夏ー④

 お話が終わったのか、お客さんを見た。

 「おーと、イルカ達がご飯をくれたお礼に今いるお二人さんにイルカ達がお礼のキスをプレゼントするって。ラッキーだね」

 お姉さんのアナウンスに客席から『いいなぁ~』という声が聞こえる。

 ステージからまだ、降りないでいる俺と結唯は、さらに驚きがあって結唯は、俺の事を呼んで『本当に?』と呟いた。

 「じゃあお二人さん、プールの近くまで移動してもらっていいかな」

 言われるままにプールの近くに移動して

 「少し、しゃがんでもらっていいかな?」

 お姉さんに言われるままにすると、ピィと笛の音が聞こえたと思ったら、いつの間にかイルカがきて俺と結唯の頬にキスして、プールの中に入っていった。

 「はい、ありがとうございます。足元に気を付けてステージから降りて下さい」

 「結唯、行こう」

 「うん」

 いまだに信じられない体験ができたと思いながらゆっくりとステージを降りた。

 「結唯」

 俺の方が先に降りたので、足元に気を付けてゆっくりと降りてくる結唯に俺は手を差しのべた。結唯が転ばないように。結唯は一瞬、驚きの表情をしたが、すぐに笑顔になって俺のてを握った。ゆっくりと歩きながら二人の元へ戻った。

 「お帰り~」

 「ただいま」

 「貴重な体験ができて良かったね、結唯」

 「うん!」

 「達也」

 「ん?」

 イスに座ったら冬馬に呼ばれて、冬馬が耳を貸せと言ってきたので耳を貸すと、冬馬が小声で『最後は見せつけてくれますね、達也君。さすがラブラブさん。お似合いですこと』と言ってきたので、冬馬の足を踏んでやった。

 「イテッ!」

 「冬馬君、どうしたの?」

 「なんでもないよ。手をぶつけたみたいだ」

 「ドジですね」

 「俺もそう思う」

 「これでイルカショー、終わりにします。帰りに係りの人が出入口でかごを持って立っているので、そこに腕輪を返して下さいね」

 ステージからアナウンスが流れて俺達も立ち上がった。

 「じゃあ、お昼を食べに行こう」

 「そうですね。お腹すきました。結唯もそうでしょう」

 「うん、すいたかな」

 「じゃあお昼を食べて、また見ていない所をみよう」

 「うん」

俺達はイルカショーを後にしてお昼を食べに移動しょうとした。

 「これ、記念品にどうぞ。イルカショーを見て下さった方に配っております」

 「ありがとうございます。わぁ、とっても可愛いよ香織」

 「本当に」

 「ありがとうございます。女の子はピンク、男の子は、水色になっています。最後まで水族館を楽しんで下さいね」

 「はい。ありがとうございます」

 出入口で腕輪を返した変わりにイルカショーを見た人に無料で記念品を配っていたみたいだ。イルカのキーホルダーだった。女の子には、ピンク、男の子は水色だった。

 それを貰って俺達は、お昼を食べに移動した。



       ****



 俺達は、プラネタリウムの前に来ていた。

 プラネタリウムって、恋人同士が見るイメージが強いなぁ~と思っていた。実際に来てみるとその通りが半分、親子連れが多いのにビックリした。

 「来てみたけど、それなりいるんだな」

 「そうですね。さて、中に入りましょう」

 「うん。早く中に入ろう!」

 「早く行こう。結唯は星が好きだから待ちに待っていました~状態だぞ」

 「先に行くよ~」

 俺の話を聞いて、四宮さんと冬馬は嬉しそうにしている結唯をみてホッとしているかのように俺は見えた。俺は二人に近づいてぼそっと二人に声を掛けた。

 「久しぶりにあんなにはしゃぐ、結唯を見られたかな」

 「そうだな。水族館に来て正解だったな」

 「そうですね」

 俺達は三人で頷いて結唯の後を追いかけた。



 『中ではお静かにお願いします。周りのお客様にご迷惑をかけないようお願いします』

プラネタリウムの中に入ってみるとまだ、始まらないから明るいがすでにアナウンスが流れていた。

 「どこに座る?」

 「真ん中は無理ぽいし、左端は空いてるからそこに行こうぜ」

 「そうですね」

 「結唯。転ぶなよ」

 「うん、ありがとう、達也」

 席に座ってから10分後に始まった。ゆっくりと明かりが消えて、星空が輝き始め、アナウンスが流れる。そこでゆっくりと小さい音楽も聞こえる。絶対に冬馬はそのうち寝るなぁ~と思った。

