出されている掲示版に向かう。
「ガレナさんは、あぁ言いましたが、いまの状態でギルドに加入すると迷惑が掛かります、まだ加入はしませんが、私が依頼を受けるとこを見ておいてください」
張り出されているいくつもの紙をキチンとみている、よく依頼内容を吟味しているようだ。
「大体受ける依頼は自分と同じランクかそれより下しか受けられません......」
へベルナは依頼用紙を一つとる。
「っと、この紙を取りカウンター席の受付嬢へ、ただこれは受付嬢に相談して合った依頼を受ける人も多いです、人それぞれですかね」
説明を聞きながらも辺りを見回す、冒険者は種族も様々、持っている武器とかで役割が想像できたり面白い。
周りは俺たちを見ている、一応有名人なものだから、か突っかかてくる輩も当然現れた、へベルナを敵前逃亡した弱者であると小馬鹿にした者もいたし、時には喧嘩を売ってくる者までいた――
「戦略的撤退というのですよ......わかりましたか?」
「ギブ、ギブゥゥゥッ!」
「わかりましたか?」
「はいぃ、わかりましたぁ!」
そしてそんな事をしようモノならへベルナの魔法の餌食である、そして馬乗りにされて杖で首を抑えられる......
確かにへベルナは馬鹿にされているが、この調子なら再評価もすぐにされるだろう――
「――へベルナ=マギアフィリア」
喧嘩沙汰をよく好むここらの冒険者は喧嘩が起きればすぐ群がる、そんな群衆の中から割って出てくる男。赤茶色の髪を揺らしながら、青い杖を持つ男。
「......アーヴィ」
「【
「......久しぶりですね、ギルドの調子はどうですか?」
「俺もギルドマスターとして、事件解決に奔走している、被害者は俺のギルドにだっているからな」
アーヴィ......確かギルドで№2の冒険者だったか。
「しかし随分と溶け込んでいるな、へベルナはともかくとして......」
「......」
「話は聞いているよ、アキラ==フジワラ、だっけ?」
へベルナを除名した男......分裂は落ち着いたのか?
「せっかくだ話し合わないか?【
■
確かにリードルの件やいろいろ話しておきたい事があるのは確かだ、俺とへベルナはアーヴィに連れられて【
「俺の新しい仲間を紹介しよう、来てくれフロル=ピナク」
アーヴィがそう呼んだ瞬間に部屋全体に花の甘い香りに包まれる。
「フロルさん......ですか」
フロルと呼ばれ、現れたのはピンクの花をモチーフにしたスカート、そしてピンクの花の髪留めを付けていて、可愛らしい。
「フロルは期待の新人でね、君とも馬が合うと思っている」
「――あっ初めまして」
とってもニコニコしてるフロル。
「へベルナさん、初めまして」
へベルナと握手をしている、へベルナは無愛想ではないがフロルと並んでしまうと無愛想と思われそうだな、それくらいフロルの表情が明るいというか......
「......初めまして......へベルナ=マギアフィリアです」
「よろしくお願いします!」
へベルナ、フロルに押されてる......
「えぇと、アキラさん?もよろしくお願いますぅ」
「どうも、アキラ=フジワラですぅ......」
同じく握手をするが、甘っ、甘い香りがこっちに来てる!
「んふふぅ」
「ははは......」
フロルの満面の笑顔とは対照的に俺は笑顔を引きつらせてしまう。マジモノの明るい存在には押されてしまう.......
というかどういう状況だ。
「彼女には、使い魔を使ってリードル捜索をお願いしてたんだよ」
「使い魔......召喚魔法を扱えるのですね、フロルさんは」
「あっはいっ」
そういえば召喚魔法はややこしいとか何とかであまり説明をされてなかったな。
「ですが、使い魔も簡易なモノしか召喚出来ません......まだまだ未熟者で」
「いやいや、フロルの実力は素晴らしいよ、俺も君のサポートのおかげで仕事をこなしているんだ」
「そっそんなマスター......」
「......」
なにかイチャイチャし始める......ナニ、そういう関係?
「アーヴィすみませんが......」
「っと、そうだった、彼女は召喚魔法が得意でな【
「......」
「君は君でリードルの捕縛を目指しているんだろ?【
皆まで言わせずへベルナは話す。
「アーヴィ=パウン、残念ですが【
へベルナに戻るようにお願いしようとしていたわけか。
いま俺がいるのは完全にオマケ......
