トキー①

 夏の大会が始まるまでついにあと1日になってしまった。今日で練習は最後。明日が本番。

 今日で調整最後。午前の練習で課題曲を午後は自由曲を徹底的にやっている。

 そして今、お昼休憩。お昼休憩は1時間。自由に空いている教室を借りて食べている。

 一つの教室に3年が9人で集まってお昼を食べていた。ここ最近、結唯について話していた。

 俺と冬馬が結唯のお見舞いに行った時は、面会謝絶。結唯が夏風邪を引いた為に会えなかった。その後も3日も会えなかった。次の日は、会えた。会えたけど、点滴はそのままでマスクをつけていて風邪で、体力を奪われたのか、少し痩せたように見えたようだ。

 俺と冬馬、そして四宮さん以外の3年は、昨日、一昨日おとといとお見舞いに行ったみたいだ。

 「明日が本番。本当は3年全員で結唯ちゃんのお見舞いに行きたいけど……」

 「さすがにダメだろう」

 「だよね~」

 「というわけで部長達で行って来てよ」

 「分かりました」

 「……冬馬、どうした?」

 「えっ!」

 「なんか、難しい顔しているよ。考え事?」

 「冬馬が考え事ってあり得ないしょ」

 「おい、俺だって……そうだ、いい案が思いついた!」

 「「「?」」」

 みんなの会話を聞いていたけど、俺も冬馬が考え事していたのは、珍しいなぁ~と思っていたけど、冬馬が何かいい案を思いついたみたいだ。何を思いついたのだろう?

 「何を思いついたんだ、冬馬?」

 「達也にみんなに手伝ってほしい事があるんだ、協力してくれないか?」

 「俺はいいけど、何やるんだ?」

 「ありがとう、達也。他のみんなは?」

 「それってすぐに出来るの? 時間が必要ならパスだよ」

 「すぐに出来る。今から説明するから」

 冬馬は、その場にいる3年メンバーに自分の考えを伝えた。話を聞き終わったみんなの反応は良好だった。冬馬の考えにみんなが賛成し、さっそく行動をとった。

 お昼を食べながら話をしていたので、お昼休憩で終わらなかった事は、ちょっとした休憩時間や部活が終わった時にできた。




        ****




部活が終わって俺と冬馬、そして四宮さんで結唯のお見舞いに向かった。途中で四宮さんの提案で花束を買って電車に乗り、そのまま病院へ行った。

 病院について三人でエレベーターを乗り、2階で降りた。そして、205号室へ向かって、ドアのところに面会謝絶と書いてある札がない事に俺は、ほっとした。

 今日は結唯に会える。ここまで来るのに心の中では、結唯に会えなかったらどうしょうと渦巻いていた。正直にいうと。

 ドアをコンコンと叩いて、結唯のお母さんが出てきた。

 「あら、こんにちは」

 「「「こんにちは」」」

 「今日は結唯に会えますか?」

 「長い時間は無理だけど、それでもいいかしら?」

 「はい」

 「じゃあ、どうぞ」

 結唯のお母さんの後に病室に入った。

 「達也君達よ」

 「いらっしゃい!」

 中に入って結唯を見るとみんなの情報通りに少し痩せた体とマスクをつけていた。点滴は変わらず。声だけは、元気そうにみえるが点滴している結唯の姿をみると、病人なんだと思ってしまう。そこが嫌だった。

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