思いー③
残れる人だけ残ったのは、五人ほど。今日の出来事を考えてみれば、仕方がないと思う。
「先生、今の時点で結唯について知っている情報があったら教えて下さい」
「……そうですね。何の病気かは、知りません。ただ、倒れた事によってしばらくは、入院するのは、間違いないと思っています。……と失礼」
先生の話を聞いている時に先生のスマホのバイブオンがなり、先生は画面を見てから一言、断ってから電話に出た。きっと山口先生からだと思った。
今、山口先生は病気に戻って、結唯の両親と一緒にいるはずだから。
「はい、分かりました。山口先生も帰りはお気をつけて。はい、失礼します」
「山口先生からですか」
「山口先生からの連絡は、早乙女さんはそのまま入院。明日から検査をしながら、しばらくは入院だそうです。良くなったら退院ができるはずと言っていました」
遠堂先生の話を聞いて、俺のだした答えは。
「結唯に元気になってもらいたいから、色紙を書くのは、どうだろう?」
「私はありだと思います」
「俺も賛成!」
「いいと思う! 千羽鶴は?」
「折る時間がないから、色紙だけでいいと思うけど?」
「確かに時間がかかるかぁ~」
俺の出した提案は、以外にも良かった。反対されるかなって思っていた。夏の大会が迫っている大切な時だったから。
「色紙が出来たら、まずは部長と副部長で行ってもらうとして……やっぱり、お見舞いに行ける人が最低、三人かな。それが一番、迷惑がかからない人数だと私は思うけど、どうですか先生?」
「大丈夫だと思いますよ」
「じゃあ、色紙とあと一つ、何か送りたいよね」
「そうだなぁ~。結唯ちゃんが元気になってくれるもの……達也、何かないか?」
冬馬が俺に意見を聞いてきた。俺はもう一つ思いついている事を話そうと思った。
それは、とても難しいものだけど。
次の日。今日も部活がある。いつもより、早い時間帯で集まっている。その理由が昨日の事だ。部活を始める前に改めて、結唯の状況を話をする為だ。
山口先生の話が終わると今度は、遠堂先生からのお知らせといったかたちで、昨日の事を話し始めようとした。
「昨日、3年生五人で話し合いをした事を部長の白銀君から話してもらいたいと思います。白銀君」
「はい」
俺はその場から昨日の事を話した。
「昨日、3年生五人で早乙女さんが元気に慣れるよう色紙を書こうという提案がでました。色紙は先生にお願いし、用意して貰っています。そしてお見舞いは、三人までと話しで決めました。あと今回始めての目玉と言ってもいい事を言います。夏の大会に出られない早乙女さんに次の大会。地区大会に一緒に出られるよう、夏の大会で金賞をとり、早乙女さんへビックな贈り物にしたいと思います。これが昨日の話し合いで話した事です」
「ありがとう、白銀君」
俺の説明が終わるとみんなが拍手や頷いている生徒がたくさんいた。
「皆さんは、夏の大会で金賞を目指して、今も練習をしています。今回の夏の大会には、早乙女さんは出られません。けど、金賞をとり、次の地区大会のチケットを取って、早乙女さんと一緒に出る。素敵な事だと思います。金賞を取るのは難しい事ですが、たくさん練習した分、素敵な音に。仲間と過ごした時間が大切な絆に変わる。そこがこの吹奏楽をやっていて、とても良いところだと思います。だから、皆さんこれからも頑張っていきましょう」
「「「はい」」」
今、新たに部員の思いが一つに慣れた、そんな瞬間だと俺は思った。
「では、山口先生」
「今日は、午前中に金管楽器とパーカッションが音楽室で遠堂先生に課題曲を見てもらいます。午後は木管楽器とパーカッションで私が音楽室で見ます。明日も同じように練習します。明日は自由曲です。音楽室にいない間は、各パートで練習をしてもらいます」
「今日は早めに集まってもらったので、10時から始めます。それまでにしっかりと準備をしておいて下さい」
先生の説明が終わると先生達は一度、職員室へ降りていった。
俺達、部員は今日、8時半に音楽室に集合した。今は9時15分。それぞれ楽器を準備していく。
「良かったな、達也。反対する部員がいなくって」
「そうだな。内心、ほっとしている」
「昨日、聞いた時は、驚きがすごかったけどな」
「うっ」
「でも、話を聞いて白銀君らしいと思いましたよ」
「ありがとう、四宮さん」
『四宮先輩!』
「今、行きます。では、今日も頑張りましょうか」
四宮さんがその場から離れていった。
「俺も頑張るか」
冬馬も自分のパートへ戻っていった。俺も。
「ホルン。チューニング、音を確認しにいくよ。一度、廊下に集合して」
「「「はい」」」
俺も今日一日、頑張らないと。みんなで金賞を取るって、強い決意したんだから。
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