思い

 あれから2週間が過ぎた。もう夏休みに入っている。夏の大会がだんだんと近づいている。夏の大会は、8月上旬。残りわずかになってきているが、結唯の姿が見えない。

 結唯は入院してしまった。入院といっても検査入院だ。

 俺と四宮さん、冬馬で水族館へ行った、次の日に病院に行ったらしい。その時に検査入院した方がいいと言われ、そのまま入院になった。

 俺と四宮さん、冬馬で部活が終わった後にお見舞いに行った。点滴や薬のおかげで、少しは顔色がよく、結唯の姿を見てほっとしたし、あの時は本当に無理をしていたんだと思い知った。

 それがつい最近に思えてしまう。2週間は過ぎているのに。

 「あっちぃー。朝から暑いなぁ~。夏だからしょうがないけど」

 青空を見ながら呟いた。本格的な夏。

 「結唯に会いたいなぁ~」

 「誰に会いたいって?」

 「だから……!」

 俺一人で歩いていたら突然、後ろから声が聞こえた。聞き覚えがある声に立ち止まって後ろを振り向くとそこには、結唯の姿があった。

 「な、なんで?」

 「エヘヘ、驚いた? 退院したの」

 「本当に?」

 「うん。でも、通院しないといけないんだ。まぁ、しばらくは経過、様子を見ていきましょうって」

 「そっか。とりあえず、退院おめでとう」

 「ありがとう、達也」

 あの明るい笑顔がまた、見られて嬉しかった。本当に。

 「先生達は知っているのか。結唯が今日から学校、今は夏休みだけど来る事を?」

 「知らないよ。今日、学校で言うつもりだから。あとでお父さんとお母さんも学校に来て、校長と多分、山口先生とお話しすると思う」

 「そっか」

 「夏の大会まで、あまり時間がないね。みんなに遅れている分、頑張らないと」

 「そうだな。でも、無理をしない事!」

 「うん、分かってるよ」

 (こんなやり取りが懐かしいく感じる……)

 「早く学校に行こう!」

 俺は結唯と一緒に学校に向かった。




 結唯が部活に顔を出すとすごい反響があった。まるで結唯のワンランライブみたいな、流れのように見えた。

 まずは3年、俺と四宮さんと冬馬を抜かして。次に2年生。最後に1年生ときた。みんなが集まるほど、みんな結唯を心配していたのと、待ち望んでいたという事だ。

パンパン!と俺は手を叩き、みんなに声を掛けた。

 「はい、落ち着いて。結唯はとりあえず、退院したけど、まだ通院するの様子見の状態です。本人からの話だと部活を休む日も出てくるということで、そこはみんなで助け合って行こう。今日の練習は2時から合奏になります。お昼はいつも通りの12時からの1時間です。今日もこまめに水分補給をしっかりと取っての練習。体調が悪くなったら俺か、副部長の二人に言う事。大会が近いからって無理しないこと。以上です。二人は何かある?」

 「俺からはなしかな」

 「私の方からは、結唯、練習が遅れているからって無理しない事」

 「分かっているよ」

 「……天宮さん」

 「はい」

 「結唯が無理している、体調が悪そうに見えたらすぐに誰かに伝えて。天宮さんも結唯と同じパートだから、何となく結唯の性格が分かっていると思うから」

 「分かりました」

 「ぶぅ―、信憑性がないなぁ~」

 「そういう行動をしてきたから言っているの!」

 「ぶぅ―」

 結唯の膨れ顔を見て、みんなで笑った。

 「じゃあ全員いるか、各パートで確認したところから練習を始めて下さい」

 「「「はい!」」」

 各パートごと確認を終えたところから移動を開始した。各空いている教室などを使って練習をする。音楽室は3階なので、3階は主に金管楽器で2階は、木管楽器が練習場。パーカッションは、たくさん楽器を使うので移動は大変なので、音楽室で練習。

 「あっ、結唯に天宮さん!」

 俺はフルートの二人を呼んだ。フルートは、これから移動しょうとしていたので、何とかセーフだ。大事な事を思い出して二人を呼んだ。

 「どうしたの、達也?」

 「結唯が休んでいる間に遠堂先生の方で、フルートとホルンのソロを少しこんな感じで、吹いて欲しいって言われたところがあるから、後で結唯、一度確認だけでもした方がいいと思って」

 「なるほどね」

 「お昼休憩が終わったら、天宮さん一緒にソロのところやってもらってもいいかな?」

 「はい。大丈夫です、部長」

「ありがとう。合わせる時は、俺がフルートのところに行くから」

 「分かりました」

 「話は終わりだから移動していいよ」

 「ハイハイ~。じゃあ、天宮ちゃん、行こうか!」

 「はい」

 二人が音楽室を出た後に俺も自分のパートが練習する場所に向かった。




       ****



 午後。俺はフルートの練習している場所にいた。理由は、結唯が部活を休んでいる間に遠堂先生の方で、フルートとホルンのソロを少しこんな感じで、吹いて欲しいって言われたところがあるから、後で結唯、一度確認してもらう為にフルートの練習場にいた。

 「じゃあ、天宮さん。準備はいいかな」

 「はい」

 「じゃあ1、2、3、はい、でいいかな」

 「はい」

 天宮さんと確認してからお互いにかまえた。

 「じゃあ1、2、3、はい」

 俺の合図でフルートとホルンの一緒にやるソロのパートを演奏した。フルートとホルンの優しい音色が響きわたる。

 ソロのパートを弾き終わると俺は結唯を見た。

 「こんな感じになっている」

 「なるほどね。天宮ちゃん。私にも教えてくれる」

 「あっ、はい」

 「達也。上手く出来るようになったらあわせてくれる?」

 「当たり前だろ」

 「よし、練習をしよう! 天宮ちゃん、いい?」

 「あっ、はい!」

 俺は、『戻るから』といって戻る前にフルートの残りのメンバーのところに行った。

 「あっ、ちょっと廊下でやるね」

 教室にいたメンバーに声を掛けた結唯と天宮さんは、廊下で練習をやるみたいだ。

 「練習中にごめんね。どうかな、ここまでの結唯は?」

 「あっ、はい。いつもの明るい、優しい結唯先輩でした。体調が悪そうな、そんな素振りは見ていないです」

 「分かった、ありがとう。何かあったら四宮さんに伝えてくれるかな」

 「はい。分かりました」

 「じゃあ、練習頑張って」

 俺は一応、後輩達から結唯の状態を確認してからパート練習に戻った。

何だかんだで時間がくるのは、早い。パートに戻った俺は後輩達の面倒を見て、合奏の時間前に音楽室に戻った。

 合奏は、今日は課題曲を集中的に演奏をやっては、変なところ、あるいは、音のズレなど適切にやって行き、今日の練習は終わったのだ 。

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