 「ねぇ、達也」

 結唯に小声で呼ばれて『どうかした?』と小声で返しながら聞きながら結唯を見た。

 「手……繋いでくれる」

 突然の結唯の申し出に驚いたが周りは、暗いし手を繋いで見るくらいいいだろうと思った。本当は俺から言えば良かったのに結唯に先をこされた。男なのに。

 「いいよ」

 俺は結唯と手を繋いで星空を見た。




 20分後。ゆっくりと流れていた音楽が聞こえなくなってきた。そろそろ終わりかなと思った。星座のお話も聞こえなくなってきた。

 「達也、ありがとう」

 「うん」

 結唯もそろそろ終わりだと分かって、明かりがつく前に俺と結唯は手を放した。そしてお互いに照れ臭そうに微笑んだ。



 「何でロマンチックなところで寝るんですか! 信じられないです!」

 「やっぱり、寝たんだ冬馬」

 「そうなんです」

 「いやぁ~静かに語ってくる声と小さめに流れてくる音楽を聞いたら、つい……」

 「冬馬君らしいね」

 「冬馬がオススメしてくれたものは見たし、もう、帰る?」

 「あっ、私、お土産物をちょっと見たいです」

 「俺も妹に何か買ってやるか」

 「山之内君も妹さん、いるんですね。てっきり一人っ子だと思っていました」

 「というと、四宮も妹いるんだ」

 「香織は、妹と弟がいるよ」

 「それでいつも四宮さんはしっかりしているんだ。なんか納得」

 「白銀君はいないんですか?」

 「達也は一人っ子だよ。私と同じ」

 「じゃあ、お土産を見に行こう」

 俺達はお土産を見に行く事になった。プラネタリウムの場所からお土産が売っている場所までは、結構の距離がある。そこで俺は。

 「四宮さんと冬馬は、先に行ってくれないか。俺は結唯と一緒にゆっくり行くから」

 「そうだね。私もゆっくり行きたいし」

 「分かった。先に行っているから」

 「分かった」

 「先に行っているね、結唯」

 「うん!」

 四宮さんと冬馬に先にお土産が売っているところに行ってもらい、俺と結唯はゆっくりと歩いて向かう事にした。なぜなら。

 「結唯」

 「どうしたの、達也」

 「大丈夫か?」

 「どうして?」

 「朝より顔色が悪いし、手もちょっと冷たいと思った。だから疲れ始めたのかなって」

 「さすが私の恋人だね。ちょっと疲れてたかな。あははは……」

 「大丈夫か。親に電話すれば迎えに来てくれるんじゃあ?」

 「そうだね。ごめんね、電話してみるよ。でも、香織と冬馬君には、秘密にしてくれる。せっかく私を気遣ってくれたのに申し訳ないよ」

 「……分かった。じゃあ、ゆっくりと向かうか、結唯」

 「うん、達也。でも、先に電話させて」

 「分かった。少し離れるよ。電話している間に二人が来たら時間稼ぎしているから」

 「ありがとう」

 俺は結唯から少し離れていた。やっぱり、先に行っていた二人は、早めに買い物して戻ってくる姿が見えた。俺は、二人の方へ向かって歩いた。

 「あれ、達也。結唯ちゃんは?」

 「電話がかかってきたからちょっとお話し中~」

 「親から?」

 「そこまでは聞かないよ。四宮さんも冬馬も早い買い物だよね。あまり、いいものがなかった?」

 「違う、違う。買いたいものがすぐに決まった、だけだよ」

 「そうか~。四宮さんも?」

 「そうですね」

 「結唯ちゃん、電話終わったみたいだ」

 冬馬の声で俺達三人は、結唯の元へ戻ろうとした。けど、結唯からそこにいてとジェスチャーがあったので、俺達は一瞬、どうするとお互い見てとりあえず、その場で待つ事を選んだ。

 本当は、すぐに側に行きたいけど。

 結唯がゆっくりと歩いてこっちに向かって来る。あと少しで着くかなと思ったら、突然、結唯が転んでしまった。

 「「結唯!」」

 「結唯ちゃん!」

 急いで結唯の元へ向かった。

 「結唯。大丈夫」

 「うん。力が抜けて、転んじゃった」

 「ケガはしてない、結唯ちゃん?」

 「うん、大丈夫」

 「歩けるか、結唯?」

 「大丈夫。ゆっくりなら」

 心配しないでと言いながら結唯は微笑んでいたが、俺達三人の心の中は不安でいっぱいだ。誰も言わないが。

 「四宮さん。荷物を俺に預けてくれる」

 「白銀君?」

 「荷物は俺が持つから結唯を支えてくれる。それで外に出よう。そして結唯の両親に電話しょう」

 「そうだな。それがいいと俺も思う」

 「分かりました。白銀君、お荷物をお願いします」

 「分かった」

 「ご、」

 「結唯。今は、その言葉聞きたくない」

 俺は、結唯が何を言いたいか、すぐに分かって待ったをかけた。

 結唯も俺の言葉の意味が分かって。

 「ありがとう、みんな」

 俺達はそのあとゆっくりと水族館の外に出て、結唯が帰るまでその場に残った。迎えが来た車に乗って結唯が帰るのを見届けしてから俺達も家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る