「......いや、構わない......そうだな、リードルは魔石採掘場付近の目撃例があったとだけ伝えておこう」
「......ありがとうございます、アーヴィ」
そして、【
すんすん.......
「......あま......」
握手をした手にはまだ甘い香りが残っていた。
■
【
「魔石採掘場に行ってみたい」
よくよく考えてみれば俺はあの時からあの場所には行っていない、行く意味もなかったからだが。
「良いですが、中には多分入れませんよ?封鎖されていますし」
「そりゃそうだろうけどさ、なんか見ておきたいなって、何か発見あるかもしれないだろ?」
「まぁ、良いですが」
そんな事を話していると一人の男が俺に敵を向けて見ている。
「【
気持ちわかるが、そこまで......あっ何処かへいった。あいつへベルナを警戒しているのか。
「......彼らはギルドマスター・ハン=テレンに忠誠を誓っていましたが、今はハンがいないので代理を立てました、それがドージャという人物、その代理がアキラを......いえ、5人を全員殺して回復させると......」
「ドージャ......」
「元々ハンを慕っていましたがハンが意識不明になってからは......かなり過激な事をほのめかすようになりましたね、要注意人物です」
しかし、余程ハンは慕われているんだな。
「どうしてそこまで慕われているんだ?」
「私が知っている限りであれば話せますが......」
■
魔石採掘場に向かう間、へベルナはハンについて話してくれた。
「昔、ハンはダストという地域で身寄りのいない者に戦闘術や学問を教えたといいます、懐いた子を連れてはダストを放浪し、それを繰り返して【
「ダスト?」
聞いたことないな......
「ダストは国......というよりは大規模なスラムの島です、素性の明かせぬ者や頼るべき者がいないままに国を追われた者が行きつく先、それがダストですね」
恐らくは犯罪都市だな、秩序とか存在しないだろう。
「アルカディア帝国より南西方面にある島の一つがダスト......ダストは謎が多いですが、そんな地域を抜け出す術を教えたのがハンさんらしいです」
......もしかしたら、俺もダストに行っていた未来があったかもしれないな。
「ギルドマスターを親として慕う文化は多いですが、【
親の仇か。
「しかし、それは決してアキラを殺して良い理由にはなりません、アキラ、冒険者同士で相争うという事は好ましくないとはいえ、多種多様なこの業界では避けては通れません、そういった脅威を取り除くためにもより強くなって――」
これは......長くなるな......
■
へベルナが話をしている間に魔石採掘場に到着した。
「魔石採掘場、到着です」
本当に久しぶりの採掘場だ。
「西ソルテシア旧魔石採掘場が正式名称ですが......やっぱり見張りがいますね......」
「リードルを見かけたらしいが、ここに執着する意味あるのか?」
「どうでしょうか、ここはプロイントス家の持ち物ですから、家の恨みとかもあり得ます」
「プロイントス家ってパレハの......」
「そうですね」
あいつそんな金持ちの生まれだったのかよ!だからあんなに偉そうだったのか......
「......あっそういえば、光って、その後に眠ったんだよな?」
「えぇ、紫色の光でした」
魔法なんだろうが......あぁ、俺が去った後に中で何かあったんだろう、自分の目で見てみたい。
「......でも、やっぱり来たからには内部が気になりますね......あっあの人なら......」
「知り合いか?」
「えぇ、ウササと言うのです、行ってきますね」
ウササ、何とシンプルな......
そして見張りに話を掛けていく......へベルナは結構アクティブに動くなぁ......
兎耳の少女、あれがウササか、ぴょんぴょん跳ねてる、へベルナが何か出して......
もしかして賄賂か?喜んでるのかもっと跳ねてる......
「ふぅ......」
あっ戻ってきた。
「どうだった?」
「えぇ、見張りをつければ内部に入っても良いと......」
おぉ、これで何か進展が......
「残念ながらあなたは入れません......」
「え」
ウソ、俺は入れないの......
「アキラを連れて入るのは......流石にまずいとの事......」
あぁ、そうか......俺の立場的にダメか......
