トキー③
「うわぁ、どんより……雨が降りそうな#
「達也、傘持っていった方がいいわよ。降水確率60%だって。結構、あるわよ」
「分かった。じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい。大会、頑張って」
「ありがとう」
俺は玄関のところにある傘立てのところから、自分の傘を持って家を出た。歩きながら学校に向かう。
「大会の日にこの空模様って……あり得ない。降るなら大会が終わってからにしてくれよ」
と空を見ながら呟いた。
「お~い、達也!」
「冬馬」
学校の正門前で俺を呼ぶ声にすぐに誰か分かり、歩くのをやめた。
「おはよう、達也」
「おはよう、冬馬。今日だね」
「今日は絶対に金賞、とるぞ」
「もちろん!」
大会の日の朝は早い。学校に早く来て、練習あるいは、会場に出発のどちらか。会場までは先生が用意したバス。バースデー会社に予約したバスで移動。楽器も専用のトラックで運ぶ。
練習は、会場で演奏する順番にもよる。早ければ、楽器はトラックに乗せて、バスに乗って移動。今回は遅めの順番で会場に行く前に少し、練習してから会場に向かう事ができる。
ちなみに俺達の演奏は午後部で5番目。順番的にいいのか、そうではないかは個人差があるから、何ともいえない。
俺と冬馬は、体育館へ向かった。大会前はいつも体育館を利用している。すぐに移動ができるようにしている為だ。
重い楽器を運ぶのに結構時間、体力をとられる。だから大会前に先に運んでしまおうという事だ。
「「おはよう」」
「「おはよう、達也、冬馬!」」
「「おはようございます!」」
体育館にはもう何人かは、来ていて準備をしていた。集合時間まであと30分。そろそろ、残りの部員がだんだんと来るだろうと思いながら、俺も準備を始めた。
****
午後。もう会場に来て、他の学校の演奏を聞いていた。11時半ぐらいに会場について他の学校の演奏を聴いていた。会場内は静かにしないといけないのは、当たり前。俺の隣にいる冬馬に小声で話をした。
「どこもうまいなぁ~」
「本当。緊張してくるよ」
たださえ、強豪校が多いのに始めから聴いている訳じゃあないから、午前中はどこがうまかったか、分からない。
「午前中に
「聴きたかったけど」
「午後に
「移動するって!」
「うわぁ、マジで」
冬馬が言っていた、兼森、古舞駑、安西、泉山校が強豪校として有名。俺達のあと最後に強豪校が2校も残っていると思うと複雑だ。
俺達番が回ってくるから移動しているけど、演奏はまだ続いている。移動中でも聴こえる。そろそろ集中しないと。
「この部屋に入ったら音を出しても大丈夫ですが、ドアを閉めきってからでお願いします。時間は15分です」
音を出してもいい部屋を案内役の生徒の人に案内され、今は違う学校が使っているので終わるまでは待機中だ。
ピピピ……とどこかでタイマーの音がして、案内役の生徒が中に入っていき、部屋を使っていた学校が出てきた。全員出たのを確認した生徒が『どうぞ』と言われ、中に入る。
全員入ってからはまるで戦場だ。時間との戦い。3年が中心になって急いでチューニングをする。演奏する中で音があっていないのは、致命的。全体に響く。それは、許されない。短い時間で、どれだけをこなす事が出来るかが、鍵となってくる。
「皆さん、チューニングは出来ましたか」
「「「はい」」」
「では、四宮さんの音に基準にします。音を出して下さい」
まず四宮さんが音を出す。遠堂先生も耳で確認してから、残りの生徒に音を下さいと合図をする。合図がきたので、残りの音を全部出す。遠堂先生はある程度、音を聴いたら手でやめの合図。
「音は合っています。時間も残りわずか、各パートの注意点を確認しつつ、楽器を冷やさないように」
「「「はい」」」
各パートの注意点を確認をしたり、先生が各パートのところに行き、話をしていると時間がきた。部屋を出て移動。今度は大きなホールに向かって移動。いよいよ、本番に近づいてきた。
ホールの中、舞台裏でも音を出すのは、禁止。前の学校が演奏しているから。
「そろそろ、終わる。いよいよだな」
「そうだな。頑張ろう、冬馬」
「当たり前だ」
パチパチと演奏が終わった。
「次、星崎校さん並んで下さい」
「皆さん集まって下さい」
遠堂先生の声を聞いて、先生のところに部員全員が集まる。
「皆さん、心の準備はいいですか。ここにいない、早乙女さんにも届けるような気持ちと、自分達も演奏を楽しむ気持ちで頑張りましょう」
「「「はい」」」
「では、行きましょう」
俺達は先生の言葉を聞いて、ステージへ移動した。自分達が座るイスに移動し、演奏の準備をする。
そして準備が終わると照明が照らし、プログラム何番、学校名、曲紹介のアナウンスが流れる。それが終わると先生一人が礼をした。
そして指揮者台に登り、指揮棒をあげる。
そして俺達の演奏が始まった。
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