思いー②
頭の中が真っ白になった。
誰が倒れた……
信じたくないのか、名前が出てこない
「白銀君!」
「っ……四宮さん」
「大丈夫ですか、白銀先輩」
「青山君……っ」
今、俺はどんな顔をしている。二人と離れたところにいた後輩達が俺のところに集まって、俺を心配そうに俺を見てる。
そこで、ようやく頭の回転がまわった。
「結唯は!」
「遠堂先生が付き添いで病院に。山口先生からで職員室に部長と副部長は来るようにと呼ばれています。行きましょう」
「あぁ。みんなはそのまま。俺が戻るまで山崎さん、あとをお願いするよ」
「はい」
俺は、立ち上がろうとした。けど、足に力が入らなかった。まるで、自分の足ではないように感じた。
「白銀君。大丈夫ですか?」
「大丈夫……」
大丈夫と答えておきながら、俺の足はまだ力が入らない。
「白銀君……」
「大丈夫」
四宮さんの心配した顔を見た。友達の結唯が倒れて、ショックな事なのに、心配でたまらないのにいろんな感情が分かるくらい、四宮さんの顔色は悪かった。
男の俺が何してるんだと心を奮い立たせて、立とうとしたら
「掴まれ、達也」
「冬馬」
「足に力が入らないんだろう。俺が支えてやるから行くぞ、職員室に」
「ありがとう、冬馬」
冬馬の力を借りて、ようやく立つことができた俺は、冬馬と支えられながら、ゆっくりと職員室に向かって歩き出した。
「大丈夫、あなた達?」
「はい、なんとか」
「山口先生。結唯に何があったんですか?」
「練習中に急に倒れたみたいです。天宮さんが知らせに来て、遠堂先生が教室に私が救急車を呼びました。そのあとは、遠堂先生が救急車に一緒にのり、そのまま病院へと行きました。そこで三人に部長と副部長である、あなた達にお願いがあります」
山口先生が、これから病院に向かうので俺達は、楽器を片付け、お昼をとり、音楽室で待機するように言われた。
3年のあなた達が不安がっていたら1、2年が心配するから、しっかりやりなさいと言われ、今の俺に出来る事は、先生に言われた通りにやる事だと、自分にいい聞かせた。
そんな俺の表情の変化に気がついたのか、山口先生に「白銀君、お願いね」と言われた。
俺は頷いて、二人を見た。二人も俺を見て頷いてくれた。
「では、お願いします」
山口先生が病院に向かった。
俺達も山口先生に言われた通りに行動する為に他の3年にも協力してもらい、後輩にも混乱しないように説明をし、音楽室に集まってもらい、楽器を片付けし、時間がきたらお昼を食べ、先生が帰ってくるのを待った。
午後の1時半過ぎていたと思う。顧問の遠堂先生と山口先生が病院から帰ってきた。
音楽室で待機していた俺達は、不安な気持ちが強かった。
「皆さん、お疲れ様です。午前中の突然の出来事は驚いたかと思います。まずは、早乙女さんは大丈夫です。意識を取り戻しました。早乙女さんと私と山口先生は、少しだけお話をしてきました。そして皆さんに早乙女さんからの伝言があります。『みんなに心配かけてごめんなさい』と言っていました」
遠堂先生の話を聞いて、とりあえず、ほっとした。部員のみんなもほっと胸を
「先生、結唯が倒れたのって何ですか?」
四宮さんが恐る恐る、手をあげて先生に聞いた。
「早乙女さんに病気が見つかったそうです。今までは、通院をしながら部活に出ていたのは、皆さんも知っていると思います。それが原因かは、分かりません。ただ、一つ言える事は、夏の大会は、早乙女さんは参加できない事は、分かって下さい。山口先生、どうぞ」
「早乙女さんもみんなと一緒に大会に出たかったと思う。けど、無理させる訳にはいかないのは、みんなも分かっていると思う。詳しい事は、これから早乙女さんのご両親にお話を伺わないと分からないので、明日にはある程度の事は、話をしたいと思いますので、今日の部活はこれで終わります」
「「「ありがとございました」」」
先生の話を聞いて静かに今日の部活は終わった。
俺は、ある決意をして声を出した。
「先生、まだ音楽室は使えますか?」
「私が残っているのでまだ、使えます」
「ありがとうございます。悪いけど、3年生で残れる人は、残ってもらえないか?」
「達也。話し合いをするのか?」
「少しだけ。遠堂先生もいいですか?」
「いいですよ」
「話し合った事は明日、みんなに伝えるからそこは心配しないで」
「参加できる人は残ってもらい、他の皆さんは、気をつけて帰って下さい」
遠堂先生の言葉でまだ、残れる人は音楽室に残り、残れない人と1、2年生は帰って行った。結唯の話の後だから気持ち的に余裕がないのは、分かっているが俺的に何か、結唯の為に何かしてあげたいと思った。
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