「ですので......アキラはどうしますか?そこまで深く入れないとはいえ、いまからだと出るころには日が暮れているはずですし......」
「そうだな、せっかくだしソルテシアを散策して別荘に戻るかな」
「気を付けてくださいね?先ほども言った通り【
「わかってるって、それに俺、自衛出来るくらい強くなったからな!」
まぁ、お金ないし、散歩程度で終わるだろう。
「ん~、正直心配です......迷子にはなりませんか?」
「母親かっ!」
「なら良いのですが......」
流石に迷子になるわけないだろ......ならないはず......
「それでは、明日また別荘に行きますので......あまり遅く帰ってはいけませんよ」
「わかってるって......」
俺はそうして、へベルナと別れ一人ソルテシアに向かった。
■
ホント久しぶりに一人でソルテシアを歩いている、まあへベルナの気持ちはわかる、自衛出来ると言ってもへベルナからしたら、俺は弱い。
「すぐ帰るから大丈夫だろ」
町は賑やかで、俺はここが好きだ、だって活気があるから。
「へっここしか知らないだけだけどな」
しかし、歩いていると良い匂いが......お金がないのに散歩は失敗だったか......
よくよく考えたら時々やってる依頼分の報酬貰ってない。
「へベルナ、ちゃっかり金取ってやがるな!」
まぁ、授業料として貰ってるのだろう、俺も強くなってるからメリットあるし、ある意味健全か。
「あぁ、喫茶店とかもある」
良いな、コーヒー飲んで、ケーキ食べて、俺もいつかはこういう所で悠々自適に......
「ん?何だ?」
ざわざわと声が聞こえて思わず振り向く、俺はある存在に目がいった。
長身に黒いコートに黒いシルクハット、黒いペストマスク、全身を黒で統一している、その人物は両手を背に付け堂々と歩く。
俺と同じ気持ちなのか、他の人も同じような視線を向けていた。
「......」
目の前に......なんだ?
「すみません、入らせてもらっても?」
「へ、あ、すみません」
「ありがとう」
何だあの喫茶店に入りたかっただけか、うわぁ、店内でも浮いてる。
「なんなんだ、あいつ......」
「知らんのか?」
俺が思わずつぶやいた言葉に近くの男に聞こえていたのか、説明してくれた。
「アレは【黒装隊】のギルドマスターさ」
「こくそう......たい......」
「あぁ、どっかの家のお抱えギルドだっけか」
「お抱え、なんて出来るのか?」
男は鎧をつけて腰に剣を持っている事から冒険者だろう。
「その依頼は斡旋するなって冒険者協会とか地元政府にお願いすれば出来るぜ、もちろん緊急時は余程の事情がない限り強制出動だけどな」
そんな事が出来るのか、まぁ専門性問われるタイプの仕事のみ扱うとか普通にありえるか。
「っま、お抱えギルドなんてのはな、そのお家がやってほしい事を専門にして代わりにやるわけだ、そして当然報酬はギルドに直接入る、内部で自己完結させてるのさ」
「犯罪行為とかしてそうだな......」
「してるだろう、ただ一応は冒険者協会に入ってるし、表向きは犯罪行為をしていない、闇ギルドには該当しないのさ」
ギルドも色々とあるんだな......
「あーえぇと、そういえば名前聞いてなかったな?冒険者なんだろ?」
「あぁ俺はレントム」
「俺はアキラだ」
でも俺、冒険者でもないから、あまり偉そうな事言えねぇな。
「はははっアキラ=フジワラだろ、知ってるぜ」
そりゃ知っている奴もいるか......
「特に俺たちのギルドなら、まぁそうだろうな」
「そうか、ちなみにどこのギルドなんだ?」
「......【
「――ッ」
油断した、奴の膝蹴りを喰らって――
■
「っ......ここは......」
確かレントムとかいう奴に膝蹴りされて......
ここは、どこだ?森っぽいが......2人組の奴らが立ってる......もう夜だ。
「アキラ=フジワラ、だな?」
一人小柄な男が俺に聞いてくる。
「......そうだが......」
「貴様がへベルナとどういった関係であったのか、は、どうでも良い、そんな事の真偽は関係ない」
さっきのレントムとかいう男、そしてこいつか。
「マスターを回復しろ」
「......俺は知らない、他にも逃げた奴がいたんだろ?どうしてそいつらを追わない?」
「貴様に言われんでも、追っている!」
「そうかよ、じゃあそいつの報告でも待ってろ」
「おっおい、お前、喧嘩腰になってどうする......」
俺に言ったのか、この男に言ったのか......少なくともレントムはそれなりに抑えが聞くようだ。
「マスターはこういった奴には容赦しない、仲間思いなお方なんだよ」
「そっそれは」
しかし、狂信者と言うのが正しいのかはわからないが、これは話し合いは無理そうだな。
「俺が冤罪だったらどうする気だ」
「逆に聞くが、貴様が関係ない証拠はあるのか」
「あったら、苦労しない......」
「言うほど、苦労しているようには見なかったが?」
まぁ、人に恵まれていたのは確かだが......
「俺の出会った人は善い人が多くてな、ありがたい事だ」
「......随分と余裕そうだ」
「おっおい、ドージャ」
レントムが焦って声をかけてるが、ドージャとかいう男......こいつか、へベルナが言っていた要注意人物。
「俺はね、ダストでは殺しをしてたし、拷問もしたことある」
「話と違う!確定しない奴の殺しはしないって話し合っただろ!」
どうやら【
「安心しろレントム、へベルナがいない今なら......いや今しかない」
ドージャは腰に付けていたであろう剣を持ち始める。
へベルナに散々言われていた、俺だって聞かされていた。こいつらは俺を殺す気でいると、実感がなかったのも事実だ......。
「っ――」
しかし、どうしようか、両手が紐で塞がっているし、剣も外されている......。
「おい、ドージャやめろ!」
へベルナがいなくなってすぐこれじゃあ、俺ってダッサいし
腹立たしいッ!
塞がった両手に魔力を込めて
「『ファイアボール』」
「馬鹿め、そんな魔法、対策は――」
「馬鹿なのはどっちだよ、俺の魔法、火力だけはへベルナのお墨付きなんだぜ?」
爆発させ、紐を焼き切る、例え魔導師を捕縛する為のモノだろうが俺の火力で
破壊!
ドカァァン!
『ファイアボール』の爆風で黒煙で視界を奪い――
その隙に――
剣を取る。
戦闘が今始まろうとしていた。
■
へベルナは西ソルテシア旧魔石採掘場内部にドンドンと足を運んでいた。
見張りとしてへベルナを連れているのは兎耳を付けた獣人の少女ウササであった。
「いやぁ、事件後にこんな奥まで連れて行くのはへベルナで8人目」
「えっ8人?それしか行っていないのですか?」
「仕方ないよ、採掘場なんて行きたがる人いないし、特に何もなかったで、終わりなんだよね」
「......ちなみに誰が来たか教えて貰っても?」
「ん?どっしよっかなぁ」
「......」
へベルナはローブの中からイチゴの飴を取り出す。
「これで、どうです?」
「わぁお、飴ちゃん、んふふ、だからへベルナ好きぃ」
「どうも」
そして飴を舐めながら答えてくれる。
「まずは冒険者協会とアルカディア帝国の使いがそれぞれ2人とプロイントス家の人が1人で5人、それと【
「【
「ん、仲間思いなドージャ、彼も事件解決の為に結構奥まで行ったんだ」
【
「彼なんて、私の制止振り切って進むもんだからさ、困っちゃった」
「と言う事は最奥部まで?」
「ん、そだね、私怒ったの『勝手に奥に行くとか、ダメ』って彼も流石に反省した様で『ごめん』ってだからね、特別に報告してないんだ」
最深部......へベルナはおろか他の冒険者も詳しい者は少なく、あまり知られていないのだ。
「最深部ってどうなっているのですか?」
「最深部はね、昔行ったけど行き止まり、つまらないよ?」
「行くのは......」
「そんなの、ダメ、怒られちゃうもの」
へベルナはローブの中から何かを取り出す。
「はい、どうぞ」
へベルナの手には色々な駄菓子が入っている。ウササはそれを見て長い白い耳を動かしてぴょんぴょんと跳ねる。
「わわわ、すごい、へベルナのポケットってなんでも入ってるの?」
「もしかしたら、そうかもしれないですね、お願い聞いてくれたら、美味しい物、
もっと出せるかもしれませんね」
「むむぅ......これは仕方ない、特別に連れて行くよ、安月給なこの仕事が悪い!」
こうしてへベルナは奥へ奥へと進んでいくのだった。
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